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163.山の季節 (操・弥彦・蒼紫・かふぇおじさん・夢主・薫・剣心)
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ガラ。
蒼紫が障子を開けた時、丁度薫が《かすていら》を持って来たところだった。
「あ。」
出てきた蒼紫を見て薫は持ってくるのがちょっと遅かったかなと思いつつも、
「あの、茶菓子を・・。」
と茶菓子をすすめた。
「いらん、もう済んだ。」
と、つっけんどんに断られた。
お茶菓子が必要なくても今回の御礼は言っておかないとと薫は思い、
「そ、それから今回の件ではお世話に 」
と言っている最中に蒼紫から、
「礼なら既に緋村から聞いている。」
と言葉を遮られた。
(何か気にさわることでもあったのかな・・本当・・よくわからない・・。)
薫は蒼紫の愛想のなさにまるで自分が何か悪い事でもしたかのような錯覚に陥りそうになった。
そのとき剣心の、
「お、かすていらでござるか。」
と薫の安心する声がした。
「あ、うん。食べる?」
と薫は続いて出てきた剣心にかすていらを差し出した。
剣心はそれを手に取りもぐもぐと食べた。
薫の後ろをどよ~んとついて来ていた操は蒼紫が出てくると今度は蒼紫に標的を変え、蒼紫の後ろをついて行った。
そしてめげもせず、
「ね~~~蒼紫様~、本当に明日帰るの~?」
と、蒼紫の袖を引きまだ東京にいたいと要求した。
そんな操を見て剣心は、
「操殿もこういっているコトだしどうだ蒼紫、もうしばしゆるりとしていかぬか。」
と、もぐもぐとかすていらを食べながらそう声をかけた。
剣心の言葉に合わせて薫も、
「もしなんだたらそうね、操ちゃんだけでも残ってもいいし。」
と言った。
「緋村!薫さん!」
宿主がそういうなら願ったり叶ったりだと操は蒼紫の袖を離し、剣心や薫の方を向いて目を輝かせた。
蒼紫は歩みを止めて、記憶の中の何かを見るような遠い目で呟いた。
「山の季節は平地より一足早い。これ以上遅くなると次が凍って春まで待つことになる。」
蒼紫の独り言に剣心、薫、操は、蒼紫がいったい何の事を言っているのか分からなくて思わず、
「え?」
と首を傾げた。
蒼紫はあの四人を仮埋葬しているあの墓石を思い起こしていた。
「そうなる前にあいつらをもっと陽の当たると所に葬ってやらねば。」
蒼紫の言葉に操はハッとした。
(蒼紫様があいつらと呼ぶのは般若君達の事以外にないわ!)
そして蒼紫が死んだ彼らを今どこかに埋葬していて今回遺骨を持って帰ろうとしていることを理解した。
(私達は御庭番衆・・・そうだよね、蒼紫様。)
操は蒼紫の背中を見てそう問いかけた。
操は東京に残って遊ぶ事よりも比べ物にならないほど大事な事が出来たのだった。
操は剣心と薫に、パンと大きく音が出るほどに手を合わせると、
「緋村、薫さん・・ゴメン!」
と頭を下げ、
「やっぱ私、みんな と一緒に帰るね。」
と謝った。
その顔は先程のふにゃふにゃした顔ではなく、しっかりとした目的を持った顔だった。
剣心はそれを見て、そして蒼紫はそれを見なくても微笑んだ。
「ああ、それがいいでござる。」
それがある意味、剣心の見送りの言葉だった。
その言葉を聞いて薫も操の言った意味が分かった。
「あー…。」
薫が納得した瞬間、操はくるりと身をひるがえし、
「蒼紫様ー!」
と叫んで蒼紫を追いかけた。
(御庭番衆・・・。)
薫は蒼紫と操の二人の後ろ姿を見て一時期は敵だった御庭番衆の姿を思い出した。
敵ではあったが般若達や、お世話になった葵屋の皆は御庭番衆という家族以上に強く繋がれた絆で結ばれているんだと薫は実感した。
(蒼紫さんはそこに帰るんだわ・・・。)
薫はやっと蒼紫のことが少し理解できた。
観柳邸の事もあり、自分達は彼らに比べれば信用するに値しない他人という存在。
