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94.張のぼやき (斎藤・張・川路・蒼紫・恵・夢主)
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斎藤は張が出て行った後、先程の書類にさっと目を通すと、時計を見た。
「八時過ぎか・・・少し早いが出かけるか。」
と、外へ出た。
斎藤は行きたい所があった。
それは日本橋近くの裏通りにある一軒の薬屋。
表は漢方薬を扱うごく普通の店だが、時々仕事で使う薬も依頼したりする裏の顔もある薬屋だ。
斎藤がまだ閉まっている店の戸と叩くと、すぐに中から主人が出てきた。
「これはこれは藤田様、いったいこんな早くからどのような御用で・・・。」
と、店の主人は少し驚きながら斎藤の顔を見た。
が、斎藤が来るのは裏の仕事の時だけ。
それを分かっている主人は黙って斎藤を店の奥へ案内した。
「で、今回は何を御所望ですか。」
「これと同じ物は作れるか?それとは別に取り急ぎ同じ臭いで見かけが同じの物が必要だ。」
と、斎藤は武尊の薬包を取り出し店の主人に小皿を用意させると、その中に薬包から少量さらさらと入れた。
「これだけですか!」
サンプルの少なさに主人は驚いた。
「生憎こっちもある程度の量が必要なんだ。一回分の適正な効く量がわからんのでな。」
「まぁ・・、最大の努力はしてみますが・・・。」
「それからもう一つ。」
「へぇ、なんでしょう。」
「この薬の事は極秘事項だ。万が一漏れた時は命の保証は出来んぞ。」
「心得ております。」
明日また来ると主人に告げると斎藤は店を出てた。
ポケットの中の薬包が入った武尊の血がついた小袋を指でいじりながらこれをどうするか考えていた。
「まあ、思案は歩きながらでも出来る・・・とりあえず、見舞いだな。」
***************
武尊は朝食後、恵に化膿止めの薬を塗ってもらった。(もちろん蒼紫は恵によって廊下へ追い出されたが。)
包帯の取り換えが終わると蒼紫はようやく病室に入れてもらい、壁にもたれて女二人の話を聞いていた。
「恵さん、傷の方はどうでしたか?大分いいと思うんですけど・・・。それから御飯食べられるようになったら退院していいんでしたよね。」
と、恵の顔色を伺いながら控えめに確認した。
恵は片手を頬に当てながら、
「そうねぇ・・今日はちゃんと歩いてお小水にも行けてるから・・・日常生活には問題ないと思うんだけど・・・、でも・・まだ元通りってわけじゃないんだから無理はしなくていいのよ。」
「寝てるだけだとつまんないんで。問題なければ退院します。・・・・やったぁ-!」
と、武尊は思わずガッポーズをした。
「ん・・・まぁ。武尊さんって、結構やんちゃなのね。」
「ええ、私はやんちゃですよ。」
はははと嬉しそうに笑う武尊のはしゃぎぶりに恵はちょっと意外だと驚きながら、
「じゃあ・・・・明日・・いえ明後日、二日後、もう一度傷を見せにいらっしゃい。今からそれまでの間の塗り薬を準備するから。とりあえず朝と夜、一日二回塗る事、いいわね。」
「ありがとうございます、恵さん。」
武尊がお礼を言うと、
「じゃあ、もうしばらく待っててね。ああ、それから先に制服を持ってくるわ。」
「ああ・・・そういえば制服・・・。」
・・パタム。
武尊がそう呟いている間に恵は病室を出てすぐに制服を上下と靴を持って来た。
そしてそれを武尊に渡す時に、
「そこの人が御洗濯してくれたから、お礼を言っときなさいね。」
「え!」
と武尊が言っている間に、恵は薬を準備しに再び出て行った。
きれいにたたまれた制服を手に、武尊は蒼紫と制服を交互に見た。
「蒼紫が洗ってくれたの?あの血だらけの服を?」
「ああ・・・別に自分のを洗ったついでだ、気にするな。」
蒼紫がそう言った瞬間、武尊は蒼紫の着物が高そうな着物だった事を思い出した。
料亭の若旦那が装う着物=【高級品】>>>弁償・・・・!!
