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98.幕末の亡霊 (斎藤・夢主)
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とりあえず神谷道場訪問の許可をもらい武尊はほっとした。
けれども、どうも今までの流れからすると斎藤さんは自分が神谷道場へ行くことに対しあまりいい感情を持っているようには思えない、と武尊は感じた。
神谷道場には何か斎藤さんが懸案するような事でもあるのだろうか。
そう思った武尊は疑問を斎藤にぶつけてみた。
「斎藤さん、斎藤さんは私が神谷道場に行くことをあまりいいと思ってないような感じがするんですけど、なぜですか?」
「何故・・だと?」
斎藤は咥えていた煙草を指に挟むと、
「あの【お気楽】で【能天気】で【行き当たりばったり】の【へらへら】とした【緊張感のない奴ら】のどこに良さがあると言うんだ。武尊も行けば分かる。はっきり言っておくが、抜刀斎もそうだがあそこの連中を見ているとイライラする。」
と、一気に捲し立てた。
斎藤が毒舌ではあると知っていながらも、珍しく嫌悪感を思いっきり前面に出す斎藤に武尊は驚いた。
斎藤をここまでそうさせるお弟子さんや神谷道場の人達というのは・・・。
想像力は豊かな方だと自負する武尊にもその姿を想像することは難しかった。
何しろ抜刀斎という人は伝説の人斬りであの師匠の弟子なのだ。
それなのに、こんなに身も蓋もない言われ方をするなんて・・・一体どんな人物??
流石の武尊もこれには腕を組みながら悩んだ。
「御意見・・・参考にさせていただきます。」
そう言って武尊は考えた。
元々斎藤さんとお弟子さんは新撰組と維新側という立場で敵対していたというのもあるのだろうが、同じく薩摩の維新志士であった川路とはそんなに仲が悪くないように思える。
それは何故なんだろう。
と、武尊が考えてながら歩いていると斎藤が、
「だが俺が思うに、抜刀斎の話を聞いたところで武尊の納得しそうな話は聞けないと思うが。」
と、斎藤は水を差す様に言った。
「それってどういう意味ですか?」
と武尊が聞くと、
「人斬りは人斬り・・・、幕末に奴と俺が共有した唯一の【正義】も、人斬りをやめ【不殺(ころさず)】などとほざいている奴にはもう何も共有するものなど何もない。・・・武尊。お前は俺側の人間だ。奴とは合わん、考え方も価値観もな・・・。」
「それでも一応行ってきます、取りあえず自分の目で確認しないと。」
「嗚呼・・、行って来い。そして失望してくるんだな。」
「・・・合わないのはわかりますけど、随分な言い方ですね。・・・嫌いなんですか?抜刀斎さんが。」
「奴はもう俺が決着を望んだ抜刀斎ではないからな・・・、興味が湧かんだけだ。」
そう言った斎藤はいっそう眉間に皺を寄せながらも何処か遠くを見ているようだった。
「・・・・・。」
武尊は斎藤のその顔を見て前を向いて歩いた。
隣で斎藤の煙草を吸って吐く、その呼吸が何度も繰り返されるのが聞こえる。
武尊は最後に言った斎藤の言葉・・・そう、その言葉には失望の色が隠されていることを武尊は見抜いた。
まるでずっと連れ添った恋人の心変わりを責めるような、そんな斎藤の気持ちが武尊に伝わった。
「・・・斎藤さん。」
「なんだ。」
「斎藤さんは抜刀斎さんが好きだったんですね。」
もちろんこれは武尊がわざと大げさに言ったものだったが武尊にとっては手痛い一言となった。
ピタ。
斎藤の足取りが止まった。
「ん?」
武尊が止まった斎藤を見上げると斎藤はこめかみに青筋が立てて、
「阿呆!気色の悪い事を言うな!どこをどう考えたらそうなるんだ。!」
と、武尊の頭にげんこつを落とした。
「ぐわっ!」
久しぶりに受けた斎藤の鉄拳に武尊は叫んだ。
斎藤はそんな武尊を横目に、
「自業自得だ。・・・ったく、誰があんな男と!あいつは幕末から俺が殺すと・・・。」
言いつつイライラが頂点に達した斎藤は、煙草をプカプカ吸いながら心の内で呟いていた。
俺は・・奴が東京にその姿を現してからいつか幕末以来の決着をつける事を心のどこかでずっと欲していた。
だが志々雄真実の件があって俺は抜刀斎が抜刀斎でなくなってしまったことに気づいてしまった。
しかしながらまだ僅かな望みを持っていた、雪代縁の件があるまでは・・・。
抜刀斎には失望・・・、いや、絶望した。
今武尊に言われ、その絶望を俺はようやく認めたのだ。
勝手に土俵を下りたのは奴の方だ。
悪・即・斬・・・。
宿敵の人斬り同士だったからこそ【共有】できた互いの【正義】。
だがもはやこの明治の時代において奴の存在が『悪』とは言えなく、むしろ俺と同じ新時代の守りとなってしまった今では・・・。
・・・俺が待ち望んでいた【人斬り抜刀斎】という男はもうどこにもいない。
幕末、互いの正義を懸けて臨んだ相手は・・・明治の世には存在しない男だったのだ。
けれども、どうも今までの流れからすると斎藤さんは自分が神谷道場へ行くことに対しあまりいい感情を持っているようには思えない、と武尊は感じた。
神谷道場には何か斎藤さんが懸案するような事でもあるのだろうか。
そう思った武尊は疑問を斎藤にぶつけてみた。
「斎藤さん、斎藤さんは私が神谷道場に行くことをあまりいいと思ってないような感じがするんですけど、なぜですか?」
「何故・・だと?」
斎藤は咥えていた煙草を指に挟むと、
「あの【お気楽】で【能天気】で【行き当たりばったり】の【へらへら】とした【緊張感のない奴ら】のどこに良さがあると言うんだ。武尊も行けば分かる。はっきり言っておくが、抜刀斎もそうだがあそこの連中を見ているとイライラする。」
と、一気に捲し立てた。
斎藤が毒舌ではあると知っていながらも、珍しく嫌悪感を思いっきり前面に出す斎藤に武尊は驚いた。
斎藤をここまでそうさせるお弟子さんや神谷道場の人達というのは・・・。
想像力は豊かな方だと自負する武尊にもその姿を想像することは難しかった。
何しろ抜刀斎という人は伝説の人斬りであの師匠の弟子なのだ。
それなのに、こんなに身も蓋もない言われ方をするなんて・・・一体どんな人物??
