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185.我が傀儡人形 (蒼紫・夢主・右近・怪しい政府の役人)
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武尊と蒼紫が宿に戻ったのは八つ時(午後二時~三時)の程であった。
近藤の墓参りの後適当な場所で握り飯を食べ宿へ戻ったのであるが、帰りの二人は・・いや蒼紫は多弁であった。
というのもそのきっかけは近藤の墓を後にしたのち、いろいろ思うところがあった武尊はしばらく無言で歩き蒼紫もその横を黙って歩いていたのであるが、武尊がふと空を見上げた時自分の物悲しい思いを映したような澄んだ秋空に思わず、
「天高く馬肥ゆ・・か。」
と呟いたことで話が始まったのだった。
「・・そうだな、今日のように澄み渡り高い空はまさに秋を感じさせる・・。」
武尊は独り言のように言った言葉に返事が返ってきたことに驚き蒼紫を見た。
蒼紫はおもむろに空を仰ぎ真っ直ぐに空を見ていた。
(蒼紫もきっとこの秋空の見事さに感心したのだろうか・・。)
そんな蒼紫の横顔に、蒼紫が自分と同じように秋の空に思うところがあるんだなぁと武尊は蒼紫に親近感を覚えた。
・・のもつかの間、
「だがその言葉、今でこそ秋の好時期のことをいう言葉として使われているが、元来は辺境の異民族が攻めてくる時期が来たので防戦の準備をおこたってはならぬといういましめの言葉だ。」
と蒼紫話を続けた。
蒼紫からすると正しい知識を武尊に伝えたかっただけだったのだが日頃使わない言葉をちょっと言ってみて自分でかっこいいかもと思っていた武尊はうっ、とのどを詰まらせた。
しかしさすがはあれだけ三国志を話せる蒼紫ならではの話だと武尊はすぐに感心し、
「そうだったんだ。」
と素直にうなずいた。
それを見て蒼紫も自然と後の言葉が出て来た。
「嗚呼、【雲浄くして妖星落ち、秋高くしては塞馬 肥ゆ】という詩が中国にある。もちろんこれは詩の一部だがその言葉が元となった。」
「ふううん・・。それってもしかしてチンギスカンの時代の話?」
武尊も蒼紫の話に興味を抱き自然と質問をした。
「いや、その詩を書いたのは盛唐の有名な詩人杜甫の祖父である杜審言だ。成吉思汗の時代よりも前の話だな。」
何でもすぐ調べられる未来ならともかく、この時代にそこまで知っているのかと武尊は正直舌を巻いた。
「唐の時代か・・そんなに古い時代の詩が出典元だったなんて思いもしなかった。蒼紫凄いね。」
そして正直に自分の気持ちを口にした。
こんなことで凄いという言葉が武尊から返って来ると思いもしなかった蒼紫は内心気を良くした。
身近に同じ事に興味がある者がいることは蒼紫にとって喜ばしいことであったし、それが武尊であれば尚更だった。
「武尊は歴史に興味があるのか?」
蒼紫は探りを入れて見た。
武尊は少し考えて、
「歴史を学ぶことは嫌いじゃない・・過去の事には興味がある・・・今でないと分からない事たくさんあるしね。」
と言うと、
「俺もだ。御頭として教養をつけるために寝ずに書物と向き合った事もあったが葵屋に戻って来てからというもの、書物と向き合う時間の充実さというのを俺はすっかり忘れていたことに気がついた・・学ぶというのは何であれ、いつになっても良いものだ。」
と蒼紫は言った。
「蒼紫は本当に本が好きなんだね、いいなぁ・・私は字が読めないから・・。」
は心底難しい本が読める蒼紫をうらやましく思った。
「何か聞きたいことがあれば聞け、幸い今は時間が有り余るぐらいにある。」
武尊は改めてそう言われて目を大きく見開いた。
「どうした。」
蒼紫は何か変な事を言ったかと武尊の様子をうかがった。
蒼紫に親切に言ってもらった言葉は武尊にとって確かに嬉しい事であった。
が、それと同時に十六夜丸や兄の事で精一杯、若しくは生きるので、いや、生きていかなければと思う事で頭が一杯でそれ以外の事などここのところ考えていなかったことに武尊は気づかされた。
(学ぶ事は楽しい事だったはずなのに私・・(心に)全然余裕がなかった・・。)
武尊が蒼紫を見ると蒼紫は武尊の答えを待っていた。
武尊は少し考えて、
「ううん、何でもない。聞きた事って何でもいいの?」
「嗚呼。」
武尊は瞬間、何でもいいってなら聞きにくい事でも聞いてやろうかと意地の悪い事がさっと頭に浮かんだが、ここはふざけてはいけないと思い、
「歴史の話じゃないんだけど・・ほら、以前干潟で座った時に教えてくれるって言った天気の事の覚えている?」
と蒼紫に言った。
「嗚呼。」
「じゃあ天気の話をして欲しいな、あれから気になってたんだ。」
蒼紫は自分の話を武尊が待っていてくれたと嬉しく思った。
「そうだな・・ではまず・・。」
と、蒼紫は宿に着くまでの間ずっと天気の講義をした。
疑問な所は聞けばすぐに噛み砕いて話してくれる蒼紫の話を武尊は真剣に聞いた。
(何でかなぁ、こういう会話ならいくらでも普通にできるのに。)
