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97.煙草の匂いの上着 (斎藤・夢主)
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ここは田舎道。
診療所の周りは田畑も多く、人通りはまばらだ。
武尊は斎藤の上着に袖を通していたけれどボタンは全部とめないでいた。
全部とめるとそれこそサイズの合わない制服を着ていて不恰好じゃないかと思ったからだ。
長すぎて指の先まで余裕で隠れる袖口を折り返しながら武尊は煙草の匂いのしみついた上着に小さな幸せを感じていた。
黒シャツに帯刀姿はちょっとラフすぎる警官に見えてしまう、と斜め前を歩く上司に申し訳なくも思いながらしばらく歩いていると、
「・・・それにしてもだ。」
と、斎藤は少し不愉快そうに切り出した。
「四乃森をいつの間に名前で呼ぶようになったんだ。」
と斎藤は言った。
武尊は、斎藤が蒼紫のことを名前で呼ぶことが気に入らないんだ、とすぐに分かった。
「私・・・怪我の後、初めて意識が戻った時、このまま死んじゃうんじゃないかと思って・・・。」
と、武尊はその経緯を振り返りながら斎藤に説明する。
「四乃森さんには今までいろいろ助けてもらってて・・・何も恩返ししないで死ぬのは申し訳ないと思ったから、『今の私に出来る事でよかったら何か恩返ししたい。』、って言ったら『名前を呼んでくれ。』ってお願いされたの。」
武尊は道端の石をコツっと蹴って斎藤をちらっと見た。
斎藤はいつもの横目で煙草を吸いながら黙って武尊を見た。
武尊はそんな斎藤を見てため息をついた。
「一回呼べばいいかなって思っていたらその後もずっと呼ぶことを強要されて慣れてしまったというか・・・。」
「しっかり四乃森にしてやられたというわけだな。」
「・・・そうなるんですかね、やっぱり。」
「当たり前だ、まったく。」
「でも、さすがの私も恩だけたくさん受けといて受け逃げするのは心苦しいですよ。受けた恩は返さないと。」
「まったく油断も隙もないな。他に何もされなかったか。」
武尊は、ん~、と入院生活を振り返りって、
「何もされてませんよ、斎藤さん、いつからそんなに心配性になったんですか・・・いくら四乃森さんだって死にそうな怪我人におふざけなんかしないですよ。」
と言うが、武尊から直接そう聞いても斎藤は、
「そうか?・・・あいつは油断ならん男だからな。(武尊が寝てる間に何かしたかもしれん。)」
とまだ半信半疑だ。
実際、斎藤の御察し通り、武尊は寝ている間に蒼紫に唇を奪われていたのだが武尊はそれを知らない。
むううう、と斎藤は蒼紫の性格を考えると本当に何もしなかったのか同じ男として疑いは晴れない・・・。
と悩みつつふと横を見ると武尊がいない。
斎藤が振り返ると武尊は青い顔をして道にうずくまっていた。
斎藤は武尊の所へ戻り、
「大丈夫か。」
「すみません・・・、息切れが・・・少し休憩していいですか・・・。」
まだ診療所から幾分もたってない。
「退院するのは早かったんじゃないのか。」
「だって・・・寝てるだけってつまらないんだもの・・・。」
「阿呆、武尊の特殊な治り方は俺にはどの程度治っているか分からん・・・ろくに歩けもしないのに退院するな。」
とは言ったものの斎藤とて診療所へ蒼紫と武尊を二人っきりで置いておくのは気が気でなく、武尊の退院は斎藤にとっても安堵するべき事だったので強くは言えない。
それに強く言ったところで今の武尊にどれほど自分の説教が聞こえているかわからない、この今の武尊の体調では。
斎藤は武尊を抱えて道端に移動させると休息を取った。
診療所の周りは田畑も多く、人通りはまばらだ。
武尊は斎藤の上着に袖を通していたけれどボタンは全部とめないでいた。
全部とめるとそれこそサイズの合わない制服を着ていて不恰好じゃないかと思ったからだ。
長すぎて指の先まで余裕で隠れる袖口を折り返しながら武尊は煙草の匂いのしみついた上着に小さな幸せを感じていた。
黒シャツに帯刀姿はちょっとラフすぎる警官に見えてしまう、と斜め前を歩く上司に申し訳なくも思いながらしばらく歩いていると、
「・・・それにしてもだ。」
と、斎藤は少し不愉快そうに切り出した。
「四乃森をいつの間に名前で呼ぶようになったんだ。」
と斎藤は言った。
武尊は、斎藤が蒼紫のことを名前で呼ぶことが気に入らないんだ、とすぐに分かった。
「私・・・怪我の後、初めて意識が戻った時、このまま死んじゃうんじゃないかと思って・・・。」
と、武尊はその経緯を振り返りながら斎藤に説明する。
「四乃森さんには今までいろいろ助けてもらってて・・・何も恩返ししないで死ぬのは申し訳ないと思ったから、『今の私に出来る事でよかったら何か恩返ししたい。』、って言ったら『名前を呼んでくれ。』ってお願いされたの。」
武尊は道端の石をコツっと蹴って斎藤をちらっと見た。
斎藤はいつもの横目で煙草を吸いながら黙って武尊を見た。
武尊はそんな斎藤を見てため息をついた。
「一回呼べばいいかなって思っていたらその後もずっと呼ぶことを強要されて慣れてしまったというか・・・。」
「しっかり四乃森にしてやられたというわけだな。」
「・・・そうなるんですかね、やっぱり。」
「当たり前だ、まったく。」
「でも、さすがの私も恩だけたくさん受けといて受け逃げするのは心苦しいですよ。受けた恩は返さないと。」
「まったく油断も隙もないな。他に何もされなかったか。」
武尊は、ん~、と入院生活を振り返りって、
「何もされてませんよ、斎藤さん、いつからそんなに心配性になったんですか・・・いくら四乃森さんだって死にそうな怪我人におふざけなんかしないですよ。」
と言うが、武尊から直接そう聞いても斎藤は、
「そうか?・・・あいつは油断ならん男だからな。(武尊が寝てる間に何かしたかもしれん。)」
とまだ半信半疑だ。
実際、斎藤の御察し通り、武尊は寝ている間に蒼紫に唇を奪われていたのだが武尊はそれを知らない。
むううう、と斎藤は蒼紫の性格を考えると本当に何もしなかったのか同じ男として疑いは晴れない・・・。
と悩みつつふと横を見ると武尊がいない。
斎藤が振り返ると武尊は青い顔をして道にうずくまっていた。
斎藤は武尊の所へ戻り、
「大丈夫か。」
「すみません・・・、息切れが・・・少し休憩していいですか・・・。」
まだ診療所から幾分もたってない。
「退院するのは早かったんじゃないのか。」
「だって・・・寝てるだけってつまらないんだもの・・・。」
「阿呆、武尊の特殊な治り方は俺にはどの程度治っているか分からん・・・ろくに歩けもしないのに退院するな。」
とは言ったものの斎藤とて診療所へ蒼紫と武尊を二人っきりで置いておくのは気が気でなく、武尊の退院は斎藤にとっても安堵するべき事だったので強くは言えない。
それに強く言ったところで今の武尊にどれほど自分の説教が聞こえているかわからない、この今の武尊の体調では。
斎藤は武尊を抱えて道端に移動させると休息を取った。