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113.おにぎりとかくれんぼ (夢主・蒼紫)
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武尊は草の間に息をひそめて隠れていた。
これだけ草が密集した所がいくつもあれば特定なんかされない。
やり過ごして正体をみてやる、と思っていたのに、草をかき分けこちらに誰かが真っ直ぐに近づいて来る音がしてきた。
(誰?・・・やるしかない?)
と、武尊は茂みの中で構えてじっとその音が間合いに入るのを待った。
(心臓の音が飛び出てきそう・・・。)
もう少し!という所で音が消えた・・・いや、相手は立ち止まった。
武尊が緊張で額から汗が流れた時、
「武尊、そこにいるんだろう。」
と、武尊の知る人の声がした。
「え・・・四乃森さん?」
武尊は信じられないという思と、緊張が一気に崩れてすっとんきょうな声で蒼紫を呼びながら立ち上がり姿を見せた。
「蒼紫・・・だ。」
まず、そこを訂正され、あ、ああ・・・そうだったと、
「蒼紫、いったいどうしたの?」
と武尊は言い直した。
「まあ、そんな草の中に埋もれていないでもう少し気持ちがいい場所にいかないか。」
今日も忍び装束の蒼紫を見ながら武尊はよろよろしながら草むらから出てきた。
「大丈夫か、まだ体調はよくないのか。」
「まだ万全じゃないです・・・。はぁ~、いらない体力使ってしまいましたよ・・・、いるならいるともと早く言って下さいね。」
疲れたといいながら草丈の低い場所でバタンと武尊はうつ伏せに寝転がった。
「ちょっと休憩します。本当に疲れました。」
昨晩の睡眠もあまり取れてない武尊はこのまま寝てしまいそうな気持になったが今日は診察後は出勤しなければならない・・・・。
と、思い睡魔と闘ったが温かな日差しに後押しされ、ふっと意識を失った。
「・・・・。」
蒼紫はそんな武尊の姿を見つめ自分も武尊の横に腰を下ろすと優しく武尊の髪を指ですいた。
そしてその指で武尊のほほを触れた時、
武尊はハッと意識を取り戻した。
「危ない・・・寝ちゃうところでした。」
と武尊はよっこらしょと座り直した。
「しかしよく気が付いたな。」
普通の侍でも余裕で気付かせることない距離はあけていたのにと、蒼紫は武尊に驚いていた。
「気配のことですか?んん・・・何でかと言われても、気が付いたから気が付いたとしかいえないのですが。それより蒼紫はどうして私が隠れている場所がわかったのですか?結構隠れるのには自信があったんですけど。」
「見た目には隠れたつもりかもしれないが、武尊の乱れた呼吸の音が聞こえたから簡単に場所はわかったぞ。」
息もひそめたつもりだったのに・・・、と武尊は蒼紫の耳のよさにちょっと背筋が寒くなった。
「(ほんと、忍ってすごいかも・・・。)そうですか・・・もっと精進しなければ、ですね。」
「いや、普通の輩なら問題ないだろう、むしろ武尊の体調を考えれば最良の選択だな。」
「というか、蒼紫、まさかかくれんぼをしにきたわけじゃないですよね?」
「あ、ああ・・・。」
と、言って蒼紫はゴホンと咳き込んだ。
「今日武尊が高荷の所へ行くと分かっていたから迎えに行ってやろうかと・・・あんな体調のまま一人で行かせるには危険だからな。だが斎藤の家から出てきた武尊は怖い顔をしていたから(機嫌が悪いと思って)話しかけぬ方が良いと判断しそのまま後をついて行ったという事だ。」
「最初からいたんですか!?」
「ああ・・。」
「まだ本調子じゃないのに・・・結構あせったんですよ。私、蒼紫みたいに玄人じゃないんですから勘弁してください。」
「すまなかった。」
「喉が乾いちゃった。」
と、武尊は立ち上がった。
「何処へ行く。」
「川の水を飲もうかと・・・。」
という武尊に蒼紫は、
「もしよければこれを飲め。そこの川の水よりはいいと思うが。」