だけど剣心のお蔭でとりあえず口ぐらい聞いてくれるようになった。
そう考えて薫は剣心に、
「よく考えれば蒼紫さんも他人には到底理解出来ない苛烈な過去を生きてきた人なのよね・・。」
と話しかけた。
剣心も薫に同意して、
「そうでござるな・・あの難儀な性格も少なからずその影響によるものでござろう・・・。」
と言った。
「うん・・。」
薫はそう答えて再び部屋へ戻っていく蒼紫と操の後ろ姿を見送った。
その時薫には蒼紫の姿の向こうに、般若達や翁、葵屋の人たちの微笑みながら蒼紫を待つ姿が見えるような気がした。
(でも、他人にはわからなくてもあの人はちゃんと手にしているんだ・・安息の場と愛でるべき本当の華をー・・。)
薫はそう思って目を少し細めたのだった。
2014.09.22
追記:
かふぇおじさんこと、マーティン・ヨハネス・ファン・ハウテンは創作上の人物です。
元はと言えば昨年の冬、寒くてココアを飲もうとヴァンホーテンココアの箱を取り出したところ、箱の横に【1828年、オランダのチョコレート工場で・・・】と創始者の解説が書いてありました。
Mr.ヴァンホーテンがオランダ人だとは知らなくて(しかも発音がオランダではヴァンホーテンを言わないというのにも)びっくりした次の瞬間、
「使える!この人!」
と思いました。
という事でそこから生まれた話が今回のマーティンさんです。
ダッチプロセスという新しいココア製造法を発明したこの創始者の名前が、【クーンラート・ヨハネス・ファン・ハウテン(Coenraad Johannes van Houten)】で、マーティンの兄という設定です。
蒼紫が障子を開けた時、丁度薫が《かすていら》を持って来たところだった。
「あ。」
出てきた蒼紫を見て薫は持ってくるのがちょっと遅かったかなと思いつつも、
「あの、茶菓子を・・。」
と茶菓子をすすめた。
「いらん、もう済んだ。」
と、つっけんどんに断られた。
お茶菓子が必要なくても今回の御礼は言っておかないとと薫は思い、
「そ、それから今回の件ではお世話に 」
と言っている最中に蒼紫から、
「礼なら既に緋村から聞いている。」
と言葉を遮られた。
(何か気にさわることでもあったのかな・・本当・・よくわからない・・。)
薫は蒼紫の愛想のなさにまるで自分が何か悪い事でもしたかのような錯覚に陥りそうになった。
そのとき剣心の、
「お、かすていらでござるか。」
と薫の安心する声がした。
「あ、うん。食べる?」
と薫は続いて出てきた剣心にかすていらを差し出した。
剣心はそれを手に取りもぐもぐと食べた。
薫の後ろをどよ~んとついて来ていた操は蒼紫が出てくると今度は蒼紫に標的を変え、蒼紫の後ろをついて行った。
そしてめげもせず、
「ね~~~蒼紫様~、本当に明日帰るの~?」
と、蒼紫の袖を引きまだ東京にいたいと要求した。
そんな操を見て剣心は、
「操殿もこういっているコトだしどうだ蒼紫、もうしばしゆるりとしていかぬか。」
と、もぐもぐとかすていらを食べながらそう声をかけた。
剣心の言葉に合わせて薫も、
「もしなんだたらそうね、操ちゃんだけでも残ってもいいし。」
と言った。
「緋村!薫さん!」
宿主がそういうなら願ったり叶ったりだと操は蒼紫の袖を離し、剣心や薫の方を向いて目を輝かせた。
蒼紫は歩みを止めて、記憶の中の何かを見るような遠い目で呟いた。
「山の季節は平地より一足早い。これ以上遅くなると次が凍って春まで待つことになる。」
蒼紫の独り言に剣心、薫、操は、蒼紫がいったい何の事を言っているのか分からなくて思わず、
「え?」
と首を傾げた。
蒼紫はあの四人を仮埋葬しているあの墓石を思い起こしていた。
「そうなる前にあいつらをもっと陽の当たると所に葬ってやらねば。」
蒼紫の言葉に操はハッとした。
(蒼紫様があいつらと呼ぶのは般若君達の事以外にないわ!)