抱かれた事実さえなければ、目の前の男に自分を【好き】という感情がなければ、きっといい友になれたかもしれなかったのにという考えが武尊の脳裏を一瞬よぎったが今はそのことは考えまいと武尊は蒼紫の話に耳を傾けたのであった。
近藤の墓参りの後適当な場所で握り飯を食べ宿へ戻ったのであるが、帰りの二人は・・いや蒼紫は多弁であった。
というのもそのきっかけは近藤の墓を後にしたのち、いろいろ思うところがあった武尊はしばらく無言で歩き蒼紫もその横を黙って歩いていたのであるが、武尊がふと空を見上げた時自分の物悲しい思いを映したような澄んだ秋空に思わず、
「天高く馬肥ゆ・・か。」
と呟いたことで話が始まったのだった。
「・・そうだな、今日のように澄み渡り高い空はまさに秋を感じさせる・・。」
武尊は独り言のように言った言葉に返事が返ってきたことに驚き蒼紫を見た。
蒼紫はおもむろに空を仰ぎ真っ直ぐに空を見ていた。
(蒼紫もきっとこの秋空の見事さに感心したのだろうか・・。)
そんな蒼紫の横顔に、蒼紫が自分と同じように秋の空に思うところがあるんだなぁと武尊は蒼紫に親近感を覚えた。
・・のもつかの間、
「だがその言葉、今でこそ秋の好時期のことをいう言葉として使われているが、元来は辺境の異民族が攻めてくる時期が来たので防戦の準備をおこたってはならぬといういましめの言葉だ。」
と蒼紫話を続けた。
蒼紫からすると正しい知識を武尊に伝えたかっただけだったのだが日頃使わない言葉をちょっと言ってみて自分でかっこいいかもと思っていた武尊はうっ、とのどを詰まらせた。
しかしさすがはあれだけ三国志を話せる蒼紫ならではの話だと武尊はすぐに感心し、
「そうだったんだ。」
と素直にうなずいた。
それを見て蒼紫も自然と後の言葉が出て来た。
「嗚呼、【雲浄くして妖星落ち、秋高くしては塞馬 肥ゆ】という詩が中国にある。もちろんこれは詩の一部だがその言葉が元となった。」
「ふううん・・。それってもしかしてチンギスカンの時代の話?」
武尊も蒼紫の話に興味を抱き自然と質問をした。
「いや、その詩を書いたのは盛唐の有名な詩人杜甫の祖父である杜審言だ。成吉思汗の時代よりも前の話だな。」
何でもすぐ調べられる未来ならともかく、この時代にそこまで知っているのかと武尊は正直舌を巻いた。
「唐の時代か・・そんなに古い時代の詩が出典元だったなんて思いもしなかった。蒼紫凄いね。」
そして正直に自分の気持ちを口にした。
こんなことで凄いという言葉が武尊から返って来ると思いもしなかった蒼紫は内心気を良くした。
身近に同じ事に興味がある者がいることは蒼紫にとって喜ばしいことであったし、それが武尊であれば尚更だった。
「武尊は歴史に興味があるのか?」
蒼紫は探りを入れて見た。
武尊は少し考えて、
「歴史を学ぶことは嫌いじゃない・・過去の事には興味がある・・・今でないと分からない事たくさんあるしね。」
と言うと、
「俺もだ。御頭として教養をつけるために寝ずに書物と向き合った事もあったが葵屋に戻って来てからというもの、書物と向き合う時間の充実さというのを俺はすっかり忘れていたことに気がついた・・学ぶというのは何であれ、いつになっても良いものだ。」
と蒼紫は言った。
「蒼紫は本当に本が好きなんだね、いいなぁ・・私は字が読めないから・・。」
は心底難しい本が読める蒼紫をうらやましく思った。
「何か聞きたいことがあれば聞け、幸い今は時間が有り余るぐらいにある。」
武尊は改めてそう言われて目を大きく見開いた。
「どうした。」
蒼紫は何か変な事を言ったかと武尊の様子をうかがった。
蒼紫に親切に言ってもらった言葉は武尊にとって確かに嬉しい事であった。
が、それと同時に十六夜丸や兄の事で精一杯、若しくは生きるので、いや、生きていかなければと思う事で頭が一杯でそれ以外の事などここのところ考えていなかったことに武尊は気づかされた。
(学ぶ事は楽しい事だったはずなのに私・・(心に)全然余裕がなかった・・。)
武尊が蒼紫を見ると蒼紫は武尊の答えを待っていた。
武尊は少し考えて、
「ううん、何でもない。聞きた事って何でもいいの?」
「嗚呼。」
武尊は瞬間、何でもいいってなら聞きにくい事でも聞いてやろうかと意地の悪い事がさっと頭に浮かんだが、ここはふざけてはいけないと思い、
「歴史の話じゃないんだけど・・ほら、以前干潟で座った時に教えてくれるって言った天気の事の覚えている?」
と蒼紫に言った。
「嗚呼。」
「じゃあ天気の話をして欲しいな、あれから気になってたんだ。」
蒼紫は自分の話を武尊が待っていてくれたと嬉しく思った。
「そうだな・・ではまず・・。」
と、蒼紫は宿に着くまでの間ずっと天気の講義をした。
疑問な所は聞けばすぐに噛み砕いて話してくれる蒼紫の話を武尊は真剣に聞いた。
(何でかなぁ、こういう会話ならいくらでも普通にできるのに。)
抱かれた事実さえなければ、目の前の男に自分を【好き】という感情がなければ、きっといい友になれたかもしれなかったのにという考えが武尊の脳裏を一瞬よぎったが今はそのことは考えまいと武尊は蒼紫の話に耳を傾けたのであった。