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94.張のぼやき (斎藤・張・川路・蒼紫・恵・夢主)
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張は昨晩から警視庁の資料室に泊まっていた。
何事も報告は最速でないと斎藤からたっぷりの嫌味がくる。
かと言って今回の標的であった工部省の平田を目の前で毒殺されたとあっては・・・。
どっちにしろ嫌味は避けられへん・・・と、そんな斎藤の顔を想像しウンザリしながらソファ-に深くもたれかかっていた。
そんな時、カチャ、と資料室の扉が開いた。
斎藤は出勤して自分の部屋へ行った後、昨日資料室に置いたままにしてあった書類を取りに資料室へ行ったのだった。
「・・・・・・。」
斎藤は朝から思ってもみない顔が目に入り、張の前を素通りするとつかつかと窓に向かい、ぷは~っと煙草の煙を吐いた。
妙な沈黙が数秒あり、その後張が、
「なんやねん!わざとらしく無視しよってからに、折角わいが朝早ようから待っとったちゅうのに!」
と、斎藤にどついた。
「・・・えらく息巻くからにはいい話なんだろうな。」
じろっと斎藤の眼が動く。
「それがやねん・・・・・・。」
己の失態をこの雰囲気の中言うのは非常に言いにくい、が言うしかないと斎藤の冷たい視線が張を突き刺す中、張は勇気を出した。
「すんまへん旦那、・・・二人とも殺られおった。」
「・・・・ふぅ。」
斎藤は張の言葉にトゲトゲした視線を解きため息をつくと、
「順を追って話せ。 出来るだけ詳しくだ。 今の話ではまったく分からん。」
と、言い斎藤は事の始終を張から聞きだした。
工部省の平田は甥を料亭に呼び出し密輸事件の生き証人であるその甥を口封じの為に始末をしようとしたところ、自分も毒殺され、その直後にその料亭に火の手が上がったという事件。
「仕方がない、相手の方がお前より一枚上手だっただけだ。」
と、斎藤は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「だがこれで今回の武器密輸を計画した奴らが大がかりな組織を持っているという事がわかった。そして長年の腹心であろうと足がつきそうなら容赦なく切り捨てるという奴らだということもな。」
「そやろ?これもわいがあの場におったからわかった事やねん。」
「阿呆、目の前で密輸の証人と重要参考人を殺されてえらそうな事を言うな。」
ぐさっ。
と、張が一番気にしていることを斎藤に指摘され、張は固まった。
「・・・それにしても平田の最後の言葉が『どうして私を伊藤卿・・。』か。伊藤卿が一枚噛んでいるというのか・・・・。」
斎藤は新たに煙草を取り出すと火を点けて思案しながら長く息を吐いた。
「ありえへんやろ、伊藤卿は今新政府の最高の役職についてんねん。あないに武器なんか密輸せぇへんでも軍隊をいくらでも動かせるんちゃうか。」
「その密輸した武器で今回川路が狙られた事を忘れるな。何かが裏にあるはずだ。」
「そ・・、そうやったな。武尊が最初に感づいたんはそれやったな。」
「嗚呼・・・。」
「で、武尊はどないやった。だいぶ良ぉなったんか。」
「あ、嗚呼・・。」
急に武尊の話になって焦る斎藤。
昨晩帰って時尾に、日中変な奴(張のこと)が来なかったかと聞いてみたが来ていないと言うことで一安心していた斎藤だったが、今日、この後に万が一家に寄られたら・・・・非常に・・・困る。
そんな斎藤が張に言う事はたった一つ。
「今度は内務省の伊藤の周辺を探れ。」
「んな-!そりゃなんでも人使い荒すぎでっせ-、旦那~!」
「つべこべ言うな。何度も言うが今回重要参考人を目の前で始末されたのはどこのどいつだ。十本刀の実力とはその程度か。」
「~~~~~っ!」
と、二人が話のやり取りをしていると、資料室のドアがバンと開いた。
