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183.北の地の事件 (斎藤・永倉・署長)
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翌日、斎藤と永倉は着替えて黒髭がいる拘置所へ向かった。
斎藤は歩きながら煙草をふかし黒髭の顔を思い出していた。
東京に比留間なんとかという抜刀斎にちょっかい出していた小悪党より立派な髭だと斎藤はそれほどまでに彼を特徴づけている髭が気になっていた。
「永倉さん、黒髭は本当に黒髭なんだな。」
歩きながら斎藤がそのままを永倉に言うと、永倉は横目で斎藤をちらっと見て少し口をとがらせて言った。
「ありゃたぶんアイヌだよ、ま、内地にいたお前には分からなかったかもしれねぇがな。」
と言った。
「アイヌ?」
斎藤は初めて聞いた言葉をおうむ返しに聞いた。
「嗚呼、蝦夷と言った方が分かりやすいかな。昔からこの土地に住んでいた者達だ。髭も立派だが顔のほりも深いだろ?」
「なるほど、先住民か。そんな奴がどうして阿片にかかわっている。」
斎藤が疑問をぶつけると永倉がアイヌの現状を語った。
「かなり前からアイヌは同じ日本人として組み込まれているし、明治政府のもとでは平民ってことになっているが倭人とアイヌ、文化の違いや生活の違いってもんがあってなかなかうまくいかねぇ。弱者のあいつらが嫌がらせを受けてるってことも実際はある。住み慣れた土地を追われ、職を失った者も大勢いるっていうらしいからなぁ。」
永倉の言葉にはやりきれなさがにじみ出ていた。
「倭人対しての恨みという事か。」
と、斎藤が問うと、
「・・恨みは少なくとも松前藩が材木商人に北の部族に対して交易権を与えた頃ぐらいからはあるだろうな。あいつらは金で雇った私兵を連れて交易とは名ばかり、村を襲う野盗のような振る舞いをしていたんだ。」
「松前藩は知らなかったのか?幕府に知れたらただではすまんだろ。」
「知っていたさ。だが松前藩も他の藩と同じでその商人に対して莫大な借金があったのさ・・ってことは、分かるだろ、斎藤。」
「最悪だな。」
「嗚呼、最悪の最低だ。俺も松前藩士として恥じている。だから倭人に対して恨みがあるというのも分かる。分かるけどよ、俺は今回のやり方は気にくわねェ。」
人間が人間として壊れる姿を見た永倉はそれを思い出して唇を噛んだ。
「アイヌはアイヌでいい奴等なのによぅ、何で上手くいかねぇんだよ、世の中ってやつは。」
と永倉はぼそっと呟き、大な空を見あげ斎藤に言った。
「・・なぁ斎藤、俺は、特にこの北の地にいるとあいつ等の神、【カムイ】って奴を感じると思う時がある。」
「【カムイ】だと?何だそれは。」
「アイヌ語で【神】という意味さ。具体的には俺にもわかんねぇけど、この自然が厳しい大地に住んでるとな、時折人の力の無力さに対して揺るぎ無い自然の力ってものを感じる時がある。俺はそれが【カムイ】じゃないかって思うんだ・・っていうけど俺が信じているのは仏教だぜ、家にいる時は毎日仏壇に手合わせてるんだからな。」
永倉はそこは笑うところだと斎藤口をとがらせたまま斎藤を睨むと斎藤はすねるような顔をする永倉に思わずククッと笑った。
「分かりにくい言い回しで笑いと取ろうとするところは本当に相変わらずだな、永倉さんは。」
「お・ま・え・も・な。」
永倉は分かりにくい言い回しで悪かったなと、少し悔しく子供のように言い返した。
