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187.隣部屋の話 (蒼紫・夢主)
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(蒼紫・・・。)
武尊も上向きに寝なおして天井を見つめた。
(私の事なんかいいのに・・・。)
武尊はそう思って目を閉じ、そしてまた開いて真っ黒な天井を眺めた。
(京都では操ちゃん・・待ってるんだろうな、蒼紫の事・・・蒼紫って十数年京都に帰ってなかったんでしょ?)
武尊はたまたま鉢合わせしたどこかの怪しい役人よりも操の事が気になった。
(どんな理由があっても蒼紫と風呂に入ったとか・・・言えないなぁ。)
昨晩の事は尚更だと武尊は誓った。
そして蒼紫の方をそっと向き・・
蒼紫が上を向いているのを確認しながら思った。
(・・京都へ帰るまでだからね・・一緒にいるのは・・そうしたら私なんかの事は忘れて・・・葵屋の皆さんと幸せに暮らしてね、蒼紫・・。)
武尊は静かにそう願い目を閉じた。
小さな密室。
ほぼ隣り合わせ状態の布団。
疲れているのに武尊は眠りに落ちていけない。
それは武尊が変に蒼紫の事を意識しているからだけでなく、シンとした部屋に隣のぼそぼその声が枕を通じてぼそぼそと気になるからだ。
(もう・・早く寝ればいいのに。)
と、武尊は思った。
だが酒でも飲んで話が盛り上がっているのだろうか、時々大きな叫び声のような声も混じっていた。
(んー、もう・・。)
武尊は寝返りを何度も打った。
「どうした。」
武尊は蒼紫の声がして一瞬ドキっとしたが、
「隣の部屋がうるさくて・・。」
と、小さな声で答えた。
「確かにそろそろ静かにして欲しいものだが聞いていてなかなか面白い。」
と蒼紫は答えた。
(面白い?!それってこの話が聞こえるってこと?)
武尊はそう言えば蒼紫は聴力が常人よりもものすごく良いということを思い出した。
隣の壁には自分の方が近い、にもかかわらず聞こえてしまう地獄耳の蒼紫にこんな時はうるさくて大変だろうなぁと気の毒に、と武尊は思った。
だが本人はこの話を面白いと言う。
まあ、面白いのなら聞こえていても苦じゃないのかと思いつつも、面白い話という内容が武尊は気になった。
武尊はまたごそごそと蒼紫の方へ向き、
「面白いって、何の話?」
と聞くと蒼紫は、
「聖徳太子の埋蔵金の話・・
と言いかけた時武尊が
「うっ!」
と、うめいて胸を押さえた。
「武尊!」
蒼紫は飛び起きて武尊に駆け寄った。
「何でもない・・、ちょっと胸が急に締め付けられるように痛くなっただけ・・。」
武尊本人も急に胸が痛くなったその理由はまったく心当たりがなかった。
最初の初一発のキュウウウという締め付けは和らいだものの、こんなのは初めてだと武尊は胸を押さえた。
「う・・うう・・。」
「心の臓の発作か?右近に言って薬をもらってこよう。」
立ち上がった蒼紫の着物のすそを武尊は手を伸ばしてつかみ、自分も上半身を胸を押さえながら起こした。
「大丈夫、もう大分おさまった・・。」
一番戸惑っているのは武尊自身だ。
(何でこんなに?こんな事、生まれてこのかた一度もなかったぞ。)
そう思っていると蒼紫に背中を優しく擦られた。
「大丈夫だよ蒼紫、ありがとう。」
武尊はもういいと振り返って蒼紫の手をやんわり制した。
「胸を患った事があるのか?」
「ううん、こんなこと一度もなかった。ごめん、蒼紫の話の途中だったのに。・・で、埋蔵金の話がどうしたんだったっけ?」
武尊が胸を押さえるのをやめた動作を見て蒼紫は蒼紫は布団に戻りながら、
「聖徳太子と物部の埋蔵金が・・
と言い出すと、武尊がまた胸を掴み押さえた。
「武尊。」
「大丈夫、さっきより大したことない・・ほら、もうおさまった。」
と、武尊は両手を広げて蒼紫にアピールした。
