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104.墓参帰路 (斎藤・夢主・比古・剣心・薫)
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「入院ボケは直ったか?」
しばらく武尊の尻をさすり続けていた手を止めて斎藤が言った。
「これ(尻叩き)って入院ボケを直すためだったんですか?」
ようやく、じんじんとした痛みも取れた武尊が恨めし気に聞いた。
「それも少しあるが、やはり社会情勢に無知すぎることに対してのお仕置きだな、・・・本当に知らないのか伊藤を。」
「え~、伊藤・・伊藤・・・。明治で伊藤っていったら伊藤博文ぐらいしか知らない。(というか名前しか知らないけど。確か、初代総理大臣になった人だったかな。)」
「それが伊藤卿だが・・・。」
「えーっ!伊藤卿って伊藤博文なの?!」
「武尊、言ってる事が何かおかしくないか?内務卿でない伊藤博文がいるのか?」
「え?・・あ・・・う・・・うう・・・いや、名前しか聞いたことなかったから内務卿って知らなかった・・・です、はい。」
(そうだよ、そうだよね、総理大臣になるぐらいの人だったらその前から政治的にトップの官職についていてもおかしくないよね・・って、でも若すぎない?いったい歳いくつなの伊藤博文って?)
ちょっと挙動不審気味の武尊を斎藤がいぶかしげに見る。
その視線に武尊は内心焦った。
だがここは決して絶対ボロを出してはいけない、意地でもしらを切らなければならない・・伊藤博文が初の総理大臣となり、憲法を発布し、そして中国ハルピンで暗殺されたなどという武尊が知り得る未来の事は・・。
斎藤は武尊の眼の奥底を刺すように見るが武尊も真っ直ぐな眼で斎藤の眼を見返していた。
「・・・・・・まあいい。」
と、斎藤は武尊を尻叩きにする前に消した煙草の代わりに新たにポケットから一本取り出すと火を点けた。
「分かっていると思うが、隠し事などすると次は尻叩き二十回だからな、武尊。」
と、斎藤はクッっと笑い武尊を見た。
武尊もふふーん、と笑って斎藤を見た。
「そっかー、伊藤卿って伊藤博文だったんだ。斎藤さんは伊藤卿をよく知ってるんですか?」
「いや・・・、伊藤は幕末京都にいることがほとんどなかったからな、新撰組もあまり重要視してはいなかった。」
「って言うことは幕府の敵だったんですよね。長州藩だったんですか?伊藤卿って。」
「嗚呼、今は内務卿などという官僚の職に就いているが、あれはかなり過激な男だ。松下村塾出身で、松陰が安政の大獄で斬首されてから倒幕派となり、英国公館の焼き討ちや、国学者も殺っている。だが・・・。」
「・・・だが?」
「同じ松下村塾の出でも桂と違い、伊藤は長州藩の秘密留学生として英国に派遣されている。」
「えっ!そんな事してたんですか、長州って。」
「俺もそれを知った時は驚きだったがな。俺達(新撰組)が京都で倒幕派を追い回していた間に伊藤のような奴らが薩摩を通して海外から武器を輸入したりするのに一役買っていたという訳だ。」
「・・・・・。」
「そして明治になり、勝ち組の長閥の一人としてその経歴を生かしめでたく内務卿となったわけだ。」
「伊藤卿って悪人なんですか?」
「悪人?フッ・・・どうかな。何を以て悪とするか・・・個人的に気にいらんといった感情は抜いて・・だ、」