と、武尊に腰につけてあった竹筒を差し出した。
「これは?」
「道場の井戸の水だが。」
武尊は立ち上がったついでに川を見下ろした。
河岸に近い所は流れが悪く水が澱んでいた。
「・・・お水いただいてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。」
武尊は蒼紫から竹筒を受け取ると水をゴクゴクと飲んだ。
「おいしい・・・。」
「それはよかった。」
という蒼紫を武尊は見た。
「どうかしたか。」
「いえ、ただ私が家を出るところからいたという事は蒼紫はもっと早くに神谷道場を出たんでしょ?朝餉は?」
「取っていないが別に大丈夫だ。」
「だめ。」
大丈夫だと言うのに即否定され、蒼紫はその言葉の真意を確かめようと武尊を見ると、武尊は手に持っていた包とその中の竹の皮を開いておにぎりを蒼紫に差し出した。
「これよかったらどうぞ。塩しかついていないけど。」
「どうしたんだ、これは。武尊の弁当か、それならもらうわけにはいかないな。」
「これは私の朝ごはん。朝あんまり食欲がなかったからおにぎりにして持ってきたの。ここの土手の辺りで食べようと思っていたから丁度いいかも。」
「武尊の分ならもらうわけにいかない。しっかり食べろ。」
「どうやら昨日食べ過ぎてしまって胸やけがするから、二つは多いと思ってたの。だから・・・よかったら一つ食べて?時尾さんが握ったんじゃないから美味しいかどうか分からないけど。」
「・・・武尊が握ったのか?」
「そう。しょっぱすぎたらごめんなさい、って言う感じ。」
「そうか・・・、それならいただくとするか。」
と蒼紫は一つ手に取るとパクっと口にした。
「美味い・・・。」
「よかった。」
蒼紫の言葉に武尊の顔がぱっと明るくなった。
ちいさな事だけど誉められた。
ちいさな事だけどそれが嬉しい。
蒼紫とは友といっても禅友なんて変な友達柄だけど距離を置いてこれくらいのことが出来るなら友っていうのもいいのかもしれない。
そして私はずるい・・・。
自分は独りだと言いつつもどこか他人に温もりを求めるなんて・・・。
そんな思いが胸をよぎったが今は蒼紫と食べる時間の楽しさに武尊は自分の負の心を隠した。
これだけ草が密集した所がいくつもあれば特定なんかされない。
やり過ごして正体をみてやる、と思っていたのに、草をかき分けこちらに誰かが真っ直ぐに近づいて来る音がしてきた。
(誰?・・・やるしかない?)
と、武尊は茂みの中で構えてじっとその音が間合いに入るのを待った。
(心臓の音が飛び出てきそう・・・。)
もう少し!という所で音が消えた・・・いや、相手は立ち止まった。
武尊が緊張で額から汗が流れた時、
「武尊、そこにいるんだろう。」
と、武尊の知る人の声がした。
「え・・・四乃森さん?」
武尊は信じられないという思と、緊張が一気に崩れてすっとんきょうな声で蒼紫を呼びながら立ち上がり姿を見せた。
「蒼紫・・・だ。」
まず、そこを訂正され、あ、ああ・・・そうだったと、
「蒼紫、いったいどうしたの?」
と武尊は言い直した。
「まあ、そんな草の中に埋もれていないでもう少し気持ちがいい場所にいかないか。」
今日も忍び装束の蒼紫を見ながら武尊はよろよろしながら草むらから出てきた。
「大丈夫か、まだ体調はよくないのか。」
「まだ万全じゃないです・・・。はぁ~、いらない体力使ってしまいましたよ・・・、いるならいるともと早く言って下さいね。」
疲れたといいながら草丈の低い場所でバタンと武尊はうつ伏せに寝転がった。
「ちょっと休憩します。本当に疲れました。」
昨晩の睡眠もあまり取れてない武尊はこのまま寝てしまいそうな気持になったが今日は診察後は出勤しなければならない・・・・。
と、思い睡魔と闘ったが温かな日差しに後押しされ、ふっと意識を失った。
「・・・・。」
蒼紫はそんな武尊の姿を見つめ自分も武尊の横に腰を下ろすと優しく武尊の髪を指ですいた。
そしてその指で武尊のほほを触れた時、
