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194.弥彦の挑戦状 (薫・弥彦・剣心・蒼紫・夢主)
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一方武尊は蒼紫から話を聞いて神谷道場内をぐるりと回っていた。
朝餉を取っている彼等に近づかないようにしながら敷地内散策といったところだが、その真の目的は薬箱がどこにあるのか見当をつけるためであった。
(薬ってこの時代は高価な物だからおそらく家主の神谷薫の部屋だと思うけど・・でも違う場所にあったらラッキーかな。)
そう思いながら母屋を離れて道場へ向かった。
「へぇ・・これが剣術道場ってやつなんだ。」
一礼して初めてこういった道場内に足を踏み入れた武尊は珍しい物を見たとばかりに首をぐるりと回した。
最初に来た時は外から見ただけでも分かる大穴があいていた。
雪代縁の来襲で結構ボロボロだったのに実に早く修理されたんだな、と武尊は感心した。
道場内で入り目のいく場所といえば正面の大小の刀二本とその上に掛けてある神谷活心流と書かれた文字、そして掛札。
武尊は札の前まで進み名札をながめた。
(師範代は、神谷薫か・・あの子本当に師範代だったんだ。)
もちろんこの道場の住人については斎藤より基礎的な知識は聞いていた武尊だったが、齢たかが十七の娘が道場経営で生計を立てている事を改めて知り武尊はある意味感銘を覚えたのであった。
(すごいなぁ・・でも門下生、二人しかいないよ?明神弥彦と塚山由太郎?・・弥彦っていうのはあの子だよね・・昨日の・・ふううん・・。)
名札の前で何やら頷いている武尊を蒼紫は後ろから黙って見ている。
そこに、
「おい、お前!こんな所で何やってんだ!」
と、子供の声がした。
武尊が振り向くと道場入口に弥彦の姿があった。
「何って別になにも・・ちょっと道場内を見せてもらってただけだけど。そういう弥彦君は何しに来たの?」
今までまともに子供と話したのはこの間の弥彦と話したのが初めてだったかなと思う武尊はつい言葉が甘くなるなと自分でも思いながらついたずねていた。
「馬鹿かてめぇ、門下生が道場に来る理由は一つしかないだろ、稽古だよ稽古!」
弥彦は道場に入って来ながら武尊の顔を見て昨晩の事を思いだしたのか顔を赤くしながら言った。
「お・・俺は悪くないからな!だいたいお前があんな所にいるって知らなかったし・・。」
歯切れ悪く言い訳する弥彦に武尊も、
「ああ・・別にいいよ・・私の方こそ油断していたし。」
と、昨晩弥彦と目が合った時のことを思い出して小さくため息を吐きながら答えた。
そして、
「稽古って弥彦君だけ?こっちの人は後から来るの?」
思わず武尊は塚山由太郎の名札を指差して弥彦に聞いた。
弥彦は由太郎の名前に真顔に戻ると、
「由太郎は・・独逸(ドイツ)だ。今は来れねぇ。」
と、まるで由太郎の姿が見えているように言い、手に持っていた竹刀をぐっと握った。
「ドイツ?!」
この時代にドイツに行ける身分ってどんな奴なのよ、と武尊は驚いて目を丸くした。
弥彦は驚く武尊に目もくれず竹刀の素振りを始めた。
「朝餉・・食べたばっかりだよね?」
武尊がつぶやくと
「・・ああ、美味かったから今朝五杯飯食ったぜ。」
と弥彦は普通に返答を返し、更に一呼吸置いて、
「ダアァーー!」
と大きく竹刀を振り下ろした。
食べたばっかりなのに若いって元気がいいね、と武尊が思わず口元をゆるめると弥彦はその竹刀の先をまた武尊に向けた。
ん?と武尊が竹刀の先にある弥彦の顔を見ると、
「お前の流派はなんだ。」
と聞かれた。
「流派?」
何の事だか分からず思わず首を傾けた武尊だったがそれはもしかして十六夜丸の事ではないかと瞬時に察したがそんな事、武尊自身でさえ知るわけがない。
思わず武尊は蒼紫の方を振り向くが蒼紫は黙って首を一回左右に振っただけだった。
「・・悪いけど聞かれても分からないな。」
武尊は弥彦にそう言った。
その時、道着に着替えた薫と剣心が道場入口に現われたのが武尊の視界に入った。
武尊は剣心に聞こえるのが分かっていて、