フゥと、煙草をふかし斎藤は言葉を続ける。
「己の私欲の為に他者を虐げる者、私腹を肥やす者、そういった社会のダニはもちろんの事、志々雄真実のように再び動乱などを起こしてやっと落ち着き始めた新時代の崩壊を企む者・・・、いろいろいるが伊藤は政府要人の中でも私財が全くないくらいの金には綺麗と言われている。それに海外渡航の経験から日本の近代化政策も打ち出してきた。例えば鉄道もそうだな。開通したのが明治五年・・・工部省時代にかなり尽力をつくしたらしい。」
「ええっ!あの鉄道って伊藤が作ったの!?」
「逆に今伊藤が斬られることがあったら、維新三傑が亡き今、他に政(まつりごと)を仕切れる奴がいない・・・伊藤を斬れば日本の政治の屋台骨が一気に崩れる破目になる。」
「うぅ・・・。」
「それを考えれば今回の雪代縁なんぞ可愛いもんだ。私闘の範囲だからな。静粛すればそれで終わりだ。」
斎藤は煙草を挟んでいないほうの手で武尊の頭を撫で始めながら話を続けた。
「問題はそれに絡んで密輸された武器だ。幸か不幸か武器自体はほぼ全滅と考えていいだろうがそれを利用しようとした奴が特定できん。」
「もし伊藤卿がその件に噛んでいたとしても関係者が膨大過ぎてわからないですよね。」
「嗚呼、密輸の目的が分からんかぎり難しいな。」
「・・・ねぇ、斎藤さん。」
「ん、なんだ。」
「斎藤さん、私が言うのもなんだけど、それだけ頭が切れるんだから政治家になればよかったのに。」
「阿呆、俺は政治などには向かん。ぜんぜん高ぶらん・・・。」
それを聞いて、ぷっ、と武尊が噴きだす。
「どうせ似合わんと思っているんだろう。」
「ちょっと無愛想かな、と、思って・・ククク。」
どうやら政治家風な斎藤を想像したのがツボに入ったようだ。
「分かっていて言ってるだろう、武尊。戊辰に負けた俺達にはそんな場は廻ってこない。」
武尊はハッとして即座に斎藤に謝った。
「・・・ごめんなさい、そんなつもりじゃなかった。」
「分かっている。だが若し副長が生きていたら・・・あの人ならそれ位にはなっていたかもしれないな。」
「そうだね・・・。」
この人は歴史の表舞台に立つことは決してない。
だけど昔も今も決して変わる事のない悪即斬・・・。
武尊は顔の横の刀を見てそれを強く感じだ。
しばらく武尊の尻をさすり続けていた手を止めて斎藤が言った。
「これ(尻叩き)って入院ボケを直すためだったんですか?」
ようやく、じんじんとした痛みも取れた武尊が恨めし気に聞いた。
「それも少しあるが、やはり社会情勢に無知すぎることに対してのお仕置きだな、・・・本当に知らないのか伊藤を。」
「え~、伊藤・・伊藤・・・。明治で伊藤っていったら伊藤博文ぐらいしか知らない。(というか名前しか知らないけど。確か、初代総理大臣になった人だったかな。)」
「それが伊藤卿だが・・・。」
「えーっ!伊藤卿って伊藤博文なの?!」
「武尊、言ってる事が何かおかしくないか?内務卿でない伊藤博文がいるのか?」
「え?・・あ・・・う・・・うう・・・いや、名前しか聞いたことなかったから内務卿って知らなかった・・・です、はい。」
(そうだよ、そうだよね、総理大臣になるぐらいの人だったらその前から政治的にトップの官職についていてもおかしくないよね・・って、でも若すぎない?いったい歳いくつなの伊藤博文って?)
