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185.我が傀儡人形 (蒼紫・夢主・右近・怪しい政府の役人)
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「主様、伊佐須美神社の方は上手くいきましたね。」
「当たり前だ、国幣中社ごときが内務省社寺局の私のいう事には逆らえまい。とはいえ、ここも重要な土地、素通りするわけにはいかん。」
「ですがそのついでと言っては何ですが他の内務省の仕事も少々請け負わされたのは面倒ですよね。明日は会津城下の視察が入っております。」
「会津の・・か。破壊されつくした街に見るべきものはあるまいが・・まあいい、適当に見やるか。それより今夜は名湯に泊まるそうだな。」
「はっ、関白秀吉が入ったと伝えられる東山の名湯でございます。」
「関白・・か。猿めが、関白の地位を手に入れるためにこの藤原に養子縁組などしおって。だが天下をこれから治める殿下の為、末は我の為、秀吉縁の温泉に入るのも悪くないのぅ・・ククク。」
ガラガラガラ。
従者を二人連れた明治政府の役人を乗せた馬車は、地面を蹴り砂ぼこりをあげながら東山温泉へと向かい青松の湯の前で止まった。
「え、持ってるの?よかったー!ありがとうございます。」
廊下にも縁側の下にもどこにもなくて昨晩泊まった部屋の周りをうろうろして焦っていた武尊がたまたますれ違った仲居に手帳の事を聞いたら部屋の準備をしている時に置いてあった手帳に気づき預かっているとの事だった。
そこへ蒼紫がやって来た。
「武尊、急げ。政府の役人が直にこちらへ向かってくる。」
「え、もう着いたの!」
と武尊が驚くと、
「ここは特別室だ部屋に泊まる者以外の者がうろついていると怪しまれる、戻るぞ。」
「あ、うん。」
仲居がここに手帳を持ってくると言ったのでここにいなければいけないと思っていた武尊だったが、ここは長い渡り廊下の向こうの部屋、確かに宿泊者以外の者がいては怪しまれると思い走って戻っていると、蒼紫がちっと舌打ちをして急に立ち止まった。
武尊は急に止まった蒼紫の背にぶつかった。
「いて!」
と言った武尊に蒼紫はしっ、と指を唇に当て静かに何事も素知らぬ顔で歩くように言った。
「蒼紫・・。」
「いいから俺の言うとうりにしろ。」
そうして蒼紫は武尊の横に並び歩いていると向うの方から話声が武尊にも聞こえてきた。
(誰かお客さん来たー。)
武尊は少しうつむいて歩くことにした。
「いやあ、見事な庭ですね。」
「お部屋の方から見る紅葉はもっとようございます。」
と、右近と誰かの声がすぐ近くに聞こえた。
そしてすぐの曲がり角で武尊と蒼紫はその集団と鉢合わせになった。
蒼紫は黙って頭を下げてすれ違おうとした。
武尊も蒼紫にならって後ろをついて行った。
「待て。お前達は何者だ。この先には一つしか部屋はないはずだが。」
と従者に言われ蒼紫は仕方なく立ち止まった。
「ここの客だ・・庭が見事なので散策をしていたら道を間違えたようだ。」
蒼紫の理屈は無理やりだったがその可能性は否定できない所でこれ以上咎める事が出来ない理屈だろうと思われたが、従者は蒼紫の目つきが気に入らなかった。
「ここは特別の間だと聞いたぞ、お前達のような若造ふぜいが泊まれるような場所ではない。邪魔だ、どけ。」
と、蒼紫と武尊に対し大きな態度に出た従者だった。
従者は自分のすぐ後ろにいる主が下賤の者を嫌うという事をよく心得ていたのだった。
主が不機嫌になってとばっちりを食らうのは従者である自分達であるのもよく知っていた。
案内していた右近は一応、
「すみません、たまにこのように間違える客もいるのです。とは言えこれは私共の不手際、こちらからも後で御注意申し上げておきますゆえ何卒この場は・・。」
どうかこの場をお納めくださいと平に頭を下げた。
従者は主の方を振り返った。
どうせまた不機嫌な顔をして後で八つ当たりを食らうんだろうなと思いつつ。
だが、主は妖しく目だけで笑っていたのだ。
「あ、主様・・。」
唖然とした従者を持っていた扇子の先で押しのけゆっくりと蒼紫の横、そして武尊の横を通り過ぎて止まった。
そして振り返り、
「このような見事な庭・・楽しまれたか?どこから来たお前達。」
と聞いた。
蒼紫は視線を問われた男に移し、
「東京だ。」
と、答えた。
主と呼ばれた男は目を細くし、
「そうか、それはわざわざ会津まで、大義であったのう。ゆっくりするがよいぞ、ここの湯はたいそう良いと聞く。」
と、廊下の真ん中を悠々と歩いて行った。
その後を従者が慌てて追いかけていった。
蒼紫と武尊はその様子を見ていたが向うが角を曲がり姿が見えなくなると蒼紫は武尊を振り返った。
一悶着ありそうになったところを無事切り抜けてほっとしているだろうと思った武尊の顔は蒼紫の予想に反して難しかった。
「武尊?」
蒼紫の呼びかけに武尊は、
「う・・ん、何でもない。ちょっと引っかかってるだけ。・・あ、それからごめんなさい、また蒼紫に迷惑かけちゃった。」
