※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
100.世の中とはこんなもんです (斎藤・夢主・時尾)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
=玄関にて=
しばらく無言で玄関で立っていた斎藤と時尾だったが時尾が、
「お座りになって下さい。」
と、夫に腰を下ろさせ、自分は正座で正対して話し出した。
「五郎さん、武尊さんは出張と聞いておりましたがあのお怪我はどうされたのでしょうか。」
と、ずばり直球で聞いてきた。
「職務上、任務の内容についてはお前でも話せん。」
「分かっております。けれども武尊さんは女子にございます。最初にお伺いした時は本来宿泊される所の御都合が悪く代りに我が家へお泊りになったという事でございますが、言いかえますと、私は武尊さんを藤田家の名においてそのお宅様の代りにお預かりしているのでございます。武尊さんに万が一の事があれば・・・・どうするおつもりだったのですか。」
夫は普通の警官よりも危険が伴う仕事を任されている、と薄々感じるものの逆にそういう仕事を任されていると誇りさえ感じる。
だがその一方、何日も帰らぬ夫に心痛め無事をどれほど祈り日々を暮してきたことか・・・。
そして家族の祈り届かず実際亡くなった人もいる。
この間まで預かっていた男の子もそうやって殉職した部下の身内だったという。
どんな理由があろうとも夫がこの家に連れてきた以上、時尾には武尊はその身を預かり守るという使命感がある。
それに今は使命感だけではない。
時尾に取って武尊は東京で一番心を許せる友人でもあるのだ。
まして女子の身・・・仕事とはいえ、危険な目に遭って欲しくない。
武尊に生まれた者としてそのような事を言うものではないと怒られそうだが、女子が犠牲になるのは・・・・・この明治の世にあって欲しくないのだ。
と、時尾は何年経っても忘れられない会津戦争の惨状を思い出した。
しかも夫は武尊を好いているのではなかったのか。
自分の知っている夫は他の誰よりも血の熱い人間ではなかったのか。
自分の大切な人を他人に傷つけられて何を悠長に家に戻って来たのか。
夫の性格からすれば事が解決するまでは帰ってこなさそうなのに、と、様々な事を時尾は考えていた。
とそのうちに時尾は、はっと気が付いた。
夫が家に戻って来たということは若しかしてすでに事件は解決したのではないかということ。
だとしたらまた自分は余計な口出しをしてしまったのだろうか。
悩む時尾の表情から斎藤は時尾が何を考えているのか、一部始終すべて読み取っていた。
そして、時尾も夫の目から自分が思っていることをすべて悟られていると分かってしまった。
そういう夫なのだ。
すべてはまた自分の思い違いだと、先程はなんて偉そうな事を夫に言ってしまったのだろうと時尾はうなだれた。
「すみません・・・・私としたらまた早とちりを・・・。」
「いい、時尾の言った事は間違ってはいない。」
と、斎藤はフォローした。
時尾がこのように自分に意見してくるのはほとんどない事だ。
とはいえ、時尾も女。
こうなった時は黙って聞いてやるのがいいということを斎藤は知っている。
聡明な妻は溜めていた不満を一気に言ってくるが、その途中で大抵今回のように気がついて謝って来るのだ。
(まあ、今回の推測は間違っているがその方がいい。)
と、斎藤は思った。
偶然とはいえ、まさか自分が武尊を殺しかけた一人であると知られると本気でまずい。
まして十六夜丸の話をしなければならなくなった場合は最悪だ。
そう思っていた時、時尾がポツリと話し出した。
「仕事とはいえ・・・・、武尊さんを傷物にしては預かっている我が家の面目が立ちません。五郎さん・・・・この責任どう取るおつもりですか。」
預かりの身である武尊が怪我を負ったのには間違いない。
時尾はこれに関してはやはり引くことはできない。
(責任を取る・・・だと?)
武尊の怪我に関してやったのは確かに自分がやったがあれは不可抗力というものと斎藤は考える。
しかし真実を知らない時尾の言う【責任を取る】の言い方からすると考えられるのはただ一つ。
(もしかしてあの事か!)
