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186.蒼紫・・ごめんなさい(お笑い版) (蒼紫・夢主・右近)
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今日もまた夕暮れが近づき、長く射す西日が武尊達の部屋の障子を少し赤く染める頃、右近が武尊と蒼紫を風呂に案内しに来た。
廊下を歩いていると夕餉を乗せた御膳を運ぶ仲居や女中とすれ違う。
お腹がすいたなと思いつつ武尊が風呂に到着すると・・・
(あれ?入口は一つ?)
俗に言う男湯、女湯と入口を分けている事を示す暖簾などなく、ただ一つ、引き戸があるだけの入口だった。
ここで初めて武尊は男湯と女湯が分かれていない事に気づいた。
右近は、
「あまりゆっくりは出来ないと思いますが三十分ほどは大丈夫かと。」
と言って仕事に戻って行った。
武尊が入口の前でポカンとしていると蒼紫は戸を開け、
「入るぞ。」
と言われて、
「あ・・うん・・。」
と反射的に武尊は中へ入った。
中で二つに分かれているのではないかという淡い期待は砕かれ、そこはすでに外で三和土(たたき)にすのこが敷いてある広い脱衣所になっていた。
脱衣所と湯船の間には竹垣があり、湯気が風にのって時折脱衣所に吹き込んでいた。
武尊が湯船を覗きに行くと、そこには二十人は入れる屋根付き総ヒノキの大きな浴槽があった。
浴槽には龍の置物の口からお湯が大量に注ぎ込みあふれていた。
岩風呂ではないがこちらも露天風呂、立派な温泉に本来は大喜びするはずの武尊だったが・・・悩むのは一緒にいる男のこと。
持ち時間は三十分ばかり。
早く夕餉を終えた客が来ないとも限らない。
武尊は少し考えて意を決し、脱衣所へ戻ると服を脱ぎだした。
(どうせ蒼紫に見るなと言っても分かってもらえない可能性もあるし、そこであーだこーだ言っても始まらないしね。それに傷だらけの体なのは蒼紫も一緒・・・。)
武尊ははっきり全部を見たわけではないが、蒼紫だって自分以上に傷だらけの体を他人に見られていい気はしないのではと思ったからだ。
(それにもう見られてるんだから!・・しかもそれだけじゃなく・・・・。)
余計な事を考えるとお風呂に入れないと、蒼紫よりも先にすべてを脱いで浴槽のへりへ行き蒼紫に背を向け掛け湯をする武尊だった。
武尊は髪を湯で洗い、手ぬぐいでささっと身体を洗うとあっという間に湯船へ飛び込んだ。
斜め後ろでザザーッとお湯をかける音が何度も聞こえたが武尊はもちろん振り向かない。
蒼紫と目を合わせたくなかったし、万が一蒼紫のアレなんて目に入ったらそれこそ目のやりどころに困る事になるぞと先の事まで考えての事だった。
武尊は一番景色の良い側へスィ~と泳ぐと、ヒノキの浴槽に肘を掛け首から下は湯の中で景色を眺めていた。
景色に少し見入ってて、はっとすれば先程まで聞こえていたタライからお湯をかける音が聞こえなくなっていた。
それどころか耳をすませても自分の息か風がそよぐ音しか聞こえない。
「・・?」
と思って武尊が首を回し振り向きかけると、
(う!!)