と武尊は蒼紫に頭を下げた。
「いや・・礼はいい。それより早く部屋へ戻った方がよさそうだ。」
「そうだね・・。」
武尊は部屋へ戻るまで時々考え事をしては首を傾げながら歩いた。
「当たり前だ、国幣中社ごときが内務省社寺局の私のいう事には逆らえまい。とはいえ、ここも重要な土地、素通りするわけにはいかん。」
「ですがそのついでと言っては何ですが他の内務省の仕事も少々請け負わされたのは面倒ですよね。明日は会津城下の視察が入っております。」
「会津の・・か。破壊されつくした街に見るべきものはあるまいが・・まあいい、適当に見やるか。それより今夜は名湯に泊まるそうだな。」
「はっ、関白秀吉が入ったと伝えられる東山の名湯でございます。」
「関白・・か。猿めが、関白の地位を手に入れるためにこの藤原に養子縁組などしおって。だが天下をこれから治める殿下の為、末は我の為、秀吉縁の温泉に入るのも悪くないのぅ・・ククク。」
ガラガラガラ。
従者を二人連れた明治政府の役人を乗せた馬車は、地面を蹴り砂ぼこりをあげながら東山温泉へと向かい青松の湯の前で止まった。
「え、持ってるの?よかったー!ありがとうございます。」
廊下にも縁側の下にもどこにもなくて昨晩泊まった部屋の周りをうろうろして焦っていた武尊がたまたますれ違った仲居に手帳の事を聞いたら部屋の準備をしている時に置いてあった手帳に気づき預かっているとの事だった。
そこへ蒼紫がやって来た。
「武尊、急げ。政府の役人が直にこちらへ向かってくる。」
「え、もう着いたの!」
と武尊が驚くと、
「ここは特別室だ部屋に泊まる者以外の者がうろついていると怪しまれる、戻るぞ。」
「あ、うん。」
仲居がここに手帳を持ってくると言ったのでここにいなければいけないと思っていた武尊だったが、ここは長い渡り廊下の向こうの部屋、確かに宿泊者以外の者がいては怪しまれると思い走って戻っていると、蒼紫がちっと舌打ちをして急に立ち止まった。
武尊は急に止まった蒼紫の背にぶつかった。
「いて!」
と言った武尊に蒼紫はしっ、と指を唇に当て静かに何事も素知らぬ顔で歩くように言った。
「蒼紫・・。」
「いいから俺の言うとうりにしろ。」
そうして蒼紫は武尊の横に並び歩いていると向うの方から話声が武尊にも聞こえてきた。
(誰かお客さん来たー。)
武尊は少しうつむいて歩くことにした。
「いやあ、見事な庭ですね。」
「お部屋の方から見る紅葉はもっとようございます。」
と、右近と誰かの声がすぐ近くに聞こえた。
そしてすぐの曲がり角で武尊と蒼紫はその集団と鉢合わせになった。
蒼紫は黙って頭を下げてすれ違おうとした。
武尊も蒼紫にならって後ろをついて行った。
「待て。お前達は何者だ。この先には一つしか部屋はないはずだが。」
と従者に言われ蒼紫は仕方なく立ち止まった。
「ここの客だ・・庭が見事なので散策をしていたら道を間違えたようだ。」
蒼紫の理屈は無理やりだったがその可能性は否定できない所でこれ以上咎める事が出来ない理屈だろうと思われたが、従者は蒼紫の目つきが気に入らなかった。
「ここは特別の間だと聞いたぞ、お前達のような若造ふぜいが泊まれるような場所ではない。邪魔だ、どけ。」
と、蒼紫と武尊に対し大きな態度に出た従者だった。
従者は自分のすぐ後ろにいる主が下賤の者を嫌うという事をよく心得ていたのだった。
主が不機嫌になってとばっちりを食らうのは従者である自分達であるのもよく知っていた。
案内していた右近は一応、
「すみません、たまにこのように間違える客もいるのです。とは言えこれは私共の不手際、こちらからも後で御注意申し上げておきますゆえ何卒この場は・・。」
どうかこの場をお納めくださいと平に頭を下げた。
従者は主の方を振り返った。
どうせまた不機嫌な顔をして後で八つ当たりを食らうんだろうなと思いつつ。
だが、主は妖しく目だけで笑っていたのだ。
「あ、主様・・。」
唖然とした従者を持っていた扇子の先で押しのけゆっくりと蒼紫の横、そして武尊の横を通り過ぎて止まった。
そして振り返り、
「このような見事な庭・・楽しまれたか?どこから来たお前達。」
と聞いた。
蒼紫は視線を問われた男に移し、
「東京だ。」
と、答えた。
主と呼ばれた男は目を細くし、
「そうか、それはわざわざ会津まで、大義であったのう。ゆっくりするがよいぞ、ここの湯はたいそう良いと聞く。」
と、廊下の真ん中を悠々と歩いて行った。
その後を従者が慌てて追いかけていった。
蒼紫と武尊はその様子を見ていたが向うが角を曲がり姿が見えなくなると蒼紫は武尊を振り返った。
一悶着ありそうになったところを無事切り抜けてほっとしているだろうと思った武尊の顔は蒼紫の予想に反して難しかった。
「武尊?」
蒼紫の呼びかけに武尊は、
「う・・ん、何でもない。ちょっと引っかかってるだけ。・・あ、それからごめんなさい、また蒼紫に迷惑かけちゃった。」
と武尊は蒼紫に頭を下げた。
「いや・・礼はいい。それより早く部屋へ戻った方がよさそうだ。」
「そうだね・・。」
武尊は部屋へ戻るまで時々考え事をしては首を傾げながら歩いた。