※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
189.小さな懐かしい思い出 (蒼紫・夢主)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しばらくして温泉の匂いをふわりとまとわせた蒼紫が帰って来た。
おかえりと言う武尊に蒼紫は声を落として言った。
「先程から男が一人こちらを見ているがいつからか分かるか。」
「見ているって何を?」
のほほんと返事をした後に武尊はハッと蒼紫を見た。
(まさか自分のこと?)
武尊はこんな所に来てまで誰が・・と顔色を変えた。
蒼紫は武尊が東京で何者かに後をつけられていた事を知っている。
その時は蒼紫の機転で立小便をして事なきを得たのであった。
「俺か武尊か・・。」
蒼紫はそう呟いた。
蒼紫もお尋ね者の身、だが人相書きが出回っているわけでもなく観柳邸事件が会津まで知れ渡っているとは考えにくい。
(だとすれば武尊の方か・・)
と蒼紫は考えたもののその理由については見当がつかない。
「まあこの程度の物なら然程気にする必要はない。」
殺気を含んだ気配ではなく只見られている程度の視線、それよりも蒼紫は確かめたい事があった。
以前蒼紫が武尊の後をつけて行った時は武尊は誰かが自分をつけているという事に気がついていた。
が、今回の視線には気がついていない。
一流の武人ともあらば家の外からでも不審な気配を察知できるという。
(十六夜丸でない時の武尊の能力は如何ほどなのか。)
武尊の能力を少しでも知りたいと思っていた蒼紫は少し武尊を試してみることにした。
「武尊、俺はもう一度中庭の回廊を廻って戻って来る。どの段階で気づけるか試してみろ。」
「え、ああ・・はい。」
何だろうと思いつつも了承し武尊は廊下に背を向けて正座をして気持ちを集中した。
だが足音のしない蒼紫を武尊はまったく気がつくことは出来なかった。
「あれ・・前は蒼紫に気づけたのに。」
少しばかり自信があった武尊はがっかりした。
「あの時は・・。(ただ見ていたわけではないからな。)」
あの時はと言いかけて蒼紫は口ごもった。
あの時蒼紫は武尊に自分に振り向いて欲しいと切ない気持ちを武尊にぶつけるように見ていたのだった。
「あの時は?」
と武尊に見つめられた蒼紫はそれには答えずすっと視線を壁に向けた。
(・・視線に何らかの気が混じれば結果は違うのか?)
そう考えた蒼紫は思い浮かんだ次の考えを試すことにした。
「武尊・・ちょっと後ろを向いてみろ。」
「え、どうして?」
武尊はそう言いつつも膝を反対側へ向け、再び蒼紫に背を向けた。
と、次の瞬間蒼紫は剣気を武尊に叩きつけた。
「!!」
背中を斬られるような鋭い気に襲われた瞬間、武尊は反射的に動いたのだった。
自分では何が何だか分からないうちに武尊は部屋の端ぎりぎりまで飛んでおり蒼紫に向かって構えていた。
「蒼紫!」
武尊は毛を逆立て叫んだ。
蒼紫はそれを冷静に見ながら、
「悪くはない動きだ・・単なる視線には気づかないが気を込めればすぐさまに察知出来る・・問題ないだろう。」
と言った。
「た、試したの・・?」
試された驚きというか呆れというか、目を丸くしながら武尊は言った。
「少しな・・俺がいつもついていられるとは限らない。だがこれで不意に襲われる事があったとしても武尊の寝首がかかれなくて済みそうなことが分かった。」
武尊は蒼紫の気遣いに納得しながらも、一気に脱力しながらぼやいた。
「もう・・びっくりした。斎藤さんみたいなマネされると反射的に動いちゃう。」
武尊の言葉に今度は蒼紫が少し険しい顔になって反応した。
「斎藤はこんなことをやっていたのか?」
「うん・・斎藤さんの部下になった頃仕事の合間に時々・・。でも斎藤さんの場合は気だけじゃなく本当に拳が飛んできたから最初の頃はかなり痛い思いもした。」
武尊はそう言いながら今では懐かしいその思い出に遠くを見つめた。
「・・そうか。」
蒼紫は武尊の瞳の中に斎藤が映っているような気がして武尊から視線を外した。
だが蒼紫が視線を外した先に、ここにはいないはずの斎藤の幻影が心なしか蒼紫に見えた。
気の所為だとその姿を否定する蒼紫にその幻影が煙草をふかしながら余裕な顔で、
(阿呆が、武尊は俺の物だと言っただろう。)
と言ったような気がしたのだからさあ大変、蒼紫はものすごい仏頂面をしたのだった。
2015.04.18
おかえりと言う武尊に蒼紫は声を落として言った。
「先程から男が一人こちらを見ているがいつからか分かるか。」
「見ているって何を?」
のほほんと返事をした後に武尊はハッと蒼紫を見た。
(まさか自分のこと?)
