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184.秋の花 (斎藤・永倉・謎の警官・夢主・蒼紫)
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「あー、どうするかな。」
永倉は飯屋でどんぶり飯をかき込みながら呟いた。
「身元が分からないんじゃあ黒髭を引き取に来させる事も出来ねぇしよ。」
「アイヌなんだろ、どこかまとまって住んでいるんじゃないのか。」
「まぁそうだけどよ、一番近いアイヌの村までここから十里ぐらいあるぜ。そこまで死体を引っ張ってて違うって言われたらまた次へ行かなきゃならねぇのはちょっとなぁ・・。最悪阿寒のアイヌコタンとかだったら大変だぜ。せめて身元確認が出来りゃあなぁ。」
と、永倉はため息をついた。
「黒髭には身元の確認できそうなものは一切身につけてなかったしな。せめて名前ぐらいは無理にでも吐かせておくべきだったか・・。」
「ま、今更そんな事言っても仕方がねぇな。で、黒髭が死んだ今どうするよ。今回の分の本は回収したがそれまでに出回っているやつがまた何時事件を引き起こすかわかんねぇ。」
「そうだな。だがまだ小さな漁村で事件が起こるならまだしも、若しあれが人の多い所で使われる事があったら・・。」
と、斎藤は眉間に皺を寄せながら味噌汁をすすった。
「嗚呼、とんでもねぇ事になるな。・・ちっ、いったい黒幕は何考えてんだよ。」
「しかし【蜘蛛の巣】に凶暴性を引き出すような作用なんかあったか・・。」
斎藤は顎に手をやり東京で見た観柳邸事件の調査書を思い出していた。
すると永倉が、
「なんか聞いた話によると最近よ、いろんな薬が増えてるらしいぜ。ほら、開国してから変な物がいっぱい入ってきてるじゃねぇか。作る時にいろいろ混ぜてんじゃねぇのか。」
と言った。
「永倉さんにしては珍しくいい事を言うな。」
斎藤はなるほどと永倉に感心した。
「本当お前は相変わらず辛口だよな。そういう可能性もあるって事ぐらい俺にも考えつくぜ。」
と、永倉はちょっと得意気になって鼻をこすった。
「だがあれは間違いなく国産だな。」
「嗚呼、多分あんな本は異人の奴等には作れない。」
「解明すべきは黒幕が誰で何が目的か、それとそれを何処で作っているかだな。早いとこ取り押さえないと犠牲者が増えるばかりだ。まったくあんなのが東京で使われたらとんでもねぇ事になるぜ。」
永倉がぼやくように言うと斎藤はますます眉間のしわを深くした。
「社会の混乱に乗じて明治政府に一泡吹かせようとしているのかもしれんが・・東京でそんなことはさせん。」
「だな・・あれから十年経ってこの国がようやく欧米の後を追う地盤が出来そうだって頃だもんな。今また幕末の動乱を繰りかえすわけにはいかねぇよな。」
永倉は酒を追加だと御銚子を振り話を続けた。
「なあ斎藤、さっき署長が有栖川宮て言ってた奴けど、そいつって和宮と婚約していた奴じゃなかったか。」
「だろうな、有栖川宮熾仁だろう。今は陸軍大将だ。東京で何度か見たことがある。」
「陸軍大将か、随分と出世したもんだな。ま、皇族だからな当然か、屯田兵でも視察に来るのか。」
「政府はようやく北の地の防衛に本腰を入れ始めたからな。そのうち軍の駐屯施設を作るだろうさ。」
「そうだな。で、九条道明って奴は何者だ。」
「そいつは俺も知らん。戊辰や西南戦争で功があったのなら俺や永倉さんの耳に聞こえていてもいいはずなんだがな。」
「そうだよなぁ、名前からして公家っぽいけど聞いた事ないぜ。こりゃあこっちに来るまで何者かわからないってことか・・。」
「陸軍大将の代理だったら陸軍中将とかの肩書きがあってもよさそうだが九条道明にはそれがない・・不可解だ。」
「なに、それはあの署長の事だ、聞くのを忘れたのか、聞いたのを忘れたのか、ま、そんなとこだろうぜ。それよりあの話、話せよ。すっかり聞くのを忘れていたぜ。」
「あの話?」
「抜刀斎だよ、東京にいるのかあいつ。」
「あ、嗚呼・・そうだったな。」