「【私】は刀を振るったことなんかないからね。」
と、弥彦に言った。
「意味分かんねぇよ!」
弥彦は叫んだ。
もちろんそれは剣心から武尊の正体は十六夜丸であるからと聞いているからだ。
「お前も人斬りだったんだろ!何で自分の流派ぐらい知らねぇんだよ!」
弥彦がそう言ったあと武尊は少し黙っていた。
道場内がしんと静まり返った。
そして武尊がおもむろに口を開いた。
「・・じゃあ・・・自分の目で確かめてみる?」
「!」
「!」
「!」
弥彦、薫、剣心は武尊の言葉に驚き、蒼紫はそんな道場内の様子を腕を組んで見守っていた。
「俺とやるって言うのか・・?竹刀の勝負なら受けて立つぜ。」
弥彦は額から汗をひと筋流し、ごくりと唾を飲みこんで答えた。
「弥彦、だめよ!」
薫が入口で叫んだ。
もちろんそんな事を止めさせるためだ。
幕末剣心と互角だったという剣の腕前。
目の前の武尊が剣心と同じように格下の子供に手加減してくれる保証はどこにもない。
「ちょっと、剣心も何とか言ってよ。」
薫は剣心の襟元をつかんでゆっさゆっさと揺さぶった。
「弥彦が怪我でもしたら・・。」
そう言う薫の気持ちも分からないではないが剣心も武尊の実力を確かめたい気持ちがないでもなかった。
「万が一でも弥彦に危険が及びそうなれば拙者が止めに入るでござるから。」
と剣心は薫に言い、弥彦に、
「弥彦、やってみるでござるよ。ただし両者とも、拙者が『やめっ!』と言った時はやめるでござるよ。」
と許可を出した。
「お、おう!」
弥彦は武尊ぶるいして自分を奮い立たせた。
そして武尊に、
「竹刀はそこだ、取ってここまで来い。」
と言った。
武尊は自分の近くにあった竹刀入れを見た。
(まさかこんな成り行きになる事があるなんてね・・。)
本当に思いつきというか、ふと口から勝手に出てしまったというか、何で『試してみる?』なんて言ってしまったのか。
そう思いながら数本ある竹刀のうちから一本目星をつけてそれを引き抜いた。
少し後悔しつつ武尊にとって初めて手に持つ竹刀。
真剣じゃないから手に取るのにそんなに抵抗がないのかと思いつつ、今の今になってほんの少しだけ斎藤から【剣術のいろはのい】ぐらいは教えてもらっておけばよかったと、そう思った武尊だった。
朝餉を取っている彼等に近づかないようにしながら敷地内散策といったところだが、その真の目的は薬箱がどこにあるのか見当をつけるためであった。
(薬ってこの時代は高価な物だからおそらく家主の神谷薫の部屋だと思うけど・・でも違う場所にあったらラッキーかな。)
そう思いながら母屋を離れて道場へ向かった。
「へぇ・・これが剣術道場ってやつなんだ。」
一礼して初めてこういった道場内に足を踏み入れた武尊は珍しい物を見たとばかりに首をぐるりと回した。
最初に来た時は外から見ただけでも分かる大穴があいていた。
雪代縁の来襲で結構ボロボロだったのに実に早く修理されたんだな、と武尊は感心した。
道場内で入り目のいく場所といえば正面の大小の刀二本とその上に掛けてある神谷活心流と書かれた文字、そして掛札。
武尊は札の前まで進み名札をながめた。
(師範代は、神谷薫か・・あの子本当に師範代だったんだ。)
もちろんこの道場の住人については斎藤より基礎的な知識は聞いていた武尊だったが、齢たかが十七の娘が道場経営で生計を立てている事を改めて知り武尊はある意味感銘を覚えたのであった。
(すごいなぁ・・でも門下生、二人しかいないよ?明神弥彦と塚山由太郎?・・弥彦っていうのはあの子だよね・・昨日の・・ふううん・・。)
名札の前で何やら頷いている武尊を蒼紫は後ろから黙って見ている。
そこに、
「おい、お前!こんな所で何やってんだ!」
と、子供の声がした。
武尊が振り向くと道場入口に弥彦の姿があった。
「何って別になにも・・ちょっと道場内を見せてもらってただけだけど。そういう弥彦君は何しに来たの?」
今までまともに子供と話したのはこの間の弥彦と話したのが初めてだったかなと思う武尊はつい言葉が甘くなるなと自分でも思いながらついたずねていた。
「馬鹿かてめぇ、門下生が道場に来る理由は一つしかないだろ、稽古だよ稽古!」