ちょっと挙動不審気味の武尊を斎藤がいぶかしげに見る。
その視線に武尊は内心焦った。
だがここは決して絶対ボロを出してはいけない、意地でもしらを切らなければならない・・伊藤博文が初の総理大臣となり、憲法を発布し、そして中国ハルピンで暗殺されたなどという武尊が知り得る未来の事は・・。
斎藤は武尊の眼の奥底を刺すように見るが武尊も真っ直ぐな眼で斎藤の眼を見返していた。
「・・・・・・まあいい。」
と、斎藤は武尊を尻叩きにする前に消した煙草の代わりに新たにポケットから一本取り出すと火を点けた。
「分かっていると思うが、隠し事などすると次は尻叩き二十回だからな、武尊。」
と、斎藤はクッっと笑い武尊を見た。
武尊もふふーん、と笑って斎藤を見た。
「そっかー、伊藤卿って伊藤博文だったんだ。斎藤さんは伊藤卿をよく知ってるんですか?」
「いや・・・、伊藤は幕末京都にいることがほとんどなかったからな、新撰組もあまり重要視してはいなかった。」
「って言うことは幕府の敵だったんですよね。長州藩だったんですか?伊藤卿って。」
「嗚呼、今は内務卿などという官僚の職に就いているが、あれはかなり過激な男だ。松下村塾出身で、松陰が安政の大獄で斬首されてから倒幕派となり、英国公館の焼き討ちや、国学者も殺っている。だが・・・。」
「・・・だが?」
「同じ松下村塾の出でも桂と違い、伊藤は長州藩の秘密留学生として英国に派遣されている。」
「えっ!そんな事してたんですか、長州って。」
「俺もそれを知った時は驚きだったがな。俺達(新撰組)が京都で倒幕派を追い回していた間に伊藤のような奴らが薩摩を通して海外から武器を輸入したりするのに一役買っていたという訳だ。」
「・・・・・。」
「そして明治になり、勝ち組の長閥の一人としてその経歴を生かしめでたく内務卿となったわけだ。」
「伊藤卿って悪人なんですか?」
「悪人?フッ・・・どうかな。何を以て悪とするか・・・個人的に気にいらんといった感情は抜いて・・だ、」
フゥと、煙草をふかし斎藤は言葉を続ける。
「己の私欲の為に他者を虐げる者、私腹を肥やす者、そういった社会のダニはもちろんの事、志々雄真実のように再び動乱などを起こしてやっと落ち着き始めた新時代の崩壊を企む者・・・、いろいろいるが伊藤は政府要人の中でも私財が全くないくらいの金には綺麗と言われている。それに海外渡航の経験から日本の近代化政策も打ち出してきた。例えば鉄道もそうだな。開通したのが明治五年・・・工部省時代にかなり尽力をつくしたらしい。」
「ええっ!あの鉄道って伊藤が作ったの!?」
「逆に今伊藤が斬られることがあったら、維新三傑が亡き今、他に政(まつりごと)を仕切れる奴がいない・・・伊藤を斬れば日本の政治の屋台骨が一気に崩れる破目になる。」
「うぅ・・・。」
「それを考えれば今回の雪代縁なんぞ可愛いもんだ。私闘の範囲だからな。静粛すればそれで終わりだ。」
斎藤は煙草を挟んでいないほうの手で武尊の頭を撫で始めながら話を続けた。
「問題はそれに絡んで密輸された武器だ。幸か不幸か武器自体はほぼ全滅と考えていいだろうがそれを利用しようとした奴が特定できん。」
「もし伊藤卿がその件に噛んでいたとしても関係者が膨大過ぎてわからないですよね。」
「嗚呼、密輸の目的が分からんかぎり難しいな。」
「・・・ねぇ、斎藤さん。」
「ん、なんだ。」
「斎藤さん、私が言うのもなんだけど、それだけ頭が切れるんだから政治家になればよかったのに。」
「阿呆、俺は政治などには向かん。ぜんぜん高ぶらん・・・。」
それを聞いて、ぷっ、と武尊が噴きだす。
「どうせ似合わんと思っているんだろう。」
「ちょっと無愛想かな、と、思って・・ククク。」
どうやら政治家風な斎藤を想像したのがツボに入ったようだ。
「分かっていて言ってるだろう、武尊。戊辰に負けた俺達にはそんな場は廻ってこない。」
武尊はハッとして即座に斎藤に謝った。
「・・・ごめんなさい、そんなつもりじゃなかった。」
「分かっている。だが若し副長が生きていたら・・・あの人ならそれ位にはなっていたかもしれないな。」
「そうだね・・・。」
この人は歴史の表舞台に立つことは決してない。
だけど昔も今も決して変わる事のない悪即斬・・・。
武尊は顔の横の刀を見てそれを強く感じだ。