武尊はこんな所に来てまで誰が・・と顔色を変えた。
蒼紫は武尊が東京で何者かに後をつけられていた事を知っている。
その時は蒼紫の機転で立小便をして事なきを得たのであった。
「俺か武尊か・・。」
蒼紫はそう呟いた。
蒼紫もお尋ね者の身、だが人相書きが出回っているわけでもなく観柳邸事件が会津まで知れ渡っているとは考えにくい。
(だとすれば武尊の方か・・)
と蒼紫は考えたもののその理由については見当がつかない。
「まあこの程度の物なら然程気にする必要はない。」
殺気を含んだ気配ではなく只見られている程度の視線、それよりも蒼紫は確かめたい事があった。
以前蒼紫が武尊の後をつけて行った時は武尊は誰かが自分をつけているという事に気がついていた。
が、今回の視線には気がついていない。
一流の武人ともあらば家の外からでも不審な気配を察知できるという。
(十六夜丸でない時の武尊の能力は如何ほどなのか。)
武尊の能力を少しでも知りたいと思っていた蒼紫は少し武尊を試してみることにした。
「武尊、俺はもう一度中庭の回廊を廻って戻って来る。どの段階で気づけるか試してみろ。」
「え、ああ・・はい。」
何だろうと思いつつも了承し武尊は廊下に背を向けて正座をして気持ちを集中した。
だが足音のしない蒼紫を武尊はまったく気がつくことは出来なかった。
「あれ・・前は蒼紫に気づけたのに。」
少しばかり自信があった武尊はがっかりした。
「あの時は・・。(ただ見ていたわけではないからな。)」
あの時はと言いかけて蒼紫は口ごもった。
あの時蒼紫は武尊に自分に振り向いて欲しいと切ない気持ちを武尊にぶつけるように見ていたのだった。
「あの時は?」
と武尊に見つめられた蒼紫はそれには答えずすっと視線を壁に向けた。
(・・視線に何らかの気が混じれば結果は違うのか?)
そう考えた蒼紫は思い浮かんだ次の考えを試すことにした。
「武尊・・ちょっと後ろを向いてみろ。」
「え、どうして?」
武尊はそう言いつつも膝を反対側へ向け、再び蒼紫に背を向けた。
と、次の瞬間蒼紫は剣気を武尊に叩きつけた。
「!!」
背中を斬られるような鋭い気に襲われた瞬間、武尊は反射的に動いたのだった。
自分では何が何だか分からないうちに武尊は部屋の端ぎりぎりまで飛んでおり蒼紫に向かって構えていた。
「蒼紫!」
武尊は毛を逆立て叫んだ。
蒼紫はそれを冷静に見ながら、
「悪くはない動きだ・・単なる視線には気づかないが気を込めればすぐさまに察知出来る・・問題ないだろう。」
と言った。
「た、試したの・・?」
試された驚きというか呆れというか、目を丸くしながら武尊は言った。
「少しな・・俺がいつもついていられるとは限らない。だがこれで不意に襲われる事があったとしても武尊の寝首がかかれなくて済みそうなことが分かった。」
武尊は蒼紫の気遣いに納得しながらも、一気に脱力しながらぼやいた。
「もう・・びっくりした。斎藤さんみたいなマネされると反射的に動いちゃう。」
武尊の言葉に今度は蒼紫が少し険しい顔になって反応した。
「斎藤はこんなことをやっていたのか?」
「うん・・斎藤さんの部下になった頃仕事の合間に時々・・。でも斎藤さんの場合は気だけじゃなく本当に拳が飛んできたから最初の頃はかなり痛い思いもした。」
武尊はそう言いながら今では懐かしいその思い出に遠くを見つめた。
「・・そうか。」
蒼紫は武尊の瞳の中に斎藤が映っているような気がして武尊から視線を外した。
だが蒼紫が視線を外した先に、ここにはいないはずの斎藤の幻影が心なしか蒼紫に見えた。
気の所為だとその姿を否定する蒼紫にその幻影が煙草をふかしながら余裕な顔で、
(阿呆が、武尊は俺の物だと言っただろう。)
と言ったような気がしたのだからさあ大変、蒼紫はものすごい仏頂面をしたのだった。
2015.04.18