「・・・。」
蒼紫は半信半疑の表情のまま布団をつかみ固まっていた。
「大丈夫だって、さ、布団に入って。」
武尊も更に大丈夫さをアピールするために布団に入り直した。
それを見て蒼紫も布団に入った。
「で、埋蔵金があるって?」
武尊も埋蔵金と聞くと何となく気になって蒼紫の話を聞きたがった。
「・・嗚呼、あると踏んでいるようだな、隣の部屋の奴等は。奴等の一人がそのありかを示した地図を手に入れてるらしい。」
「ふーん、見つかるといいね。」
と武尊がまるで自分の事のように目を輝かせていると蒼紫がいつもの淡々とした口調で、
「見つかったとしても果たして儲けになるかな。」
と言った。
「どうして?」
と、思わず武尊が聞き返すと、
「日本で貨幣流通してたのはもっと後の話だ。その頃でも貨幣は銅で作られたという。聖徳太子の埋蔵金などあるわけがない、もっとも刀剣や宝飾品が出れば別だが。」
と言った。
いったい何処でそんな知識を得たのだろうか、武尊は驚きそんな事にも気がつかなかった自分が恥ずかしくなった。
「そ、そうだね・・あの時代に大判小判があるわけないものね。」
と言った。
「それより武尊・・。」
「ん?それよりどうしたの?」
途中で話をやめた蒼紫に武尊は聞き返した。
「・・・・
・・今日はもう寝た方がいい、話の続きが気になるのなら明日また話す。」
と、妙に長い間合いの後に蒼紫はそう言った。
「そうだね、そうする・・おやすみ、蒼紫・・。」
それからやはり武尊はしばらく寝付けなくて何度も何度も寝返りをうっていたのを蒼紫は知っていた。
そして真夜中、ようやく隣が静かになった頃武尊の寝息が聞こえてきたのも蒼紫は知っていた。
蒼紫は気が昂っていて眠れなかったのだった。
蒼紫の腕の中には昨晩抱いた武尊の身体の感触が残っている。
蒼紫は天井を見たまま大きくため息をついた。
『それより・・・俺の所へ来い、共に寝よう。』
そう言えればどれだけ楽になれるのか。
蒼紫は起き上がると廊下へ出た。
夜の露下りる冷たい空気が坐禅をする蒼紫を包む。
・・そしてまた夜明けが来た。
余談:
今日たまたま聖徳太子の事を書いた後すぐ、夕飯を食べようとテレビをつけた瞬間、画面に聖徳太子のニュースが映っていてドキっとしました。
2015/03/22
武尊も上向きに寝なおして天井を見つめた。
(私の事なんかいいのに・・・。)
武尊はそう思って目を閉じ、そしてまた開いて真っ黒な天井を眺めた。
(京都では操ちゃん・・待ってるんだろうな、蒼紫の事・・・蒼紫って十数年京都に帰ってなかったんでしょ?)
武尊はたまたま鉢合わせしたどこかの怪しい役人よりも操の事が気になった。
(どんな理由があっても蒼紫と風呂に入ったとか・・・言えないなぁ。)
昨晩の事は尚更だと武尊は誓った。
そして蒼紫の方をそっと向き・・
蒼紫が上を向いているのを確認しながら思った。
(・・京都へ帰るまでだからね・・一緒にいるのは・・そうしたら私なんかの事は忘れて・・・葵屋の皆さんと幸せに暮らしてね、蒼紫・・。)
武尊は静かにそう願い目を閉じた。
小さな密室。
ほぼ隣り合わせ状態の布団。
疲れているのに武尊は眠りに落ちていけない。
それは武尊が変に蒼紫の事を意識しているからだけでなく、シンとした部屋に隣のぼそぼその声が枕を通じてぼそぼそと気になるからだ。
(もう・・早く寝ればいいのに。)
と、武尊は思った。
だが酒でも飲んで話が盛り上がっているのだろうか、時々大きな叫び声のような声も混じっていた。
(んー、もう・・。)
武尊は寝返りを何度も打った。
「どうした。」
武尊は蒼紫の声がして一瞬ドキっとしたが、
「隣の部屋がうるさくて・・。」
と、小さな声で答えた。
「確かにそろそろ静かにして欲しいものだが聞いていてなかなか面白い。」
と蒼紫は答えた。
(面白い?!それってこの話が聞こえるってこと?)
