※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
109.描かれているのは藤の花 (斎藤・夢主)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
パタム。
張が扉を閉めて出て行って、部屋は急にシンと静かになった。
武尊は自分の真横に立つ斎藤の手に持った、白銀の光を放つ刀身を部屋の空気と同じぐらい静かに見つめていた。
そんな武尊に斎藤は、
「いい刀だ。」
と、言いながら刀の裏と表を交互に見た。
「武尊はどう思う。」
と聞かれ、武尊は
「私?私は・・・斎藤さんや張みたいに刀の良さはわからないけど・・・・・、受ける感じは凛としていて、美しいと思う・・・。」
そう、まるで人の血なんか吸ったことがないような神々しささえありそうだと思ってしまうほどに。
「そう思えるならそれほどまでにこの刀に怯えるな。確かに多くの人を斬った刀ではあるが、同じ分だけ武尊を守った刀でもあるんだからな。」
「守った・・・。」
武尊は斎藤のその言葉を口の中で小さく繰り返し、大きな目でゆっくり斎藤を見つめた。
斎藤は武尊を諭すように、
「そうだ、幾度の死闘にも折れずに武尊を守った、そう考えろ。いくら十六夜丸の腕がよかろうが刀がなまくらでは話にならん。」
と言った。
武尊は斎藤のそんな言葉を聞いて刀に対しての恐れの気持ちが少し弱まった。
武尊は単に人の命を奪う道具としてではなく、刀が守る事に使われたという事に初めて気が付いた気がしたからだ。
と、同時に、こんな自分の命なんて守られなくてもよかったのにとも思った。
だけど、この刀はこんな自分の命でさえ守った・・・。
私はこの刀に守られた・・・。
こんな私の命でも守ってくれた・・・。
そんな武尊の表情の変化を見て斎藤は、
「武尊がやってみろ。」
と言って刀身を武尊に差し出した。
「え?やるって、若しかして手入れですか?」
「そうだ。」
「でもやった事ないですから・・・。」
「この間俺がやるのを見ていただろう。覚えておけ、と言わなかったか。」
「い・・・言いましたけど・・・。」
ズバっと斎藤にそう言われた武尊だったが実際の経験のない刀の手入れをの『やれ。』と言われても・・・と困った。
しかもこれは平安時代からの名刀らしい。
下手に手入れして、逆に汚したり傷つけてしまっては大変だと、尻込み状態だ。
そんな武尊に斎藤は厳しい口調をふっと和らげて、
「心配するな、ちゃんと教えてやる。これは武尊の刀だ。一番心をこめられるのは武尊なんだからな。」
と言われ、武尊は斎藤に手取り足取り教えられて大汗をかきながらもなんとか刀身の手入れを終わらせた。
「後は俺がやる。」
という斎藤に刀身を渡し、斎藤はそれにハバキ、鍔、柄をつけていき、最後に鞘に納めた。
一連の流れが終わって手入れで汗だくになった武尊が、
「終わりましたね。」
と、大仕事でも終わらせたかのように言った。
「それにしても刀があんな風な作りになっていたとは知りませんでした。いい勉強になりました。」
と斎藤に礼を言った。
「いや、俺も武尊の刀が大包平だとは知らなかったからな、面白かったぞ。」
と、斎藤が楽しそうに言うのを見て、
「気に入ったのなら斎藤さんにあげますよ。」
と武尊は言った。
斎藤は、
「いや、俺はこれで十分だ。」
と自分の腰の刀を触った。
「俺にはこれくらい重量がある方がいい。それに俺には・・・。」
と、言って斎藤は刀を抜こうとするが、最初の張のようにそれは抜けなかった。
「やはりな。俺には抜かせないつもりらしいぞ。生意気な刀だ。手入れの時だけか?触っていいのは。」
と、刀に向かって言った。
「どうやら主以外に抜かれるのを嫌がるようだな、この刀は。」
「・・・嘘・・・、刀なのに?」
と、武尊もいまのを見ていて信じられないとばかりに驚いた。
兄も抜くことが出来た。
もちろん自分も。
だから誰でも普通に抜けると思っていたのに他の人が抜くことが出来ない嘘のような事実があるなんて、と、武尊が驚いている横で斎藤は、
「平安末期からこれだけ長生きしている刀だ。何かしら憑りついたのかもしれんぞ。だが何にせよ、使えん刀などこちらからお断りだ。」