「斎藤!工部省の役人が昨日の火事に巻き込まれて亡くなった!」
血相を変えてやって来た川路に、
「・・・・工部省時代の伊藤卿の右腕と言われた平田のことですか?」
「何故知っておる!」
「丁度そいつの事を調べていた矢先の事ですから。」
と、斎藤がさらっと答えた。
「な、な・・・、どういうことだ斎藤!」
「先回出した報告書にも書きましたが密輸現場で拘留した海軍軍人はその平田の甥です。で、今回平田がその甥を料亭に誘い出して毒殺しようとしたところ自分も毒殺されてしまったようです。」
「毒殺だと!?火事に巻き込まれたんじゃないのか?」
「ええ。張が現場でいましたから間違いありません。」
「何という事だ・・・。事故じゃないのか・・。」
「残念ながら・・・、火事は犯人が毒殺を隠ぺいする為にやったと推測した方がいいでしょう。」
「犯人はわかっているのか。」
「見当はつきますが証拠が何もありません。立証するのは難しいですね。」
「多少手荒なことをしても構わん!何とかしろ。」
「・・・相手が伊藤卿でも・・・ですか?」
「何だと?」
「死ぬ間際に平田は『どうして私を、伊藤卿。』と言ったそうですよ。裏切られた平田の無念の言葉ですかね。」
と、斎藤は煙をふぅーと吐く。
「むぅぅぅ・・・。」
と川路は唸った。
「・・・・分かった。この件はもう少し調査を進めてから次の手を考えよう。」
と、川路は聞きたいことは聞いた、と資料室を出ようとしたところふと何かを思い出したようで、
「そうだ、土岐を呼んでくれ。」
突然言われた武尊の名に斎藤は思いがけず、
「は?」
と、聞き返した。
「土岐だ。先日頼まれごとをされてな、一つ手がかりらしいものが手に入ったんで見てもらおうと思ってな。」
「すみません、あいつは体調が悪くて今日は休んでます。」
「そうか、それはいかんな。まあ、急ぐというほどのものでもない。わしがいる時ならいつでも構わんから来るように言ってくれ。」
「わかりました。」
川路がバタンと出て行ってから、張が、
「警視総監様に頼みごとって何や。何かあったんかいな。」
と言うと、
「夜会の時の礼だそうだ。川路が今回何を持ってきたかは俺も知らん。」
「へぇ・・・。ま、ここにおってもまた嫌味言われるさかい、ほな行ってきまっせ旦那。」
「そうだ、張。」
斎藤はくるりと背中を向けた張を呼び止めた。
「へい?」
「お前、最近妙な視線を感じてないか?」
「わいでっか?いや、特に何も感じませんですけど・・・。」
「ならいい・・・。今朝はその視線は消えていたからな。いや、気にするな、なければ別に構わん。」
「さようでっか、ほな行ってきますわ。」
張は警視庁の門を出て人混みに紛れ込んだ。
ポケットに手を突っ込み青い空を見上げ、その眩しさに、ちっ、と舌うちすると下を向いて考え事にふけりながら歩いた。
(ぼちぼちほんまに限界やな・・・この仕事、ほんまおもろうない・・・。)
何事にも前向きな張だが今日ばかりは溜まる鬱憤の所為か警視庁からトンズラすることばかりが頭に浮かぶ。
そしていろいろ考える。
・・・・こないだは久しぶりに血が騒いだ。
せやけどそんなにおいしい話はそうそうあらへんさかい。
ほんま通常の仕事にわいの心はち-とも、踊どらぁへん。
何よりも上司がおもろうない。
何でこのわいが斎藤ごときにあないにへ-こらせぇへんとあかんねん。
こないにやっとんのに少しぐらい誉めてくれてもええやろうに、あのアホンダラ。
同じぐらいに警察の組織というもんがおもろうないわ。
面倒くさい藩閥争いにはうんざりや。
志々雄様のようにわいを引きつける人はもうおらんのやろうか・・・。
と、思っていると張の脳裏に武尊の顔がポンと浮かんだ。
脳内の武尊が言う。
『うあ-、張ってすごいね!これだけのこと一人で調べたの?』
『そうや、わいに任せたらこないなことは朝飯前や。』