結局永倉と斎藤は、黒髭の阿片関与に関する動機は倭人に対する恨みが元ではないかという事にまとまった。
二人は拘置所に着くと入口に見張りが一人、中にもう一人一人警官がおり二人を案内した。
カツーン、カツーンと革靴が響かせて行くと、奥の方の房に黒髭はいた。
「まだ吐かないそうだな。他の奴等は早々に音をあげたようだぞ。」
斎藤は煙草をふかしながら格子戸の中を覗いて黒髭に話しかけた。
黒髭は昨晩自分を捕らえた男の顔をじろりと見た。
「だろうな。あいつ等は俺が手っ取り早く雇ったチンピラだからな。ま、あいつ等からはロクな話は聞けねぇだろうよ。この俺様はな、あいつ等とは違うんだ。誰がサツの尋問に音をあげるかよ。」
黒髭は斎藤に唾を飛ばしながら答えた。
「それはあんたが誇り高いアイヌの男だからかい。せめて名前ぐらい教えてくれてもいいんじゃないか。」
と永倉が斎藤の肩ごしに言うと黒髭はむぅと唸ってそっぽを向いた。
「そんなあんたににあんな卑劣な阿片を仕込んだ本を渡した奴は誰なんだ。」
永倉が更に質問を追加したが黒髭は黙秘した。
「それじゃあ【影宮】っていうのは誰だ。そいつが首謀者か。」
斎藤も質問をしたが男は黙秘をしたままだった。
斎藤は胡坐をかいている黒髭を睨んでいたが拘置所は物音一つなく静寂を保ち続けた。
そのうち斎藤の煙草の灰が乾いた音をたてて床に落ちた音をきっかけに斎藤がため息をついた。
「永倉さん、行こう。こいつにかまっていても時間の無駄だ。」
と斎藤が踵を返すと永倉は慌てて、
「お、おい、斎藤待てよ!こいつを(上司に内緒で)尋問するんじゃなかったのかよー!」
と、斎藤を引き留めようとしたが斎藤はスタスタと出て行ってしまった。
「ったくあいつは相変わらず何考えてやがるんだか・・。」
とぶつくさ言いながら永倉も斎藤を追いかけて出て行った。
見張りも元の入口近くに戻った約半時後、函館署の警官が数人やって来た。
「黒髭を連れて行くぞ。」
と、黒髭を昨日に続き取調室へ連れ出した。
斎藤は歩きながら煙草をふかし黒髭の顔を思い出していた。
東京に比留間なんとかという抜刀斎にちょっかい出していた小悪党より立派な髭だと斎藤はそれほどまでに彼を特徴づけている髭が気になっていた。
「永倉さん、黒髭は本当に黒髭なんだな。」
歩きながら斎藤がそのままを永倉に言うと、永倉は横目で斎藤をちらっと見て少し口をとがらせて言った。
「ありゃたぶんアイヌだよ、ま、内地にいたお前には分からなかったかもしれねぇがな。」
と言った。
「アイヌ?」
斎藤は初めて聞いた言葉をおうむ返しに聞いた。
「嗚呼、蝦夷と言った方が分かりやすいかな。昔からこの土地に住んでいた者達だ。髭も立派だが顔のほりも深いだろ?」
「なるほど、先住民か。そんな奴がどうして阿片にかかわっている。」
斎藤が疑問をぶつけると永倉がアイヌの現状を語った。
「かなり前からアイヌは同じ日本人として組み込まれているし、明治政府のもとでは平民ってことになっているが倭人とアイヌ、文化の違いや生活の違いってもんがあってなかなかうまくいかねぇ。弱者のあいつらが嫌がらせを受けてるってことも実際はある。住み慣れた土地を追われ、職を失った者も大勢いるっていうらしいからなぁ。」
永倉の言葉にはやりきれなさがにじみ出ていた。
「倭人対しての恨みという事か。」
と、斎藤が問うと、
「・・恨みは少なくとも松前藩が材木商人に北の部族に対して交易権を与えた頃ぐらいからはあるだろうな。あいつらは金で雇った私兵を連れて交易とは名ばかり、村を襲う野盗のような振る舞いをしていたんだ。」