そんなことが武尊の頭の中をよぎり顔がサ-っと青くなった。
今の武尊には弁償能力はゼロだ。
「すみません!お着物!高そうなのに!」
「いや・・・・・武尊を傷つけたのは俺の方だ。謝るべきなのは俺の方だ。・・・着物の事はいい、血は落ちたことだし問題はない。それより・・・・・、武尊、上着を広げてみろ。」
「はい・・・。」
なんだろう?と思いつつ蒼紫の言う通り武尊が制服の上着をぱっと広げると、
「うわっ!」
と武尊は思わす驚きの声をあげた。
制服の前のボタンははじきとんでいてなかったため前は閉じられていなかった。
蒼紫の方を向いて肩口を持って制服を広げると、
武尊の方から蒼紫が見える。
つまり、背中の布の向こうが見えるということだ。
小さな穴も二つあるが、二本の大きな切れ目が制服をぱっくり割っている。
「うわ・・・・ぉ・・・・。」
思ったより酷い事になっていた自分の上着を見て武尊も言葉が出ない。
蒼紫も困ったような顔をして武尊を見ていた。
「これは・・・・かなりのものですね。」
「ああ・・・、背中の方はかけつぎをしようかとも思ったのだが、生憎ここには同じ色の糸もないうえ、ボタンのつけ口がボロボロだ。可能なら新しいのをもらったほうがいい。」
「そうです・・・ね・・・、は・・はは・・・。」
蒼紫の言うことはもっともだと思いつつ、よくこんな状態で生きていたと、その時の自分を想像すると、武尊は苦笑いをするしかなかった。
「八時過ぎか・・・少し早いが出かけるか。」
と、外へ出た。
斎藤は行きたい所があった。
それは日本橋近くの裏通りにある一軒の薬屋。
表は漢方薬を扱うごく普通の店だが、時々仕事で使う薬も依頼したりする裏の顔もある薬屋だ。
斎藤がまだ閉まっている店の戸と叩くと、すぐに中から主人が出てきた。
「これはこれは藤田様、いったいこんな早くからどのような御用で・・・。」
と、店の主人は少し驚きながら斎藤の顔を見た。
が、斎藤が来るのは裏の仕事の時だけ。
それを分かっている主人は黙って斎藤を店の奥へ案内した。
「で、今回は何を御所望ですか。」
「これと同じ物は作れるか?それとは別に取り急ぎ同じ臭いで見かけが同じの物が必要だ。」
と、斎藤は武尊の薬包を取り出し店の主人に小皿を用意させると、その中に薬包から少量さらさらと入れた。
「これだけですか!」
サンプルの少なさに主人は驚いた。
「生憎こっちもある程度の量が必要なんだ。一回分の適正な効く量がわからんのでな。」
「まぁ・・、最大の努力はしてみますが・・・。」
「それからもう一つ。」
「へぇ、なんでしょう。」
「この薬の事は極秘事項だ。万が一漏れた時は命の保証は出来んぞ。」
「心得ております。」
明日また来ると主人に告げると斎藤は店を出てた。
ポケットの中の薬包が入った武尊の血がついた小袋を指でいじりながらこれをどうするか考えていた。
「まあ、思案は歩きながらでも出来る・・・とりあえず、見舞いだな。」
***************
武尊は朝食後、恵に化膿止めの薬を塗ってもらった。(もちろん蒼紫は恵によって廊下へ追い出されたが。)
包帯の取り換えが終わると蒼紫はようやく病室に入れてもらい、壁にもたれて女二人の話を聞いていた。
「恵さん、傷の方はどうでしたか?大分いいと思うんですけど・・・。それから御飯食べられるようになったら退院していいんでしたよね。」
と、恵の顔色を伺いながら控えめに確認した。
恵は片手を頬に当てながら、
「そうねぇ・・今日はちゃんと歩いてお小水にも行けてるから・・・日常生活には問題ないと思うんだけど・・・、でも・・まだ元通りってわけじゃないんだから無理はしなくていいのよ。」
「寝てるだけだとつまんないんで。問題なければ退院します。・・・・やったぁ-!」
と、武尊は思わずガッポーズをした。
「ん・・・まぁ。武尊さんって、結構やんちゃなのね。」
「ええ、私はやんちゃですよ。」
はははと嬉しそうに笑う武尊のはしゃぎぶりに恵はちょっと意外だと驚きながら、
「じゃあ・・・・明日・・いえ明後日、二日後、もう一度傷を見せにいらっしゃい。今からそれまでの間の塗り薬を準備するから。とりあえず朝と夜、一日二回塗る事、いいわね。」
「ありがとうございます、恵さん。」
武尊がお礼を言うと、
「じゃあ、もうしばらく待っててね。ああ、それから先に制服を持ってくるわ。」
「ああ・・・そういえば制服・・・。」
・・パタム。
武尊がそう呟いている間に恵は病室を出てすぐに制服を上下と靴を持って来た。
そしてそれを武尊に渡す時に、
「そこの人が御洗濯してくれたから、お礼を言っときなさいね。」
「え!」
と武尊が言っている間に、恵は薬を準備しに再び出て行った。
きれいにたたまれた制服を手に、武尊は蒼紫と制服を交互に見た。
「蒼紫が洗ってくれたの?あの血だらけの服を?」
「ああ・・・別に自分のを洗ったついでだ、気にするな。」
蒼紫がそう言った瞬間、武尊は蒼紫の着物が高そうな着物だった事を思い出した。
料亭の若旦那が装う着物=【高級品】>>>弁償・・・・!!
そんなことが武尊の頭の中をよぎり顔がサ-っと青くなった。
今の武尊には弁償能力はゼロだ。
「すみません!お着物!高そうなのに!」
「いや・・・・・武尊を傷つけたのは俺の方だ。謝るべきなのは俺の方だ。・・・着物の事はいい、血は落ちたことだし問題はない。それより・・・・・、武尊、上着を広げてみろ。」
「はい・・・。」
なんだろう?と思いつつ蒼紫の言う通り武尊が制服の上着をぱっと広げると、
「うわっ!」
と武尊は思わす驚きの声をあげた。
制服の前のボタンははじきとんでいてなかったため前は閉じられていなかった。
蒼紫の方を向いて肩口を持って制服を広げると、
武尊の方から蒼紫が見える。
つまり、背中の布の向こうが見えるということだ。
小さな穴も二つあるが、二本の大きな切れ目が制服をぱっくり割っている。
「うわ・・・・ぉ・・・・。」
思ったより酷い事になっていた自分の上着を見て武尊も言葉が出ない。
蒼紫も困ったような顔をして武尊を見ていた。
「これは・・・・かなりのものですね。」
「ああ・・・、背中の方はかけつぎをしようかとも思ったのだが、生憎ここには同じ色の糸もないうえ、ボタンのつけ口がボロボロだ。可能なら新しいのをもらったほうがいい。」
「そうです・・・ね・・・、は・・はは・・・。」
蒼紫の言うことはもっともだと思いつつ、よくこんな状態で生きていたと、その時の自分を想像すると、武尊は苦笑いをするしかなかった。