湯の中から生えたような蒼紫の片方の膝の上の部分が水面と一緒に視界に入りそれ以上首を回せなく、また元の方向へ首をがばっと戻した。
蒼紫はいつの間にか武尊の真後ろに立っていたのだった。
危なく蒼紫のイチモツが視野に飛び込んでくるとこだったと武尊はざばっと湯を顔へ掛け顔をこすった。
そして、
「あ、蒼紫、いつのまに!」
と振り向かずに蒼紫に声をかけた。
「先程からだが。」
と蒼紫は武尊を見下ろして言い、それからまた武尊が見ていた景色の方へ視線を移すと、
「良い眺めだ・・。」
と言った。
武尊も今まで見ていた景色を見てちょっと動揺しながらも、
「う、うん・・、そうだね。ほら、向こうの紅葉の重なり合っている所・・ちょっとだけ日が当って燃えるようでしょ。」
と、ゆびを指した。
蒼紫がその指先を追い残り少ない西日が丁度当たる場所を見た。
そこは何故か一瞬、緋色に燃える十六夜丸の眼を蒼紫に思い出させたがそれをすぐに打消し、蒼紫は
「嗚呼。」
と返事をした。
そしてそのすぐ後、水面が揺れた。
たぶん蒼紫が湯につかったんだろうと、今度は多分振り返っても大丈夫だろうと、武尊はゆっくりなんとなく後ろを振り返った。
「ぶっ。」
思わず小さく噴き出してしまった武尊。
蒼紫は突然武尊に噴き出されていったい何事かと目を少し見開いて武尊を見た。
「あははははははは。」
武尊はどうしても不意に見た蒼紫の姿に笑いが抑えられなかった。
大笑いする武尊に蒼紫は何故自分が笑われているのか分からずムッとした。
「何が可笑しい。」
「ご、ごめん・・ちょっと不意打ちだったから。」
とうっすら涙をにじませながら謝った。
「まさか蒼紫が手ぬぐいを頭に乗せているなんて思わなかったから。」
武尊は指で涙をぬぐいながら答えた。
「これがそんなに可笑しいか?」
蒼紫は真面目に武尊に聞いた。
「ううん、私も時々するけど蒼紫のイメージじゃなかったから。」
「『イメージ』?」
しまった、また未来の言葉を使ってしまったと焦りつつ急いで手頃な言葉を武尊は探して、
「あ・・、うんと・・・、いつもの蒼紫らしくないと思ったから。笑ってごめんなさい。」
と言った。
「俺らしくない・・?」
蒼紫はまだ手ぬぐいを頭にのせていることの何が自分らしくないのか武尊に突っ込んできた。
武尊は答弁に困って、
「ああ・・気にしないで、蒼紫が悪いわけじゃなく笑った私が悪いんだから。逆にいいと思うよ、なんか怖い印象がちょっと薄らいだ感じがする。」
と謝り、微笑んだ。
「そうか・・。」
武尊に微笑まれて蒼紫の心は少し落ち着いた。
だが武尊に対し一つ聞きたいことが出来た。
「武尊も俺が怖いと思うのか。」
蒼紫は武尊に対し【友】という間柄になってからは、自分の出来る限りの気を使い接してきたと思っている。
それ故に怖い印象を与えていると言われて納得がいかなかったのだ。
武尊は、
「ううん、今は怖くないよ・・蒼紫はいつも私を助けてくれる、とても気を使ってくれる・・。」
と、言った。
間違いなく蒼紫は自分を特別に大事にしてくれている・・確かにそう感じると武尊は思う。
だから今口から出た言葉に偽りはない。
(だけど・・。)
その大事さの奥に何か果てしない闇を武尊は感じ、それを少し恐れている気持ちがある事は言わなかった。
それが何であるか武尊自身ぼんやりとした感覚でしかない事もさながら言ってしまうと蒼紫を傷つけるような気がしたからだ。
蒼紫は武尊に怖くないと言われてほっとしたのか声が少し穏やかになったように武尊に感じられた。
そして、
「武尊と共に湯に入るのは良いな。」
と言いつつ武尊の横に移動し浴槽の壁に背を預け武尊と目を合わせるとゆっくり目を閉じた。
「蒼紫・・。」
武尊が蒼紫の名前を呼ぶと、蒼紫はそのまま半目を開け、
「会津まで来た甲斐があったというものだ。」
と言い、また目を瞑った。
「ありがとう・・・来てくれて。」
武尊も蒼紫と同じように浴槽の壁に背をつけてもたれかかり今一度蒼紫に感謝の言葉を述べた。
武尊の感謝の言葉に蒼紫は目を開いて武尊に振り向いた。
武尊は蒼紫に見つめられ照れくさそうに露天風呂の天井を見上げ、
「蒼紫とは不思議な・・縁があるのかなって今ちょっとそう思った。これからも【友】で入れたらなぁってそう思う。」
と指でちゃぷちゃぷ湯を揺らし、ただ心に思った事を口にした。
自分と武尊との距離約1m。
手を伸ばしさえすれば武尊の腕を掴める、そうすれば昨晩のように武尊の身体を己が肌で感じられるのにと蒼紫の指が湯を掴む。
(力の限り抱きたい・・・。)
何か理由がなければ自分から武尊に触れる事が出来ない自分を蒼紫は恨めしく思った。
いつまで己を押さえつけておけるか、蒼紫は武尊を近くに感じれば感じるほど自信がなくなって蒼紫は目を伏せた。
2015/03/18
廊下を歩いていると夕餉を乗せた御膳を運ぶ仲居や女中とすれ違う。
お腹がすいたなと思いつつ武尊が風呂に到着すると・・・
(あれ?入口は一つ?)
