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112.おにぎりと土下座 (斎藤・夢主・時尾)
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斎藤が出て行った後、
「時尾さん・・・、お手数ですが今朝も薬を塗ってもらってもよろしいでしょうか。私もそろそろ出発しなければ職場に着くのが遅くなってしまう。」
「ええ、よろしくてよ。ではお部屋の方へ参りましょうか。」
武尊は先ほどから斎藤に昨晩言われた事を言うチャンスを狙っていた。
言い出しにくかったのだが、自分の非はちゃんと謝らなくてはいけない。
「時尾さん・・。」
時尾が薬を塗っている時、武尊はようやく話しを切り出した。
「なんですか?武尊さん。」
先程の明るい声とは違い、急に思いつめたような武尊の声に時尾は注意を払いつつ穏やかに返事をした。
「昨日はすみませんでした。私・・・自分の両親がいないという話をしてからずっと、武士の家系に生まれた時尾さんは私の事をきっと蔑んでいるだろうと勝手に思い込んでました・・・だから居辛くなって急いで家を出たんです。逃げ出したかったんです、時尾さんの所から。」
沈んだ声で武尊はそう言った。
(確かに昨日こうやって武尊さんに薬を塗っていた時に武尊さんからそんな話を聞いたけど・・その後何かよそよそしい雰囲気になって急に出勤して行ったのはそういうことだったのね。)
と、時尾は昨日の武尊の行動の理由が分かった。
けれども自分が昨日の武尊さんの行動を心配していたことは夫にしか言ってないはず。
ということは、やはり夫がその事を武尊さんに言ったのだ、そしてそれが原因でこれほど泣いたのだったら逆に時尾は悪い事をしたと責任を感じた。
「武尊さん・・・そのことで若しかして夫に何か言われました?」
「はい、当たり前に怒られました。生まれのことで俺や時尾が偏見の目で私を見るような人間なのかって。藤田警部補の言うことはもっともな事です、言っていただいてよかったと思っています。ごめんなさい、時尾さんみたいないい人を少しでもそんな風に思った自分はこんな浅はかな人間です。」
「武尊さん・・・。」
「こんな私を軽蔑して下さって結構です。だけど・・・もう少しの間・・・契約の期間が切れるまで、ここに置いて下さい。」
武尊は時尾の方を向いて姿勢を正し、両手をついて頭を下げた。
「武尊さん土下座なんておやめください。勘違いは誰にでもある事です。」
時尾は冷静にしかし優しく武尊にそう言うと自分も武尊に向かって正座をした。
「それに武尊さん、期間が切れるまでと言わずにずっと家にいらっしゃって下さってもかまわないんですよ。五郎さんだけではなく、私も武尊さんと親しくしたいと思っているんですもの。ですから、お顔をお上げになってくださいな。」
(・・・・え??)
武尊は畳を間近に頭をつけながら時尾の話を聞いていたが特に最後の所が良くわからず疑問に思って思わず顔をあげて時尾を見た。
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする武尊に、
「まだ夫から聞いてませんでした?」
と微笑む時尾に武尊は完全に面食らった。
「なんのことですか?」
「私の口から申し上げるよりやはりここは夫から最初に話があった方がいいかと思いますので、内緒です。」
「え?!」
「そうそう、武尊さんには沈んだ顔は似合いませんよ。さあ、先程のように笑ってくださいな。」
「時尾さん!教えて下さいよ。一体何の話なんですか?」
「さあ包帯を巻きますよ、武尊さん。あんまりお話してますとお時間が遅くなりますわね。」
時尾は笑ってそうやって話を棚上げにした。
「時尾さん・・・。」
「そうそう、先程のお話ですが、私は武尊さんが何処の御生まれでも構いませんよ。私は一応士族ですが貧乏士族なんて名ばかりですし明治の世は四民平等ですからね。」
と時尾はコロコロ笑った。
「はい、終わりましたよ。一応怪我人ですからお気を付けて行ってくださいね。」
武尊は完全に時尾のペースにはまってしまった。
武尊も苦笑いをせざるをえなくて、
「ありがとうございます時尾さん、では行ってきますね。」