武尊はハッと意識を取り戻した。
「危ない・・・寝ちゃうところでした。」
と武尊はよっこらしょと座り直した。
「しかしよく気が付いたな。」
普通の侍でも余裕で気付かせることない距離はあけていたのにと、蒼紫は武尊に驚いていた。
「気配のことですか?んん・・・何でかと言われても、気が付いたから気が付いたとしかいえないのですが。それより蒼紫はどうして私が隠れている場所がわかったのですか?結構隠れるのには自信があったんですけど。」
「見た目には隠れたつもりかもしれないが、武尊の乱れた呼吸の音が聞こえたから簡単に場所はわかったぞ。」
息もひそめたつもりだったのに・・・、と武尊は蒼紫の耳のよさにちょっと背筋が寒くなった。
「(ほんと、忍ってすごいかも・・・。)そうですか・・・もっと精進しなければ、ですね。」
「いや、普通の輩なら問題ないだろう、むしろ武尊の体調を考えれば最良の選択だな。」
「というか、蒼紫、まさかかくれんぼをしにきたわけじゃないですよね?」
「あ、ああ・・・。」
と、言って蒼紫はゴホンと咳き込んだ。
「今日武尊が高荷の所へ行くと分かっていたから迎えに行ってやろうかと・・・あんな体調のまま一人で行かせるには危険だからな。だが斎藤の家から出てきた武尊は怖い顔をしていたから(機嫌が悪いと思って)話しかけぬ方が良いと判断しそのまま後をついて行ったという事だ。」
「最初からいたんですか!?」
「ああ・・。」
「まだ本調子じゃないのに・・・結構あせったんですよ。私、蒼紫みたいに玄人じゃないんですから勘弁してください。」
「すまなかった。」
「喉が乾いちゃった。」
と、武尊は立ち上がった。
「何処へ行く。」
「川の水を飲もうかと・・・。」
という武尊に蒼紫は、
「もしよければこれを飲め。そこの川の水よりはいいと思うが。」
と、武尊に腰につけてあった竹筒を差し出した。
「これは?」
「道場の井戸の水だが。」
武尊は立ち上がったついでに川を見下ろした。
河岸に近い所は流れが悪く水が澱んでいた。
「・・・お水いただいてもいいですか?」
「ああ、もちろんだ。」
武尊は蒼紫から竹筒を受け取ると水をゴクゴクと飲んだ。
「おいしい・・・。」
「それはよかった。」
という蒼紫を武尊は見た。
「どうかしたか。」
「いえ、ただ私が家を出るところからいたという事は蒼紫はもっと早くに神谷道場を出たんでしょ?朝餉は?」
「取っていないが別に大丈夫だ。」
「だめ。」
大丈夫だと言うのに即否定され、蒼紫はその言葉の真意を確かめようと武尊を見ると、武尊は手に持っていた包とその中の竹の皮を開いておにぎりを蒼紫に差し出した。
「これよかったらどうぞ。塩しかついていないけど。」
「どうしたんだ、これは。武尊の弁当か、それならもらうわけにはいかないな。」
「これは私の朝ごはん。朝あんまり食欲がなかったからおにぎりにして持ってきたの。ここの土手の辺りで食べようと思っていたから丁度いいかも。」
「武尊の分ならもらうわけにいかない。しっかり食べろ。」
「どうやら昨日食べ過ぎてしまって胸やけがするから、二つは多いと思ってたの。だから・・・よかったら一つ食べて?時尾さんが握ったんじゃないから美味しいかどうか分からないけど。」
「・・・武尊が握ったのか?」
「そう。しょっぱすぎたらごめんなさい、って言う感じ。」
「そうか・・・、それならいただくとするか。」
と蒼紫は一つ手に取るとパクっと口にした。
「美味い・・・。」
「よかった。」
蒼紫の言葉に武尊の顔がぱっと明るくなった。
ちいさな事だけど誉められた。
ちいさな事だけどそれが嬉しい。
蒼紫とは友といっても禅友なんて変な友達柄だけど距離を置いてこれくらいのことが出来るなら友っていうのもいいのかもしれない。
そして私はずるい・・・。
自分は独りだと言いつつもどこか他人に温もりを求めるなんて・・・。
そんな思いが胸をよぎったが今は蒼紫と食べる時間の楽しさに武尊は自分の負の心を隠した。