俗に言う男湯、女湯と入口を分けている事を示す暖簾などなく、ただ一つ、引き戸があるだけの入口だった。
ここで初めて武尊は男湯と女湯が分かれていない事に気づいた。
右近は、
「あまりゆっくりは出来ないと思いますが三十分ほどは大丈夫かと。」
と言って仕事に戻って行った。
武尊が入口の前でポカンとしていると蒼紫は戸を開け、
「入るぞ。」
と言われて、
「あ・・うん・・。」
と反射的に武尊は中へ入った。
中で二つに分かれているのではないかという淡い期待は砕かれ、そこはすでに外で三和土(たたき)にすのこが敷いてある広い脱衣所になっていた。
脱衣所と湯船の間には竹垣があり、湯気が風にのって時折脱衣所に吹き込んでいた。
武尊が湯船を覗きに行くと、そこには二十人は入れる屋根付き総ヒノキの大きな浴槽があった。
浴槽には龍の置物の口からお湯が大量に注ぎ込みあふれていた。
岩風呂ではないがこちらも露天風呂、立派な温泉に本来は大喜びするはずの武尊だったが・・・悩むのは一緒にいる男のこと。
持ち時間は三十分ばかり。
早く夕餉を終えた客が来ないとも限らない。
武尊は少し考えて意を決し、脱衣所へ戻ると服を脱ぎだした。
(どうせ蒼紫に見るなと言っても分かってもらえない可能性もあるし、そこであーだこーだ言っても始まらないしね。それに傷だらけの体なのは蒼紫も一緒・・・。)
武尊ははっきり全部を見たわけではないが、蒼紫だって自分以上に傷だらけの体を他人に見られていい気はしないのではと思ったからだ。
(それにもう見られてるんだから!・・しかもそれだけじゃなく・・・・。)
余計な事を考えるとお風呂に入れないと、蒼紫よりも先にすべてを脱いで浴槽のへりへ行き蒼紫に背を向け掛け湯をする武尊だった。
武尊は髪を湯で洗い、手ぬぐいでささっと身体を洗うとあっという間に湯船へ飛び込んだ。
斜め後ろでザザーッとお湯をかける音が何度も聞こえたが武尊はもちろん振り向かない。
蒼紫と目を合わせたくなかったし、万が一蒼紫のアレなんて目に入ったらそれこそ目のやりどころに困る事になるぞと先の事まで考えての事だった。
武尊は一番景色の良い側へスィ~と泳ぐと、ヒノキの浴槽に肘を掛け首から下は湯の中で景色を眺めていた。
景色に少し見入ってて、はっとすれば先程まで聞こえていたタライからお湯をかける音が聞こえなくなっていた。
それどころか耳をすませても自分の息か風がそよぐ音しか聞こえない。
「・・?」
と思って武尊が首を回し振り向きかけると、
(う!!)
