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196.当りとはずれ (夢主・蒼紫・弥彦・薫・剣心)
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武尊が手ぬぐいで額を押さえながら廊下を歩く。
蒼紫がその後ろを黙ってついて行く。
部屋へ戻った武尊はふぅと息を吐き出し壁際に座った。
「大丈夫か。」
蒼紫はそう言いながら武尊の前にしゃがみ手を伸ばした。
片手で手ぬぐいを押さえている武尊の手首を取り、もう片方の手で武尊の前髪をそっと指先でかき分け額の傷を見た。
「大した事ない・・薬・・ありがとう、蒼紫・・。」
なんて準備がいいのだろう。
軟膏を持っていたなんてたまたまだったのだろうか。
そんな事を思いながら武尊は目で蒼紫の手を半目で力なく追った後に目を閉じた。
なんかとても疲れたのだった。
それと部屋に戻って気が抜けたのとで武尊は壁にすっかりもたれかかった。
「・・血は止まっているな。」
蒼紫は武尊の傷の具合を確認した。
「大丈夫だよ、これくらい。」
たかが擦り傷大げさだと武尊は言った。
「たまたまこれで済んだんだ、武尊。」
これが武尊でなく般若や式尉だったら別に顔面から血が噴き出ようとも手当さえ適切に出来れば気にはしないのだが・・と蒼紫は頭の隅でそう思いつつ、反応が鈍い武尊に注意を即すように言った。
「最後の一撃をいつ受けると決めたんだ、避け方が悪ければあの使い古した竹刀の割れている所がまともに刺さっていたぞ。」
「う、うん・・。」
初めて竹刀を持ってその構造もよく分かってなかったので武尊は竹刀の先まであまり注意を払ってなかったのだった。
刺さらなくてよかった、と武尊は内心ほっとしていたら髪を避けていた蒼紫の指がスッと移動し武尊の顎の先で止まった。
ピク。
若干動いた蒼紫の指を顎の皮膚が感じた瞬間、武尊は今まで閉じていた目をハッと見開いて蒼紫を見た。
武尊の視線を受けながら蒼紫は武尊の顔をじっと見ていた。
武尊はそんな蒼紫を見ながら、こんな場所で蒼紫が変になって襲ってきたらきっと私はここが神谷道場であろうがなかろうが力の限り叫び声を出すだろう・・と思った。
だが蒼紫は何をするわけでもなくただ武尊を見ていた。
(蒼紫・・いったい何をするつもり?)
そう聞こうとしたその矢先に蒼紫が先に口を開いた。
「・・女はむやみに傷をつくるものではない。」
そう言って蒼紫は武尊の顎にかけていた指をそっと放した。
(蒼紫・・。)
それは自分の背に残した大きな傷痕の事も含めてそう言っているのだろうかと武尊は思いながらも言わなきゃいいのについポロっと本音を出してしまった。
「私なんて別に・・傷の一つや二つ・・。」
はなから世間の女と同じように自分を綺麗に見せようなんていう観念は武尊にはなかった。
育ってきた環境の所為かもしれないと武尊は思ったが今でも口に紅をさそうなど考えもしていない。
そんなのは女のすることで・・と武尊は思うもあれほど自分が女であることを感じさせられた斎藤の前でさえも紅をさそうと思ったことなどなかった。
その時武尊の脳内に斎藤の声が響いた。
『武尊は綺麗だ。』
武尊は嬉しかった。
それでも武尊が唯一この身の傷を晒したくないと思う大好きな人はもういない。
そう思うと武尊にとって本当に傷がどれだけ増えようが別にどうでもいい事であった。
「・・武尊が自分の事をどう思っていようが俺は武尊にこれ以上傷を作って欲しくはない、特に女の顔は大事だ、武尊は綺麗だから尚更だ。」
武尊が斎藤の事をちょっとの間回想している間に蒼紫が何か言ったようだった。
蒼紫の最後の方の『綺麗だ』という言葉にはっと我に返った武尊だったが蒼紫が何と言ったか聞こえてなかった。