武尊はそう言えば蒼紫は聴力が常人よりもものすごく良いということを思い出した。
隣の壁には自分の方が近い、にもかかわらず聞こえてしまう地獄耳の蒼紫にこんな時はうるさくて大変だろうなぁと気の毒に、と武尊は思った。
だが本人はこの話を面白いと言う。
まあ、面白いのなら聞こえていても苦じゃないのかと思いつつも、面白い話という内容が武尊は気になった。
武尊はまたごそごそと蒼紫の方へ向き、
「面白いって、何の話?」
と聞くと蒼紫は、
「聖徳太子の埋蔵金の話・・
と言いかけた時武尊が
「うっ!」
と、うめいて胸を押さえた。
「武尊!」
蒼紫は飛び起きて武尊に駆け寄った。
「何でもない・・、ちょっと胸が急に締め付けられるように痛くなっただけ・・。」
武尊本人も急に胸が痛くなったその理由はまったく心当たりがなかった。
最初の初一発のキュウウウという締め付けは和らいだものの、こんなのは初めてだと武尊は胸を押さえた。
「う・・うう・・。」
「心の臓の発作か?右近に言って薬をもらってこよう。」
立ち上がった蒼紫の着物のすそを武尊は手を伸ばしてつかみ、自分も上半身を胸を押さえながら起こした。
「大丈夫、もう大分おさまった・・。」
一番戸惑っているのは武尊自身だ。
(何でこんなに?こんな事、生まれてこのかた一度もなかったぞ。)
そう思っていると蒼紫に背中を優しく擦られた。
「大丈夫だよ蒼紫、ありがとう。」
武尊はもういいと振り返って蒼紫の手をやんわり制した。
「胸を患った事があるのか?」
「ううん、こんなこと一度もなかった。ごめん、蒼紫の話の途中だったのに。・・で、埋蔵金の話がどうしたんだったっけ?」
武尊が胸を押さえるのをやめた動作を見て蒼紫は蒼紫は布団に戻りながら、
「聖徳太子と物部の埋蔵金が・・
と言い出すと、武尊がまた胸を掴み押さえた。
「武尊。」
「大丈夫、さっきより大したことない・・ほら、もうおさまった。」
と、武尊は両手を広げて蒼紫にアピールした。
「・・・。」
蒼紫は半信半疑の表情のまま布団をつかみ固まっていた。
「大丈夫だって、さ、布団に入って。」
武尊も更に大丈夫さをアピールするために布団に入り直した。
それを見て蒼紫も布団に入った。
「で、埋蔵金があるって?」
武尊も埋蔵金と聞くと何となく気になって蒼紫の話を聞きたがった。
「・・嗚呼、あると踏んでいるようだな、隣の部屋の奴等は。奴等の一人がそのありかを示した地図を手に入れてるらしい。」
「ふーん、見つかるといいね。」
と武尊がまるで自分の事のように目を輝かせていると蒼紫がいつもの淡々とした口調で、
「見つかったとしても果たして儲けになるかな。」
と言った。
「どうして?」
と、思わず武尊が聞き返すと、
「日本で貨幣流通してたのはもっと後の話だ。その頃でも貨幣は銅で作られたという。聖徳太子の埋蔵金などあるわけがない、もっとも刀剣や宝飾品が出れば別だが。」
と言った。
いったい何処でそんな知識を得たのだろうか、武尊は驚きそんな事にも気がつかなかった自分が恥ずかしくなった。
「そ、そうだね・・あの時代に大判小判があるわけないものね。」
と言った。
「それより武尊・・。」
「ん?それよりどうしたの?」
途中で話をやめた蒼紫に武尊は聞き返した。
「・・・・
・・今日はもう寝た方がいい、話の続きが気になるのなら明日また話す。」
と、妙に長い間合いの後に蒼紫はそう言った。
「そうだね、そうする・・おやすみ、蒼紫・・。」
それからやはり武尊はしばらく寝付けなくて何度も何度も寝返りをうっていたのを蒼紫は知っていた。
そして真夜中、ようやく隣が静かになった頃武尊の寝息が聞こえてきたのも蒼紫は知っていた。
蒼紫は気が昂っていて眠れなかったのだった。
蒼紫の腕の中には昨晩抱いた武尊の身体の感触が残っている。
蒼紫は天井を見たまま大きくため息をついた。
『それより・・・俺の所へ来い、共に寝よう。』
そう言えればどれだけ楽になれるのか。
蒼紫は起き上がると廊下へ出た。
夜の露下りる冷たい空気が坐禅をする蒼紫を包む。
・・そしてまた夜明けが来た。
余談:
今日たまたま聖徳太子の事を書いた後すぐ、夕飯を食べようとテレビをつけた瞬間、画面に聖徳太子のニュースが映っていてドキっとしました。
2015/03/22