弥彦は道場に入って来ながら武尊の顔を見て昨晩の事を思いだしたのか顔を赤くしながら言った。
「お・・俺は悪くないからな!だいたいお前があんな所にいるって知らなかったし・・。」
歯切れ悪く言い訳する弥彦に武尊も、
「ああ・・別にいいよ・・私の方こそ油断していたし。」
と、昨晩弥彦と目が合った時のことを思い出して小さくため息を吐きながら答えた。
そして、
「稽古って弥彦君だけ?こっちの人は後から来るの?」
思わず武尊は塚山由太郎の名札を指差して弥彦に聞いた。
弥彦は由太郎の名前に真顔に戻ると、
「由太郎は・・独逸(ドイツ)だ。今は来れねぇ。」
と、まるで由太郎の姿が見えているように言い、手に持っていた竹刀をぐっと握った。
「ドイツ?!」
この時代にドイツに行ける身分ってどんな奴なのよ、と武尊は驚いて目を丸くした。
弥彦は驚く武尊に目もくれず竹刀の素振りを始めた。
「朝餉・・食べたばっかりだよね?」
武尊がつぶやくと
「・・ああ、美味かったから今朝五杯飯食ったぜ。」
と弥彦は普通に返答を返し、更に一呼吸置いて、
「ダアァーー!」
と大きく竹刀を振り下ろした。
食べたばっかりなのに若いって元気がいいね、と武尊が思わず口元をゆるめると弥彦はその竹刀の先をまた武尊に向けた。
ん?と武尊が竹刀の先にある弥彦の顔を見ると、
「お前の流派はなんだ。」
と聞かれた。
「流派?」
何の事だか分からず思わず首を傾けた武尊だったがそれはもしかして十六夜丸の事ではないかと瞬時に察したがそんな事、武尊自身でさえ知るわけがない。
思わず武尊は蒼紫の方を振り向くが蒼紫は黙って首を一回左右に振っただけだった。
「・・悪いけど聞かれても分からないな。」
武尊は弥彦にそう言った。
その時、道着に着替えた薫と剣心が道場入口に現われたのが武尊の視界に入った。
武尊は剣心に聞こえるのが分かっていて、
「【私】は刀を振るったことなんかないからね。」
と、弥彦に言った。
「意味分かんねぇよ!」
弥彦は叫んだ。
もちろんそれは剣心から武尊の正体は十六夜丸であるからと聞いているからだ。
「お前も人斬りだったんだろ!何で自分の流派ぐらい知らねぇんだよ!」
弥彦がそう言ったあと武尊は少し黙っていた。
道場内がしんと静まり返った。
そして武尊がおもむろに口を開いた。
「・・じゃあ・・・自分の目で確かめてみる?」
「!」
「!」
「!」
弥彦、薫、剣心は武尊の言葉に驚き、蒼紫はそんな道場内の様子を腕を組んで見守っていた。
「俺とやるって言うのか・・?竹刀の勝負なら受けて立つぜ。」
弥彦は額から汗をひと筋流し、ごくりと唾を飲みこんで答えた。
「弥彦、だめよ!」
薫が入口で叫んだ。
もちろんそんな事を止めさせるためだ。
幕末剣心と互角だったという剣の腕前。
目の前の武尊が剣心と同じように格下の子供に手加減してくれる保証はどこにもない。
「ちょっと、剣心も何とか言ってよ。」
薫は剣心の襟元をつかんでゆっさゆっさと揺さぶった。
「弥彦が怪我でもしたら・・。」
そう言う薫の気持ちも分からないではないが剣心も武尊の実力を確かめたい気持ちがないでもなかった。
「万が一でも弥彦に危険が及びそうなれば拙者が止めに入るでござるから。」
と剣心は薫に言い、弥彦に、
「弥彦、やってみるでござるよ。ただし両者とも、拙者が『やめっ!』と言った時はやめるでござるよ。」
と許可を出した。
「お、おう!」
弥彦は武尊ぶるいして自分を奮い立たせた。
そして武尊に、
「竹刀はそこだ、取ってここまで来い。」
と言った。
武尊は自分の近くにあった竹刀入れを見た。
(まさかこんな成り行きになる事があるなんてね・・。)
本当に思いつきというか、ふと口から勝手に出てしまったというか、何で『試してみる?』なんて言ってしまったのか。
そう思いながら数本ある竹刀のうちから一本目星をつけてそれを引き抜いた。
少し後悔しつつ武尊にとって初めて手に持つ竹刀。
真剣じゃないから手に取るのにそんなに抵抗がないのかと思いつつ、今の今になってほんの少しだけ斎藤から【剣術のいろはのい】ぐらいは教えてもらっておけばよかったと、そう思った武尊だった。