だが武尊が思うに何となく今の言葉をもう一度言ってといえる空気ではなく何も言えなかった。
2015/06/27
蒼紫がその後ろを黙ってついて行く。
部屋へ戻った武尊はふぅと息を吐き出し壁際に座った。
「大丈夫か。」
蒼紫はそう言いながら武尊の前にしゃがみ手を伸ばした。
片手で手ぬぐいを押さえている武尊の手首を取り、もう片方の手で武尊の前髪をそっと指先でかき分け額の傷を見た。
「大した事ない・・薬・・ありがとう、蒼紫・・。」
なんて準備がいいのだろう。
軟膏を持っていたなんてたまたまだったのだろうか。
そんな事を思いながら武尊は目で蒼紫の手を半目で力なく追った後に目を閉じた。
なんかとても疲れたのだった。
それと部屋に戻って気が抜けたのとで武尊は壁にすっかりもたれかかった。
「・・血は止まっているな。」
蒼紫は武尊の傷の具合を確認した。
「大丈夫だよ、これくらい。」
たかが擦り傷大げさだと武尊は言った。
「たまたまこれで済んだんだ、武尊。」
これが武尊でなく般若や式尉だったら別に顔面から血が噴き出ようとも手当さえ適切に出来れば気にはしないのだが・・と蒼紫は頭の隅でそう思いつつ、反応が鈍い武尊に注意を即すように言った。
「最後の一撃をいつ受けると決めたんだ、避け方が悪ければあの使い古した竹刀の割れている所がまともに刺さっていたぞ。」
「う、うん・・。」
初めて竹刀を持ってその構造もよく分かってなかったので武尊は竹刀の先まであまり注意を払ってなかったのだった。
刺さらなくてよかった、と武尊は内心ほっとしていたら髪を避けていた蒼紫の指がスッと移動し武尊の顎の先で止まった。
ピク。
若干動いた蒼紫の指を顎の皮膚が感じた瞬間、武尊は今まで閉じていた目をハッと見開いて蒼紫を見た。
武尊の視線を受けながら蒼紫は武尊の顔をじっと見ていた。
武尊はそんな蒼紫を見ながら、こんな場所で蒼紫が変になって襲ってきたらきっと私はここが神谷道場であろうがなかろうが力の限り叫び声を出すだろう・・と思った。
だが蒼紫は何をするわけでもなくただ武尊を見ていた。
(蒼紫・・いったい何をするつもり?)
そう聞こうとしたその矢先に蒼紫が先に口を開いた。
「・・女はむやみに傷をつくるものではない。」
そう言って蒼紫は武尊の顎にかけていた指をそっと放した。
(蒼紫・・。)
それは自分の背に残した大きな傷痕の事も含めてそう言っているのだろうかと武尊は思いながらも言わなきゃいいのについポロっと本音を出してしまった。
「私なんて別に・・傷の一つや二つ・・。」
はなから世間の女と同じように自分を綺麗に見せようなんていう観念は武尊にはなかった。
育ってきた環境の所為かもしれないと武尊は思ったが今でも口に紅をさそうなど考えもしていない。
そんなのは女のすることで・・と武尊は思うもあれほど自分が女であることを感じさせられた斎藤の前でさえも紅をさそうと思ったことなどなかった。
その時武尊の脳内に斎藤の声が響いた。
『武尊は綺麗だ。』
武尊は嬉しかった。
それでも武尊が唯一この身の傷を晒したくないと思う大好きな人はもういない。
そう思うと武尊にとって本当に傷がどれだけ増えようが別にどうでもいい事であった。
「・・武尊が自分の事をどう思っていようが俺は武尊にこれ以上傷を作って欲しくはない、特に女の顔は大事だ、武尊は綺麗だから尚更だ。」
武尊が斎藤の事をちょっとの間回想している間に蒼紫が何か言ったようだった。
蒼紫の最後の方の『綺麗だ』という言葉にはっと我に返った武尊だったが蒼紫が何と言ったか聞こえてなかった。
だが武尊が思うに何となく今の言葉をもう一度言ってといえる空気ではなく何も言えなかった。
2015/06/27