『きゃ~、張ってかっこいい-!』
自分の脳内劇場に少し満足した張はヤル気になった。
「・・・そやな、武尊が誉めてくれるんなら仕事頑張らへんとあかんな。」
と。
何事も報告は最速でないと斎藤からたっぷりの嫌味がくる。
かと言って今回の標的であった工部省の平田を目の前で毒殺されたとあっては・・・。
どっちにしろ嫌味は避けられへん・・・と、そんな斎藤の顔を想像しウンザリしながらソファ-に深くもたれかかっていた。
そんな時、カチャ、と資料室の扉が開いた。
斎藤は出勤して自分の部屋へ行った後、昨日資料室に置いたままにしてあった書類を取りに資料室へ行ったのだった。
「・・・・・・。」
斎藤は朝から思ってもみない顔が目に入り、張の前を素通りするとつかつかと窓に向かい、ぷは~っと煙草の煙を吐いた。
妙な沈黙が数秒あり、その後張が、
「なんやねん!わざとらしく無視しよってからに、折角わいが朝早ようから待っとったちゅうのに!」
と、斎藤にどついた。
「・・・えらく息巻くからにはいい話なんだろうな。」
じろっと斎藤の眼が動く。
「それがやねん・・・・・・。」
己の失態をこの雰囲気の中言うのは非常に言いにくい、が言うしかないと斎藤の冷たい視線が張を突き刺す中、張は勇気を出した。
「すんまへん旦那、・・・二人とも殺られおった。」
「・・・・ふぅ。」
斎藤は張の言葉にトゲトゲした視線を解きため息をつくと、
「順を追って話せ。 出来るだけ詳しくだ。 今の話ではまったく分からん。」
と、言い斎藤は事の始終を張から聞きだした。
工部省の平田は甥を料亭に呼び出し密輸事件の生き証人であるその甥を口封じの為に始末をしようとしたところ、自分も毒殺され、その直後にその料亭に火の手が上がったという事件。
「仕方がない、相手の方がお前より一枚上手だっただけだ。」
と、斎藤は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「だがこれで今回の武器密輸を計画した奴らが大がかりな組織を持っているという事がわかった。そして長年の腹心であろうと足がつきそうなら容赦なく切り捨てるという奴らだということもな。」
「そやろ?これもわいがあの場におったからわかった事やねん。」
「阿呆、目の前で密輸の証人と重要参考人を殺されてえらそうな事を言うな。」
ぐさっ。
と、張が一番気にしていることを斎藤に指摘され、張は固まった。
「・・・それにしても平田の最後の言葉が『どうして私を伊藤卿・・。』か。伊藤卿が一枚噛んでいるというのか・・・・。」
斎藤は新たに煙草を取り出すと火を点けて思案しながら長く息を吐いた。
「ありえへんやろ、伊藤卿は今新政府の最高の役職についてんねん。あないに武器なんか密輸せぇへんでも軍隊をいくらでも動かせるんちゃうか。」
「その密輸した武器で今回川路が狙られた事を忘れるな。何かが裏にあるはずだ。」
「そ・・、そうやったな。武尊が最初に感づいたんはそれやったな。」
「嗚呼・・・。」
「で、武尊はどないやった。だいぶ良ぉなったんか。」
「あ、嗚呼・・。」
急に武尊の話になって焦る斎藤。
昨晩帰って時尾に、日中変な奴(張のこと)が来なかったかと聞いてみたが来ていないと言うことで一安心していた斎藤だったが、今日、この後に万が一家に寄られたら・・・・非常に・・・困る。
そんな斎藤が張に言う事はたった一つ。
「今度は内務省の伊藤の周辺を探れ。」
「んな-!そりゃなんでも人使い荒すぎでっせ-、旦那~!」
「つべこべ言うな。何度も言うが今回重要参考人を目の前で始末されたのはどこのどいつだ。十本刀の実力とはその程度か。」
「~~~~~っ!」
と、二人が話のやり取りをしていると、資料室のドアがバンと開いた。
「斎藤!工部省の役人が昨日の火事に巻き込まれて亡くなった!」
血相を変えてやって来た川路に、