と、斎藤はそう言って刀を武尊に投げて寄こした。
「おっと!」
と、武尊は慌てて刀を受け取った。
張が扉を閉めて出て行って、部屋は急にシンと静かになった。
武尊は自分の真横に立つ斎藤の手に持った、白銀の光を放つ刀身を部屋の空気と同じぐらい静かに見つめていた。
そんな武尊に斎藤は、
「いい刀だ。」
と、言いながら刀の裏と表を交互に見た。
「武尊はどう思う。」
と聞かれ、武尊は
「私?私は・・・斎藤さんや張みたいに刀の良さはわからないけど・・・・・、受ける感じは凛としていて、美しいと思う・・・。」
そう、まるで人の血なんか吸ったことがないような神々しささえありそうだと思ってしまうほどに。
「そう思えるならそれほどまでにこの刀に怯えるな。確かに多くの人を斬った刀ではあるが、同じ分だけ武尊を守った刀でもあるんだからな。」
「守った・・・。」
武尊は斎藤のその言葉を口の中で小さく繰り返し、大きな目でゆっくり斎藤を見つめた。
斎藤は武尊を諭すように、
「そうだ、幾度の死闘にも折れずに武尊を守った、そう考えろ。いくら十六夜丸の腕がよかろうが刀がなまくらでは話にならん。」
と言った。
武尊は斎藤のそんな言葉を聞いて刀に対しての恐れの気持ちが少し弱まった。
武尊は単に人の命を奪う道具としてではなく、刀が守る事に使われたという事に初めて気が付いた気がしたからだ。
と、同時に、こんな自分の命なんて守られなくてもよかったのにとも思った。
だけど、この刀はこんな自分の命でさえ守った・・・。
私はこの刀に守られた・・・。
こんな私の命でも守ってくれた・・・。
そんな武尊の表情の変化を見て斎藤は、
「武尊がやってみろ。」
と言って刀身を武尊に差し出した。
「え?やるって、若しかして手入れですか?」
「そうだ。」
「でもやった事ないですから・・・。」
「この間俺がやるのを見ていただろう。覚えておけ、と言わなかったか。」
「い・・・言いましたけど・・・。」
ズバっと斎藤にそう言われた武尊だったが実際の経験のない刀の手入れをの『やれ。』と言われても・・・と困った。
しかもこれは平安時代からの名刀らしい。
下手に手入れして、逆に汚したり傷つけてしまっては大変だと、尻込み状態だ。
そんな武尊に斎藤は厳しい口調をふっと和らげて、
「心配するな、ちゃんと教えてやる。これは武尊の刀だ。一番心をこめられるのは武尊なんだからな。」
と言われ、武尊は斎藤に手取り足取り教えられて大汗をかきながらもなんとか刀身の手入れを終わらせた。
「後は俺がやる。」
という斎藤に刀身を渡し、斎藤はそれにハバキ、鍔、柄をつけていき、最後に鞘に納めた。
一連の流れが終わって手入れで汗だくになった武尊が、
「終わりましたね。」
と、大仕事でも終わらせたかのように言った。
「それにしても刀があんな風な作りになっていたとは知りませんでした。いい勉強になりました。」
と斎藤に礼を言った。
「いや、俺も武尊の刀が大包平だとは知らなかったからな、面白かったぞ。」
と、斎藤が楽しそうに言うのを見て、
「気に入ったのなら斎藤さんにあげますよ。」
と武尊は言った。
斎藤は、
「いや、俺はこれで十分だ。」
と自分の腰の刀を触った。
「俺にはこれくらい重量がある方がいい。それに俺には・・・。」
と、言って斎藤は刀を抜こうとするが、最初の張のようにそれは抜けなかった。
「やはりな。俺には抜かせないつもりらしいぞ。生意気な刀だ。手入れの時だけか?触っていいのは。」
と、刀に向かって言った。
「どうやら主以外に抜かれるのを嫌がるようだな、この刀は。」
「・・・嘘・・・、刀なのに?」
と、武尊もいまのを見ていて信じられないとばかりに驚いた。
兄も抜くことが出来た。
もちろん自分も。
だから誰でも普通に抜けると思っていたのに他の人が抜くことが出来ない嘘のような事実があるなんて、と、武尊が驚いている横で斎藤は、
「平安末期からこれだけ長生きしている刀だ。何かしら憑りついたのかもしれんぞ。だが何にせよ、使えん刀などこちらからお断りだ。」
と、斎藤はそう言って刀を武尊に投げて寄こした。
「おっと!」
と、武尊は慌てて刀を受け取った。