湯の中から生えたような蒼紫の片方の膝の上の部分が水面と一緒に視界に入りそれ以上首を回せなく、また元の方向へ首をがばっと戻した。
蒼紫はいつの間にか武尊の真後ろに立っていたのだった。
危なく蒼紫のイチモツが視野に飛び込んでくるとこだったと武尊はざばっと湯を顔へ掛け顔をこすった。
そして、
「あ、蒼紫、いつのまに!」
と振り向かずに蒼紫に声をかけた。
「先程からだが。」
と蒼紫は武尊を見下ろして言い、それからまた武尊が見ていた景色の方へ視線を移すと、
「良い眺めだ・・。」
と言った。
武尊も今まで見ていた景色を見てちょっと動揺しながらも、
「う、うん・・、そうだね。ほら、向こうの紅葉の重なり合っている所・・ちょっとだけ日が当って燃えるようでしょ。」
と、ゆびを指した。
蒼紫がその指先を追い残り少ない西日が丁度当たる場所を見た。
そこは何故か一瞬、緋色に燃える十六夜丸の眼を蒼紫に思い出させたがそれをすぐに打消し、蒼紫は
「嗚呼。」
と返事をした。
そしてそのすぐ後、水面が揺れた。
たぶん蒼紫が湯につかったんだろうと、今度は多分振り返っても大丈夫だろうと、武尊はゆっくりなんとなく後ろを振り返った。
「ぶっ。」
思わず小さく噴き出してしまった武尊。
蒼紫は突然武尊に噴き出されていったい何事かと目を少し見開いて武尊を見た。
「あははははははは。」
武尊はどうしても不意に見た蒼紫の姿に笑いが抑えられなかった。
大笑いする武尊に蒼紫は何故自分が笑われているのか分からずムッとした。
「何が可笑しい。」
「ご、ごめん・・ちょっと不意打ちだったから。」
とうっすら涙をにじませながら謝った。
「まさか蒼紫が手ぬぐいを頭に乗せているなんて思わなかったから。」
武尊は指で涙をぬぐいながら答えた。
「これがそんなに可笑しいか?」
蒼紫は真面目に武尊に聞いた。
「ううん、私も時々するけど蒼紫のイメージじゃなかったから。」
「『イメージ』?」
しまった、また未来の言葉を使ってしまったと焦りつつ急いで手頃な言葉を武尊は探して、
「あ・・、うんと・・・、いつもの蒼紫らしくないと思ったから。笑ってごめんなさい。」
と言った。
「俺らしくない・・?」
蒼紫はまだ手ぬぐいを頭にのせていることの何が自分らしくないのか武尊に突っ込んできた。
武尊は答弁に困って、
「ああ・・気にしないで、蒼紫が悪いわけじゃなく笑った私が悪いんだから。逆にいいと思うよ、なんか怖い印象がちょっと薄らいだ感じがする。」
と謝り、微笑んだ。
「そうか・・。」
武尊に微笑まれて蒼紫の心は少し落ち着いた。
だが武尊に対し一つ聞きたいことが出来た。
「武尊も俺が怖いと思うのか。」
蒼紫は武尊に対し【友】という間柄になってからは、自分の出来る限りの気を使い接してきたと思っている。
それ故に怖い印象を与えていると言われて納得がいかなかったのだ。
武尊は、
「ううん、今は怖くないよ・・蒼紫はいつも私を助けてくれる、とても気を使ってくれる・・。」
と、言った。
間違いなく蒼紫は自分を特別に大事にしてくれている・・確かにそう感じると武尊は思う。
だから今口から出た言葉に偽りはない。
(だけど・・。)
その大事さの奥に何か果てしない闇を武尊は感じ、それを少し恐れている気持ちがある事は言わなかった。
それが何であるか武尊自身ぼんやりとした感覚でしかない事もさながら言ってしまうと蒼紫を傷つけるような気がしたからだ。
蒼紫は武尊に怖くないと言われてほっとしたのか声が少し穏やかになったように武尊に感じられた。
そして、
「武尊と共に湯に入るのは良いな。」
と言いつつ武尊の横に移動し浴槽の壁に背を預け武尊と目を合わせるとゆっくり目を閉じた。
「蒼紫・・。」
武尊が蒼紫の名前を呼ぶと、蒼紫はそのまま半目を開け、
「会津まで来た甲斐があったというものだ。」
と言い、また目を瞑った。
「ありがとう・・・来てくれて。」
武尊も蒼紫と同じように浴槽の壁に背をつけてもたれかかり今一度蒼紫に感謝の言葉を述べた。
武尊の感謝の言葉に蒼紫は目を開いて武尊に振り向いた。
武尊は蒼紫に見つめられ照れくさそうに露天風呂の天井を見上げ、
「蒼紫とは不思議な・・縁があるのかなって今ちょっとそう思った。これからも【友】で入れたらなぁってそう思う。」
と指でちゃぷちゃぷ湯を揺らし、ただ心に思った事を口にした。
自分と武尊との距離約1m。
手を伸ばしさえすれば武尊の腕を掴める、そうすれば昨晩のように武尊の身体を己が肌で感じられるのにと蒼紫の指が湯を掴む。
(力の限り抱きたい・・・。)
何か理由がなければ自分から武尊に触れる事が出来ない自分を蒼紫は恨めしく思った。
いつまで己を押さえつけておけるか、蒼紫は武尊を近くに感じれば感じるほど自信がなくなって蒼紫は目を伏せた。
2015/03/18