「・・・・工部省時代の伊藤卿の右腕と言われた平田のことですか?」
「何故知っておる!」
「丁度そいつの事を調べていた矢先の事ですから。」
と、斎藤がさらっと答えた。
「な、な・・・、どういうことだ斎藤!」
「先回出した報告書にも書きましたが密輸現場で拘留した海軍軍人はその平田の甥です。で、今回平田がその甥を料亭に誘い出して毒殺しようとしたところ自分も毒殺されてしまったようです。」
「毒殺だと!?火事に巻き込まれたんじゃないのか?」
「ええ。張が現場でいましたから間違いありません。」
「何という事だ・・・。事故じゃないのか・・。」
「残念ながら・・・、火事は犯人が毒殺を隠ぺいする為にやったと推測した方がいいでしょう。」
「犯人はわかっているのか。」
「見当はつきますが証拠が何もありません。立証するのは難しいですね。」
「多少手荒なことをしても構わん!何とかしろ。」
「・・・相手が伊藤卿でも・・・ですか?」
「何だと?」
「死ぬ間際に平田は『どうして私を、伊藤卿。』と言ったそうですよ。裏切られた平田の無念の言葉ですかね。」
と、斎藤は煙をふぅーと吐く。
「むぅぅぅ・・・。」
と川路は唸った。
「・・・・分かった。この件はもう少し調査を進めてから次の手を考えよう。」
と、川路は聞きたいことは聞いた、と資料室を出ようとしたところふと何かを思い出したようで、
「そうだ、土岐を呼んでくれ。」
突然言われた武尊の名に斎藤は思いがけず、
「は?」
と、聞き返した。
「土岐だ。先日頼まれごとをされてな、一つ手がかりらしいものが手に入ったんで見てもらおうと思ってな。」
「すみません、あいつは体調が悪くて今日は休んでます。」
「そうか、それはいかんな。まあ、急ぐというほどのものでもない。わしがいる時ならいつでも構わんから来るように言ってくれ。」
「わかりました。」
川路がバタンと出て行ってから、張が、
「警視総監様に頼みごとって何や。何かあったんかいな。」
と言うと、
「夜会の時の礼だそうだ。川路が今回何を持ってきたかは俺も知らん。」
「へぇ・・・。ま、ここにおってもまた嫌味言われるさかい、ほな行ってきまっせ旦那。」
「そうだ、張。」
斎藤はくるりと背中を向けた張を呼び止めた。
「へい?」
「お前、最近妙な視線を感じてないか?」
「わいでっか?いや、特に何も感じませんですけど・・・。」
「ならいい・・・。今朝はその視線は消えていたからな。いや、気にするな、なければ別に構わん。」
「さようでっか、ほな行ってきますわ。」
張は警視庁の門を出て人混みに紛れ込んだ。
ポケットに手を突っ込み青い空を見上げ、その眩しさに、ちっ、と舌うちすると下を向いて考え事にふけりながら歩いた。
(ぼちぼちほんまに限界やな・・・この仕事、ほんまおもろうない・・・。)
何事にも前向きな張だが今日ばかりは溜まる鬱憤の所為か警視庁からトンズラすることばかりが頭に浮かぶ。
そしていろいろ考える。
・・・・こないだは久しぶりに血が騒いだ。
せやけどそんなにおいしい話はそうそうあらへんさかい。
ほんま通常の仕事にわいの心はち-とも、踊どらぁへん。
何よりも上司がおもろうない。
何でこのわいが斎藤ごときにあないにへ-こらせぇへんとあかんねん。
こないにやっとんのに少しぐらい誉めてくれてもええやろうに、あのアホンダラ。
同じぐらいに警察の組織というもんがおもろうないわ。
面倒くさい藩閥争いにはうんざりや。
志々雄様のようにわいを引きつける人はもうおらんのやろうか・・・。
と、思っていると張の脳裏に武尊の顔がポンと浮かんだ。
脳内の武尊が言う。
『うあ-、張ってすごいね!これだけのこと一人で調べたの?』
『そうや、わいに任せたらこないなことは朝飯前や。』
『きゃ~、張ってかっこいい-!』
自分の脳内劇場に少し満足した張はヤル気になった。
「・・・そやな、武尊が誉めてくれるんなら仕事頑張らへんとあかんな。」
と。