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161.空はいつまでも蒼く(エピローグ) (斎藤・夢主)
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狭い屋台蕎麦の席を占領して朝から蕎麦をすする二人。
斎藤の足元のカバンの上には刀袋に入った刀がぼんっと無造作に置いてある。
(誰も帯刀警官から刀なんか盗んでいかないよね・・・。)
と、盗難を心配して斎藤をちらっと見る武尊だったが、よくよく考えたら斎藤が簡単に刀を盗まれるような隙を作るなわけがなく、逆に斎藤の気配を察しきれず手を出した阿呆がどのような結果になるかを想像すると、その阿呆の憐れな結果が目に見えるようでいらぬ心配だったと思いながら武尊はどんぶりを置いた。
その後、横浜署に斎藤についてきてもらい制服を返納して港へ向かった。
出港までまだ少し時間があった。
乗り場から少し離れた人目に付きにくい場所で斎藤はカバンを下した。
「ここら辺で待つか。」
それならと武尊が小用に出かけ、戻って来た時、斎藤は例によって煙草をふかして海を見ていた。
「どうしたの?」
いつもの仕事顔で何やら考えていそうだった斎藤に武尊は思わず聞いた。
聞いた瞬間に、
(あっ、仕事の話なら私はもう関われないんだ。)
と武尊は寂しく思ったがその一方、でも自分がいなくてもちゃんと仕事を支障なくやっているんだ・・と、寂しいながらも安堵した。
それでも煙草を咥えてこちらを見た斎藤に、つい、
「仕事の事?」
と勝手に口が喋ってしまう。
斎藤はスウゥと息を吸い込み、長く煙を吐くと武尊を見ながら
「嗚呼。」
と言った。
それは鍛冶橋監獄署から消えた武田観柳のことではなかった。
「警視庁に戻った時にな、これからの仕事について開拓使から手紙が来ていた。」
と、斎藤はまた海に視線を戻してそう言った。
「私が聞いても大丈夫な話?」
「嗚呼、武尊ならかまわん。だが他言無用だ。」
「うん。」
「と、言ってもたいした話ではない。だが、その名前を今ふと思い出してな。」
「なんの名前なの?」
「函館で下船したらある人物に会えという内容だった。その名前が【永倉左之平】という。」
「【永倉左之平】?一の知ってる人なの?」
「いや、そんな名前は知らん。だが永倉という苗字が懐かしくてな。」
「あっ・・そうか、永倉さん・・・。」
「そうだ。戊辰戦争で死んだとは聞いていない。だが生きているとも聞いていない。どうなったかと思っていたわけだ。」
「確か永倉さんは戊辰戦争の時、新撰組が江戸へ戻ってから離隊されたんでしたっけ。」
と武尊はここに来て夜の寝物語に新撰組の事を聞いた時にそういった話が少し出ていたのを思い出してそう言った。
「嗚呼。」
「生きていらっしゃるといいですね。・・・一人でも多くの方が。」
「そうだな。」
「今回のその永倉さんがあの永倉さんだったらいいですね。函館着いて感動の再会という事になったりして。」
「フン、仮にあの永倉さんだとして、名前を変えていたとしてもだぞ、【左之平】なんぞという名をつけるか?」
「その名前、何か変なの?」
「新撰組時代、永倉さんには原田左之助と藤堂平助という仲の良い隊士がいたんだ。そいつらは亡くなってしまったがな。」
「あ!・・って、まさか・・その二人の名前を・・?」
「可能性はあるが直に誰だか推測出来るような改名は意味がないだろう。永倉さんはそんな名をつけるような阿呆ではない。」
「・・・ですよね。そっか・・。」
「しかしその名前のお蔭で少し昔を思い出していたという所だ。」
と、斎藤は短くなった煙草を地面に落とし、靴底で踏みつけた。
斎藤の足元のカバンの上には刀袋に入った刀がぼんっと無造作に置いてある。
(誰も帯刀警官から刀なんか盗んでいかないよね・・・。)
と、盗難を心配して斎藤をちらっと見る武尊だったが、よくよく考えたら斎藤が簡単に刀を盗まれるような隙を作るなわけがなく、逆に斎藤の気配を察しきれず手を出した阿呆がどのような結果になるかを想像すると、その阿呆の憐れな結果が目に見えるようでいらぬ心配だったと思いながら武尊はどんぶりを置いた。
その後、横浜署に斎藤についてきてもらい制服を返納して港へ向かった。
出港までまだ少し時間があった。
乗り場から少し離れた人目に付きにくい場所で斎藤はカバンを下した。
「ここら辺で待つか。」
それならと武尊が小用に出かけ、戻って来た時、斎藤は例によって煙草をふかして海を見ていた。
「どうしたの?」
いつもの仕事顔で何やら考えていそうだった斎藤に武尊は思わず聞いた。
聞いた瞬間に、
(あっ、仕事の話なら私はもう関われないんだ。)
と武尊は寂しく思ったがその一方、でも自分がいなくてもちゃんと仕事を支障なくやっているんだ・・と、寂しいながらも安堵した。
それでも煙草を咥えてこちらを見た斎藤に、つい、
「仕事の事?」
と勝手に口が喋ってしまう。
斎藤はスウゥと息を吸い込み、長く煙を吐くと武尊を見ながら
「嗚呼。」
と言った。
それは鍛冶橋監獄署から消えた武田観柳のことではなかった。
「警視庁に戻った時にな、これからの仕事について開拓使から手紙が来ていた。」
と、斎藤はまた海に視線を戻してそう言った。
「私が聞いても大丈夫な話?」
「嗚呼、武尊ならかまわん。だが他言無用だ。」
「うん。」
「と、言ってもたいした話ではない。だが、その名前を今ふと思い出してな。」
「なんの名前なの?」
「函館で下船したらある人物に会えという内容だった。その名前が【永倉左之平】という。」
「【永倉左之平】?一の知ってる人なの?」
「いや、そんな名前は知らん。だが永倉という苗字が懐かしくてな。」
「あっ・・そうか、永倉さん・・・。」
「そうだ。戊辰戦争で死んだとは聞いていない。だが生きているとも聞いていない。どうなったかと思っていたわけだ。」
「確か永倉さんは戊辰戦争の時、新撰組が江戸へ戻ってから離隊されたんでしたっけ。」
と武尊はここに来て夜の寝物語に新撰組の事を聞いた時にそういった話が少し出ていたのを思い出してそう言った。
「嗚呼。」
「生きていらっしゃるといいですね。・・・一人でも多くの方が。」
「そうだな。」
「今回のその永倉さんがあの永倉さんだったらいいですね。函館着いて感動の再会という事になったりして。」
「フン、仮にあの永倉さんだとして、名前を変えていたとしてもだぞ、【左之平】なんぞという名をつけるか?」
「その名前、何か変なの?」
「新撰組時代、永倉さんには原田左之助と藤堂平助という仲の良い隊士がいたんだ。そいつらは亡くなってしまったがな。」
「あ!・・って、まさか・・その二人の名前を・・?」
「可能性はあるが直に誰だか推測出来るような改名は意味がないだろう。永倉さんはそんな名をつけるような阿呆ではない。」
「・・・ですよね。そっか・・。」
「しかしその名前のお蔭で少し昔を思い出していたという所だ。」
と、斎藤は短くなった煙草を地面に落とし、靴底で踏みつけた。
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