流石の武尊もこれには腕を組みながら悩んだ。
「御意見・・・参考にさせていただきます。」
そう言って武尊は考えた。
元々斎藤さんとお弟子さんは新撰組と維新側という立場で敵対していたというのもあるのだろうが、同じく薩摩の維新志士であった川路とはそんなに仲が悪くないように思える。
それは何故なんだろう。
と、武尊が考えてながら歩いていると斎藤が、
「だが俺が思うに、抜刀斎の話を聞いたところで武尊の納得しそうな話は聞けないと思うが。」
と、斎藤は水を差す様に言った。
「それってどういう意味ですか?」
と武尊が聞くと、
「人斬りは人斬り・・・、幕末に奴と俺が共有した唯一の【正義】も、人斬りをやめ【不殺(ころさず)】などとほざいている奴にはもう何も共有するものなど何もない。・・・武尊。お前は俺側の人間だ。奴とは合わん、考え方も価値観もな・・・。」
「それでも一応行ってきます、取りあえず自分の目で確認しないと。」
「嗚呼・・、行って来い。そして失望してくるんだな。」
「・・・合わないのはわかりますけど、随分な言い方ですね。・・・嫌いなんですか?抜刀斎さんが。」
「奴はもう俺が決着を望んだ抜刀斎ではないからな・・・、興味が湧かんだけだ。」
そう言った斎藤はいっそう眉間に皺を寄せながらも何処か遠くを見ているようだった。
「・・・・・。」
武尊は斎藤のその顔を見て前を向いて歩いた。
隣で斎藤の煙草を吸って吐く、その呼吸が何度も繰り返されるのが聞こえる。
武尊は最後に言った斎藤の言葉・・・そう、その言葉には失望の色が隠されていることを武尊は見抜いた。
まるでずっと連れ添った恋人の心変わりを責めるような、そんな斎藤の気持ちが武尊に伝わった。
「・・・斎藤さん。」
「なんだ。」
「斎藤さんは抜刀斎さんが好きだったんですね。」
もちろんこれは武尊がわざと大げさに言ったものだったが武尊にとっては手痛い一言となった。
ピタ。
斎藤の足取りが止まった。
「ん?」
武尊が止まった斎藤を見上げると斎藤はこめかみに青筋が立てて、
「阿呆!気色の悪い事を言うな!どこをどう考えたらそうなるんだ。!」
と、武尊の頭にげんこつを落とした。
「ぐわっ!」
久しぶりに受けた斎藤の鉄拳に武尊は叫んだ。
斎藤はそんな武尊を横目に、
「自業自得だ。・・・ったく、誰があんな男と!あいつは幕末から俺が殺すと・・・。」
言いつつイライラが頂点に達した斎藤は、煙草をプカプカ吸いながら心の内で呟いていた。
俺は・・奴が東京にその姿を現してからいつか幕末以来の決着をつける事を心のどこかでずっと欲していた。
だが志々雄真実の件があって俺は抜刀斎が抜刀斎でなくなってしまったことに気づいてしまった。
しかしながらまだ僅かな望みを持っていた、雪代縁の件があるまでは・・・。
抜刀斎には失望・・・、いや、絶望した。
今武尊に言われ、その絶望を俺はようやく認めたのだ。
勝手に土俵を下りたのは奴の方だ。
悪・即・斬・・・。
宿敵の人斬り同士だったからこそ【共有】できた互いの【正義】。
だがもはやこの明治の時代において奴の存在が『悪』とは言えなく、むしろ俺と同じ新時代の守りとなってしまった今では・・・。
・・・俺が待ち望んでいた【人斬り抜刀斎】という男はもうどこにもいない。
幕末、互いの正義を懸けて臨んだ相手は・・・明治の世には存在しない男だったのだ。