斎藤は丁度食事を終えたところで、渋い返事をするとともに煙草に火を点けた。
それからしばらく永倉と斎藤は飯屋で話しこむこととなった。
永倉は飯屋でどんぶり飯をかき込みながら呟いた。
「身元が分からないんじゃあ黒髭を引き取に来させる事も出来ねぇしよ。」
「アイヌなんだろ、どこかまとまって住んでいるんじゃないのか。」
「まぁそうだけどよ、一番近いアイヌの村までここから十里ぐらいあるぜ。そこまで死体を引っ張ってて違うって言われたらまた次へ行かなきゃならねぇのはちょっとなぁ・・。最悪阿寒のアイヌコタンとかだったら大変だぜ。せめて身元確認が出来りゃあなぁ。」
と、永倉はため息をついた。
「黒髭には身元の確認できそうなものは一切身につけてなかったしな。せめて名前ぐらいは無理にでも吐かせておくべきだったか・・。」
「ま、今更そんな事言っても仕方がねぇな。で、黒髭が死んだ今どうするよ。今回の分の本は回収したがそれまでに出回っているやつがまた何時事件を引き起こすかわかんねぇ。」
「そうだな。だがまだ小さな漁村で事件が起こるならまだしも、若しあれが人の多い所で使われる事があったら・・。」
と、斎藤は眉間に皺を寄せながら味噌汁をすすった。
「嗚呼、とんでもねぇ事になるな。・・ちっ、いったい黒幕は何考えてんだよ。」
「しかし【蜘蛛の巣】に凶暴性を引き出すような作用なんかあったか・・。」
斎藤は顎に手をやり東京で見た観柳邸事件の調査書を思い出していた。
すると永倉が、
「なんか聞いた話によると最近よ、いろんな薬が増えてるらしいぜ。ほら、開国してから変な物がいっぱい入ってきてるじゃねぇか。作る時にいろいろ混ぜてんじゃねぇのか。」
と言った。
「永倉さんにしては珍しくいい事を言うな。」
斎藤はなるほどと永倉に感心した。
「本当お前は相変わらず辛口だよな。そういう可能性もあるって事ぐらい俺にも考えつくぜ。」
と、永倉はちょっと得意気になって鼻をこすった。
「だがあれは間違いなく国産だな。」
「嗚呼、多分あんな本は異人の奴等には作れない。」
「解明すべきは黒幕が誰で何が目的か、それとそれを何処で作っているかだな。早いとこ取り押さえないと犠牲者が増えるばかりだ。まったくあんなのが東京で使われたらとんでもねぇ事になるぜ。」
永倉がぼやくように言うと斎藤はますます眉間のしわを深くした。
「社会の混乱に乗じて明治政府に一泡吹かせようとしているのかもしれんが・・東京でそんなことはさせん。」
「だな・・あれから十年経ってこの国がようやく欧米の後を追う地盤が出来そうだって頃だもんな。今また幕末の動乱を繰りかえすわけにはいかねぇよな。」
永倉は酒を追加だと御銚子を振り話を続けた。
「なあ斎藤、さっき署長が有栖川宮て言ってた奴けど、そいつって和宮と婚約していた奴じゃなかったか。」
「だろうな、有栖川宮熾仁だろう。今は陸軍大将だ。東京で何度か見たことがある。」
「陸軍大将か、随分と出世したもんだな。ま、皇族だからな当然か、屯田兵でも視察に来るのか。」
「政府はようやく北の地の防衛に本腰を入れ始めたからな。そのうち軍の駐屯施設を作るだろうさ。」
「そうだな。で、九条道明って奴は何者だ。」
「そいつは俺も知らん。戊辰や西南戦争で功があったのなら俺や永倉さんの耳に聞こえていてもいいはずなんだがな。」
「そうだよなぁ、名前からして公家っぽいけど聞いた事ないぜ。こりゃあこっちに来るまで何者かわからないってことか・・。」
「陸軍大将の代理だったら陸軍中将とかの肩書きがあってもよさそうだが九条道明にはそれがない・・不可解だ。」
「なに、それはあの署長の事だ、聞くのを忘れたのか、聞いたのを忘れたのか、ま、そんなとこだろうぜ。それよりあの話、話せよ。すっかり聞くのを忘れていたぜ。」
「あの話?」
「抜刀斎だよ、東京にいるのかあいつ。」
「あ、嗚呼・・そうだったな。」
斎藤は丁度食事を終えたところで、渋い返事をするとともに煙草に火を点けた。
それからしばらく永倉と斎藤は飯屋で話しこむこととなった。