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96.つむじ風 (斎藤・蒼紫・夢主・恵)
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カチャ。
扉の音に沈黙が破られ、恵が病室のドアを開けると男二人が降り向いて恵を見た。
男二人に凄まれてドアノブを握った手が一瞬ビクッとなり、恵は思わず半歩下がった。
(また・・・、一体何なのよ・・・。)
と恵は動揺する心を隠す様に、
「薬出来たわよ。」
と、気を取り直し髪を片手でかきあげながら武尊の方に歩いて行った。
「ありがとうございます。」
武尊が恵にお礼を言って出した手の中に置かれたのはハマグリの貝殻に入った軟膏。
思わずその場で開いて、
「へ~・・・。」
と感心する武尊に恵は再度使用法を伝えた。
「朝と夜に忘れずに塗るのよ。そして明後日に一度診察に来ること、いい?」
「だ、そうです、斎藤さん。よろしくお願いします。」
恵の念押しに武尊はその返事を斎藤に振った。
「・・・仕方ないな。」
斎藤はそう言うとポケットから煙草を取り出し一本指に挟み、
「もう何もなければこのまま連れて帰るぞ。」
と恵に言った。
武尊は斎藤の言葉を聞いて慌ててベッドから降りて靴を持った。
「それで、いくらだ。」
と、斎藤は恵に診察・入院代を尋ねた。
「いいわよ、もう貰っているから。」
と恵は蒼紫をちらりと見た。
「え!(いつの間に!)」
と、今度は武尊が蒼紫を見た。
蒼紫は武尊が口を開く前に、
「鰻より安い、気にするな。・・・それにこの件については武尊は払う必要はない。」
と言い病室の扉の方へ歩いた。
そしてドアノブに手をかけ武尊の方をゆっくり振り向くと、
「・・・道場訪問の件、日付が決まれば明後日でも高荷恵に伝言を頼めばいい。緋村が戻る前にもう一度ぐらいは道場に明神弥彦の診察に来るだろうから丁度いいだろう。」
と言うと扉を開けて出て行った。
「ちょっと!何で私があんたに伝言何かしなくちゃいけないのよ・・・。」
と、恵が扉に向かって言うが、蒼紫はもうそこにはいなかった。
「まったく・・・私はパシリじゃないんだから。」
と腕を組みプリプリする恵に武尊は、
「すみません・・・もし面倒でなければお願いしてもいいですか・・・。」
と頼みにくいと思いつつ、武尊は道場が何処にあるか知らないので頼まれてください!お願い!と祈る様に恵を見た。
「しょうがないわねぇ・・・。警視庁から道場までは少し遠いし、本当はまだ退院するにはちょっと早いぐらいな人を疲れさせるわけにはいかないわよね。」
と言って、
「いいわよ。頼まれてあげるわ。」
と、ため息をつきながら答えた。
そして、
「じゃあ、そのまま退院するなら何か上に羽織るものを・・・・。」
と、恵が何か上着になるような物を取ってこようとすると、斎藤が 『いい。』 と恵を制し、
「武尊、これを着ろ。」
と言って、自分の上着を脱いで武尊の肩に掛けた。
「斎藤さん・・・。」
武尊が斎藤を見上げると、斎藤は黙って武尊の頭をくしゃっと一回撫でると、
「世話になった。」
と言って部屋を後にした。
信じられない斎藤の言葉と行動に恵は固まった。
その固まった恵に武尊も、
「いろいろとありがとうございました。」
と、頭を下げ、パパパッとベッドを整えると斎藤を追って部屋を出ていった。
恵はただ一人恵がポツンと部屋に残り、動くことを忘れていた。
自分が部屋に入ってから話が急に進んであっという間に誰もいなくなった部屋。
つむじ風のように来て、つむじ風のように出て行った武尊という女性。