「松前藩は知らなかったのか?幕府に知れたらただではすまんだろ。」
「知っていたさ。だが松前藩も他の藩と同じでその商人に対して莫大な借金があったのさ・・ってことは、分かるだろ、斎藤。」
「最悪だな。」
「嗚呼、最悪の最低だ。俺も松前藩士として恥じている。だから倭人に対して恨みがあるというのも分かる。分かるけどよ、俺は今回のやり方は気にくわねェ。」
人間が人間として壊れる姿を見た永倉はそれを思い出して唇を噛んだ。
「アイヌはアイヌでいい奴等なのによぅ、何で上手くいかねぇんだよ、世の中ってやつは。」
と永倉はぼそっと呟き、大な空を見あげ斎藤に言った。
「・・なぁ斎藤、俺は、特にこの北の地にいるとあいつ等の神、【カムイ】って奴を感じると思う時がある。」
「【カムイ】だと?何だそれは。」
「アイヌ語で【神】という意味さ。具体的には俺にもわかんねぇけど、この自然が厳しい大地に住んでるとな、時折人の力の無力さに対して揺るぎ無い自然の力ってものを感じる時がある。俺はそれが【カムイ】じゃないかって思うんだ・・っていうけど俺が信じているのは仏教だぜ、家にいる時は毎日仏壇に手合わせてるんだからな。」
永倉はそこは笑うところだと斎藤口をとがらせたまま斎藤を睨むと斎藤はすねるような顔をする永倉に思わずククッと笑った。
「分かりにくい言い回しで笑いと取ろうとするところは本当に相変わらずだな、永倉さんは。」
「お・ま・え・も・な。」
永倉は分かりにくい言い回しで悪かったなと、少し悔しく子供のように言い返した。
結局永倉と斎藤は、黒髭の阿片関与に関する動機は倭人に対する恨みが元ではないかという事にまとまった。
二人は拘置所に着くと入口に見張りが一人、中にもう一人一人警官がおり二人を案内した。
カツーン、カツーンと革靴が響かせて行くと、奥の方の房に黒髭はいた。
「まだ吐かないそうだな。他の奴等は早々に音をあげたようだぞ。」
斎藤は煙草をふかしながら格子戸の中を覗いて黒髭に話しかけた。
黒髭は昨晩自分を捕らえた男の顔をじろりと見た。
「だろうな。あいつ等は俺が手っ取り早く雇ったチンピラだからな。ま、あいつ等からはロクな話は聞けねぇだろうよ。この俺様はな、あいつ等とは違うんだ。誰がサツの尋問に音をあげるかよ。」
黒髭は斎藤に唾を飛ばしながら答えた。
「それはあんたが誇り高いアイヌの男だからかい。せめて名前ぐらい教えてくれてもいいんじゃないか。」
と永倉が斎藤の肩ごしに言うと黒髭はむぅと唸ってそっぽを向いた。
「そんなあんたににあんな卑劣な阿片を仕込んだ本を渡した奴は誰なんだ。」
永倉が更に質問を追加したが黒髭は黙秘した。
「それじゃあ【影宮】っていうのは誰だ。そいつが首謀者か。」
斎藤も質問をしたが男は黙秘をしたままだった。
斎藤は胡坐をかいている黒髭を睨んでいたが拘置所は物音一つなく静寂を保ち続けた。
そのうち斎藤の煙草の灰が乾いた音をたてて床に落ちた音をきっかけに斎藤がため息をついた。
「永倉さん、行こう。こいつにかまっていても時間の無駄だ。」
と斎藤が踵を返すと永倉は慌てて、
「お、おい、斎藤待てよ!こいつを(上司に内緒で)尋問するんじゃなかったのかよー!」
と、斎藤を引き留めようとしたが斎藤はスタスタと出て行ってしまった。
「ったくあいつは相変わらず何考えてやがるんだか・・。」
とぶつくさ言いながら永倉も斎藤を追いかけて出て行った。
見張りも元の入口近くに戻った約半時後、函館署の警官が数人やって来た。
「黒髭を連れて行くぞ。」
と、黒髭を昨日に続き取調室へ連れ出した。