と、時尾に礼をすると、おにぎりを布に包み勝手口を出た。
おまけ:
いつも優しい時尾さん。
手のひらで転がされるのは夫も夢主も同じなのです。(笑)
「時尾さん・・・、お手数ですが今朝も薬を塗ってもらってもよろしいでしょうか。私もそろそろ出発しなければ職場に着くのが遅くなってしまう。」
「ええ、よろしくてよ。ではお部屋の方へ参りましょうか。」
武尊は先ほどから斎藤に昨晩言われた事を言うチャンスを狙っていた。
言い出しにくかったのだが、自分の非はちゃんと謝らなくてはいけない。
「時尾さん・・。」
時尾が薬を塗っている時、武尊はようやく話しを切り出した。
「なんですか?武尊さん。」
先程の明るい声とは違い、急に思いつめたような武尊の声に時尾は注意を払いつつ穏やかに返事をした。
「昨日はすみませんでした。私・・・自分の両親がいないという話をしてからずっと、武士の家系に生まれた時尾さんは私の事をきっと蔑んでいるだろうと勝手に思い込んでました・・・だから居辛くなって急いで家を出たんです。逃げ出したかったんです、時尾さんの所から。」
沈んだ声で武尊はそう言った。
(確かに昨日こうやって武尊さんに薬を塗っていた時に武尊さんからそんな話を聞いたけど・・その後何かよそよそしい雰囲気になって急に出勤して行ったのはそういうことだったのね。)
と、時尾は昨日の武尊の行動の理由が分かった。
けれども自分が昨日の武尊さんの行動を心配していたことは夫にしか言ってないはず。
ということは、やはり夫がその事を武尊さんに言ったのだ、そしてそれが原因でこれほど泣いたのだったら逆に時尾は悪い事をしたと責任を感じた。
「武尊さん・・・そのことで若しかして夫に何か言われました?」
「はい、当たり前に怒られました。生まれのことで俺や時尾が偏見の目で私を見るような人間なのかって。藤田警部補の言うことはもっともな事です、言っていただいてよかったと思っています。ごめんなさい、時尾さんみたいないい人を少しでもそんな風に思った自分はこんな浅はかな人間です。」
「武尊さん・・・。」
「こんな私を軽蔑して下さって結構です。だけど・・・もう少しの間・・・契約の期間が切れるまで、ここに置いて下さい。」
武尊は時尾の方を向いて姿勢を正し、両手をついて頭を下げた。
「武尊さん土下座なんておやめください。勘違いは誰にでもある事です。」
時尾は冷静にしかし優しく武尊にそう言うと自分も武尊に向かって正座をした。
「それに武尊さん、期間が切れるまでと言わずにずっと家にいらっしゃって下さってもかまわないんですよ。五郎さんだけではなく、私も武尊さんと親しくしたいと思っているんですもの。ですから、お顔をお上げになってくださいな。」
(・・・・え??)
武尊は畳を間近に頭をつけながら時尾の話を聞いていたが特に最後の所が良くわからず疑問に思って思わず顔をあげて時尾を見た。
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする武尊に、
「まだ夫から聞いてませんでした?」
と微笑む時尾に武尊は完全に面食らった。
「なんのことですか?」
「私の口から申し上げるよりやはりここは夫から最初に話があった方がいいかと思いますので、内緒です。」
「え?!」
「そうそう、武尊さんには沈んだ顔は似合いませんよ。さあ、先程のように笑ってくださいな。」
「時尾さん!教えて下さいよ。一体何の話なんですか?」
「さあ包帯を巻きますよ、武尊さん。あんまりお話してますとお時間が遅くなりますわね。」
時尾は笑ってそうやって話を棚上げにした。
「時尾さん・・・。」
「そうそう、先程のお話ですが、私は武尊さんが何処の御生まれでも構いませんよ。私は一応士族ですが貧乏士族なんて名ばかりですし明治の世は四民平等ですからね。」
と時尾はコロコロ笑った。
「はい、終わりましたよ。一応怪我人ですからお気を付けて行ってくださいね。」
武尊は完全に時尾のペースにはまってしまった。
武尊も苦笑いをせざるをえなくて、
「ありがとうございます時尾さん、では行ってきますね。」
と、時尾に礼をすると、おにぎりを布に包み勝手口を出た。
おまけ:
いつも優しい時尾さん。
手のひらで転がされるのは夫も夢主も同じなのです。(笑)