恵は先に出て行った蒼紫と最後の斎藤と武尊のやり取りを思い出して・・・・ニッと笑うと、ポンポンっとキツネの耳としっぽを出したのであった。
扉の音に沈黙が破られ、恵が病室のドアを開けると男二人が降り向いて恵を見た。
男二人に凄まれてドアノブを握った手が一瞬ビクッとなり、恵は思わず半歩下がった。
(また・・・、一体何なのよ・・・。)
と恵は動揺する心を隠す様に、
「薬出来たわよ。」
と、気を取り直し髪を片手でかきあげながら武尊の方に歩いて行った。
「ありがとうございます。」
武尊が恵にお礼を言って出した手の中に置かれたのはハマグリの貝殻に入った軟膏。
思わずその場で開いて、
「へ~・・・。」
と感心する武尊に恵は再度使用法を伝えた。
「朝と夜に忘れずに塗るのよ。そして明後日に一度診察に来ること、いい?」
「だ、そうです、斎藤さん。よろしくお願いします。」
恵の念押しに武尊はその返事を斎藤に振った。
「・・・仕方ないな。」
斎藤はそう言うとポケットから煙草を取り出し一本指に挟み、
「もう何もなければこのまま連れて帰るぞ。」
と恵に言った。
武尊は斎藤の言葉を聞いて慌ててベッドから降りて靴を持った。
「それで、いくらだ。」
と、斎藤は恵に診察・入院代を尋ねた。
「いいわよ、もう貰っているから。」
と恵は蒼紫をちらりと見た。
「え!(いつの間に!)」
と、今度は武尊が蒼紫を見た。
蒼紫は武尊が口を開く前に、
「鰻より安い、気にするな。・・・それにこの件については武尊は払う必要はない。」
と言い病室の扉の方へ歩いた。
そしてドアノブに手をかけ武尊の方をゆっくり振り向くと、
「・・・道場訪問の件、日付が決まれば明後日でも高荷恵に伝言を頼めばいい。緋村が戻る前にもう一度ぐらいは道場に明神弥彦の診察に来るだろうから丁度いいだろう。」
と言うと扉を開けて出て行った。
「ちょっと!何で私があんたに伝言何かしなくちゃいけないのよ・・・。」
と、恵が扉に向かって言うが、蒼紫はもうそこにはいなかった。
「まったく・・・私はパシリじゃないんだから。」
と腕を組みプリプリする恵に武尊は、
「すみません・・・もし面倒でなければお願いしてもいいですか・・・。」
と頼みにくいと思いつつ、武尊は道場が何処にあるか知らないので頼まれてください!お願い!と祈る様に恵を見た。
「しょうがないわねぇ・・・。警視庁から道場までは少し遠いし、本当はまだ退院するにはちょっと早いぐらいな人を疲れさせるわけにはいかないわよね。」
と言って、
「いいわよ。頼まれてあげるわ。」
と、ため息をつきながら答えた。
そして、
「じゃあ、そのまま退院するなら何か上に羽織るものを・・・・。」
と、恵が何か上着になるような物を取ってこようとすると、斎藤が 『いい。』 と恵を制し、
「武尊、これを着ろ。」
と言って、自分の上着を脱いで武尊の肩に掛けた。
「斎藤さん・・・。」
武尊が斎藤を見上げると、斎藤は黙って武尊の頭をくしゃっと一回撫でると、
「世話になった。」
と言って部屋を後にした。
信じられない斎藤の言葉と行動に恵は固まった。
その固まった恵に武尊も、
「いろいろとありがとうございました。」
と、頭を下げ、パパパッとベッドを整えると斎藤を追って部屋を出ていった。
恵はただ一人恵がポツンと部屋に残り、動くことを忘れていた。
自分が部屋に入ってから話が急に進んであっという間に誰もいなくなった部屋。
つむじ風のように来て、つむじ風のように出て行った武尊という女性。
恵は先に出て行った蒼紫と最後の斎藤と武尊のやり取りを思い出して・・・・ニッと笑うと、ポンポンっとキツネの耳としっぽを出したのであった。