そして蒼紫が死んだ彼らを今どこかに埋葬していて今回遺骨を持って帰ろうとしていることを理解した。
(私達は御庭番衆・・・そうだよね、蒼紫様。)
操は蒼紫の背中を見てそう問いかけた。
操は東京に残って遊ぶ事よりも比べ物にならないほど大事な事が出来たのだった。
操は剣心と薫に、パンと大きく音が出るほどに手を合わせると、
「緋村、薫さん・・ゴメン!」
と頭を下げ、
「やっぱ私、
と謝った。
その顔は先程のふにゃふにゃした顔ではなく、しっかりとした目的を持った顔だった。
剣心はそれを見て、そして蒼紫はそれを見なくても微笑んだ。
「ああ、それがいいでござる。」
それがある意味、剣心の見送りの言葉だった。
その言葉を聞いて薫も操の言った意味が分かった。
「あー…。」
薫が納得した瞬間、操はくるりと身をひるがえし、
「蒼紫様ー!」
と叫んで蒼紫を追いかけた。
(御庭番衆・・・。)
薫は蒼紫と操の二人の後ろ姿を見て一時期は敵だった御庭番衆の姿を思い出した。
敵ではあったが般若達や、お世話になった葵屋の皆は御庭番衆という家族以上に強く繋がれた絆で結ばれているんだと薫は実感した。
(蒼紫さんはそこに帰るんだわ・・・。)
薫はやっと蒼紫のことが少し理解できた。
観柳邸の事もあり、自分達は彼らに比べれば信用するに値しない他人という存在。
だけど剣心のお蔭でとりあえず口ぐらい聞いてくれるようになった。
そう考えて薫は剣心に、
「よく考えれば蒼紫さんも他人には到底理解出来ない苛烈な過去を生きてきた人なのよね・・。」
と話しかけた。
剣心も薫に同意して、
「そうでござるな・・あの難儀な性格も少なからずその影響によるものでござろう・・・。」
と言った。
「うん・・。」
薫はそう答えて再び部屋へ戻っていく蒼紫と操の後ろ姿を見送った。
その時薫には蒼紫の姿の向こうに、般若達や翁、葵屋の人たちの微笑みながら蒼紫を待つ姿が見えるような気がした。
(でも、他人にはわからなくてもあの人はちゃんと手にしているんだ・・安息の場と愛でるべき本当の華をー・・。)
薫はそう思って目を少し細めたのだった。
2014.09.22
追記:
かふぇおじさんこと、マーティン・ヨハネス・ファン・ハウテンは創作上の人物です。
元はと言えば昨年の冬、寒くてココアを飲もうとヴァンホーテンココアの箱を取り出したところ、箱の横に【1828年、オランダのチョコレート工場で・・・】と創始者の解説が書いてありました。
Mr.ヴァンホーテンがオランダ人だとは知らなくて(しかも発音がオランダではヴァンホーテンを言わないというのにも)びっくりした次の瞬間、
「使える!この人!」
と思いました。
という事でそこから生まれた話が今回のマーティンさんです。
ダッチプロセスという新しいココア製造法を発明したこの創始者の名前が、【クーンラート・ヨハネス・ファン・ハウテン(Coenraad Johannes van Houten)】で、マーティンの兄という設定です。