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196.当りとはずれ (夢主・蒼紫・弥彦・薫・剣心)
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(ああ・・またここだ・・。)
武尊が気がつくとそこは意識の底、いつもの真っ暗な場所だった。
坐禅でもよほど集中しないと来れない深い場所だ。
無音で方向感覚が狂ってしまうほどの闇。
だがじっとしているとゆっくり身体が沈んでいくのを感じることが出来る。
深く・・
深く・・
どこまでも深く沈みゆくその場所で武尊は深海に沈むマリンスノーになったような気になった。
更に深くゆっくりと武尊は果てしない底へ落ちてゆく。
だが武尊は怖くなかった。
どちらかと言えばそれは恐怖と言うよりむしろどこか原点へ還るといった感じだろうか。
生まれて来る前の世界へ戻る感覚だ、と、武尊はそんな所へ行ったこともないのにそう思ってしまって少し笑った。
目を閉じても同じ闇なのにそうすると目を開けている時よりも安心感があった。
このまま闇に沈んでいけば、その先には永遠の安らぎがあるように思えて武尊はその感覚に身をゆだねようとした。
が、そんな武尊の気持ちに水をさすような違和感が現れた。
武尊が薄目を開けてその違和感のする上方を見あげれば何やら視線を感じた。
それはあの十六夜丸の視線。
(十六夜丸か・・まだ私に憑りついているのかなぁ・・。)
武尊がそう思いつつ上方を眺めていると上からも同じように武尊を眺める視線が続いた。
(なによ・・何か言いたい事があればいつもみたいに言葉悪く出て来ればいいのに。)
そう思いながら武尊はいったいいつになったら十六夜丸の事について知る事が出来るのかと思った。
人の血を混ぜて作る薬を飲めば十六夜丸になるなんて少なくとも過去に飛ばされる前まではそんな事はなかった。
だとしたら原因は必ず過去にある。
斎藤や蒼紫の話から十六夜丸について少し話は聞けたがそれは自分が十六夜丸に憑りつかれる原因には結びつかなかった。
薬を最初に自分に飲ませた兄ならばきっとその経緯も知っているはずだと思うが兄の手がかりは未だない。
銃撃を受けた自分が現代に飛ばされたと思われた会津の地に何も手掛かりがないというのなら、自分が消えた後に比古のもとへ薬を預けた兄にならって自分も京都へ行きもう一度昔の記憶を手がかりに兄の行方を探そうと武尊は考えている。
(きっといつかお前とは別れてやる・・殺人鬼とはおさらばだ。)
武尊はそう思って十六夜丸の方を睨んだ。
けれども同時にフッと武尊の心によぎった思いがあった。
理由はどうであれ、自分も人を撃って殺したことを。
(数が違いさえすれど自分と十六夜丸、何が違うというのだろう・・今の私は十六夜丸を責められない・・。)
武尊の胸が悲しくて痛い。
何が悲しいのだろうと武尊は胸を押さえながら自問した。
撃った奴らは悪い奴だった。
自分が殺らなければ川路や無関係な婦人達が犠牲になっていた。
そんな人達が犠牲になっていいわけがなかった。
発砲した瞬間、斎藤が信条にしている【悪・即・斬】が少し分かった気がした。
そして殺ったのが例え悪人であろうとその責めは自分で負うと、斎藤の胸の中で誓ったはずだと武尊は心を奮い立たせた。
では何故今こうして悲しみを感じるのだろう?
わからない・・
わからないな・・。
目を閉じて深呼吸をした武尊の頭の中にわからないと言えばもう一つ、と、別の事が頭の片隅をよぎった。
(どうして私は今この世界にいるのだろう?今まで何してたんだっけ・・?)
坐禅をしてなくともこんな所に来れる時といえば・・と武尊が自分の行動を思い返していた時・・・