と、あることが斎藤の脳裏をよぎった。
「いい機会です。私から武尊さんにお話しして参りましょう。」
と、時尾がすくっと立ち上がった。
「待て、時尾!」
と、斎藤も立ち上がろうとするが時尾は、
「これは女子の話でございます。」
ピシャと言うと武尊の部屋の方へ向かった。
しばらく無言で玄関で立っていた斎藤と時尾だったが時尾が、
「お座りになって下さい。」
と、夫に腰を下ろさせ、自分は正座で正対して話し出した。
「五郎さん、武尊さんは出張と聞いておりましたがあのお怪我はどうされたのでしょうか。」
と、ずばり直球で聞いてきた。
「職務上、任務の内容についてはお前でも話せん。」
「分かっております。けれども武尊さんは女子にございます。最初にお伺いした時は本来宿泊される所の御都合が悪く代りに我が家へお泊りになったという事でございますが、言いかえますと、私は武尊さんを藤田家の名においてそのお宅様の代りにお預かりしているのでございます。武尊さんに万が一の事があれば・・・・どうするおつもりだったのですか。」
夫は普通の警官よりも危険が伴う仕事を任されている、と薄々感じるものの逆にそういう仕事を任されていると誇りさえ感じる。
だがその一方、何日も帰らぬ夫に心痛め無事をどれほど祈り日々を暮してきたことか・・・。
そして家族の祈り届かず実際亡くなった人もいる。
この間まで預かっていた男の子もそうやって殉職した部下の身内だったという。
どんな理由があろうとも夫がこの家に連れてきた以上、時尾には武尊はその身を預かり守るという使命感がある。
それに今は使命感だけではない。
時尾に取って武尊は東京で一番心を許せる友人でもあるのだ。
まして女子の身・・・仕事とはいえ、危険な目に遭って欲しくない。
武尊に生まれた者としてそのような事を言うものではないと怒られそうだが、女子が犠牲になるのは・・・・・この明治の世にあって欲しくないのだ。
と、時尾は何年経っても忘れられない会津戦争の惨状を思い出した。
しかも夫は武尊を好いているのではなかったのか。
自分の知っている夫は他の誰よりも血の熱い人間ではなかったのか。
自分の大切な人を他人に傷つけられて何を悠長に家に戻って来たのか。
夫の性格からすれば事が解決するまでは帰ってこなさそうなのに、と、様々な事を時尾は考えていた。
とそのうちに時尾は、はっと気が付いた。
夫が家に戻って来たということは若しかしてすでに事件は解決したのではないかということ。
だとしたらまた自分は余計な口出しをしてしまったのだろうか。
悩む時尾の表情から斎藤は時尾が何を考えているのか、一部始終すべて読み取っていた。
そして、時尾も夫の目から自分が思っていることをすべて悟られていると分かってしまった。
そういう夫なのだ。
すべてはまた自分の思い違いだと、先程はなんて偉そうな事を夫に言ってしまったのだろうと時尾はうなだれた。
「すみません・・・・私としたらまた早とちりを・・・。」
「いい、時尾の言った事は間違ってはいない。」
と、斎藤はフォローした。
時尾がこのように自分に意見してくるのはほとんどない事だ。
とはいえ、時尾も女。
こうなった時は黙って聞いてやるのがいいということを斎藤は知っている。
聡明な妻は溜めていた不満を一気に言ってくるが、その途中で大抵今回のように気がついて謝って来るのだ。
(まあ、今回の推測は間違っているがその方がいい。)
と、斎藤は思った。
偶然とはいえ、まさか自分が武尊を殺しかけた一人であると知られると本気でまずい。
まして十六夜丸の話をしなければならなくなった場合は最悪だ。
そう思っていた時、時尾がポツリと話し出した。
「仕事とはいえ・・・・、武尊さんを傷物にしては預かっている我が家の面目が立ちません。五郎さん・・・・この責任どう取るおつもりですか。」
預かりの身である武尊が怪我を負ったのには間違いない。
時尾はこれに関してはやはり引くことはできない。
(責任を取る・・・だと?)
武尊の怪我に関してやったのは確かに自分がやったがあれは不可抗力というものと斎藤は考える。
しかし真実を知らない時尾の言う【責任を取る】の言い方からすると考えられるのはただ一つ。
(もしかしてあの事か!)
と、あることが斎藤の脳裏をよぎった。
「いい機会です。私から武尊さんにお話しして参りましょう。」
と、時尾がすくっと立ち上がった。
「待て、時尾!」
と、斎藤も立ち上がろうとするが時尾は、
「これは女子の話でございます。」
ピシャと言うと武尊の部屋の方へ向かった。