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93.樹海にあるもの (蒼紫・夢主・恵)
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「武尊さ・・」
と、名前を呼びかけた恵だったが武尊の横に座っている蒼紫の姿を見て恵は思わず、
「御頭!」
と言ってしまい、慌てて、
「・・いつ来たのよ。」
と言って咳払いをした。
「夜明け前だ。お前こそどうした、こんな早朝に。」
「さっき大きな揺れを感じて目が覚めたんだけど・・・気のせいかと思ったけどやっぱり気になって来てみたのよ。まさかあなたが来てるとは思わなかったけど。」
「地震?」
「嗚呼、武尊が目を覚ます寸前、一度大きな揺れがあって診療所が大きく揺れた。天井が崩れるかと思ったぐらいにな。」
「へえ・・・・、私は気がつかなかったけど・・・・。(まさかと思うけど・・・あれって夢の中だしね・・・。)」
心に浮かんだ心当たりにまさかと思いつつ、目を覚ました時に蒼紫が自分の上に覆いかぶさるようにしていたのを思い出して、
(若しかして四乃森さんって私をかばってた?)
と思うんあ。
「ま、いいわ。何事もなかったみたいだし。で、武尊さん、どう?今朝は食欲あるかしら。」
「え?ええ・・・・・あります、大丈夫です。」
「じゃあ、しばらく待っててね。そこにいるもう一人の分と二人分持ってくるから。」
「あ、ありがとうございます。すみません・・・・。」
「はいはい、病人は黙って治療に専念すること。じゃあね。」
パタンと扉が閉まって武尊は、
「蒼紫・・・・。」
と呼びかけた。
「何だ。」
「恵さん、蒼紫の事、『御頭』って言った・・・。」
「嗚呼・・。」
「それを知ってるって事は恵さんも御庭番衆?」
「いや、・・・・・先ほど観柳邸から逃げた女の話をしただろう・・・・・それが高荷恵だ。」
「え!?調書にはそんな事・・・。」
「・・・その調書にはいろいろ手が加えられているはずだ。例えば高荷恵の件もそうだ。」
「そんな事出来る訳ない、だって事実を書くのが調書だもん。」
「それを可能にする・・・・出来るのが維新志士の政治の力だ。」
「まさか・・・・、・・・・いや・・・・そうだね。」
武尊は否定したい気持ちはあったが歴史とは勝者の記録。
古くからの日本の歴史はそうであると教えられていたが、まさかこんな形でその事実を目の当たりにするなんて。
幕末もそうだったが戊辰戦争で勝った官軍、特に薩長土肥の勢いは横暴にも似た勢いというのがあったというが、これがそういうことかと目の前の現実に思いつく言葉が見当たらない。
「高荷恵は観柳に脅されて阿片を作っていたからな。事情を知った緋村が手を回したんだろう。」
「維新志士・・・。」
「だが、緋村と言う男はむやみに維新志士だったという権力を振り回す男ではない。むしろそういう事を嫌う男だ。俺とてその頃は観柳の下で高荷を幽閉する側に加担していた。そういう意味では俺は今でもお尋ね者だ。・・・・武尊が捕まえる気なら一度は捕まってやってもいいが・・・・。」
真面目に言う蒼紫に武尊は困って、
「いや・・・・、私にそんな権限はないし・・・・。」
と口ごもる。
「武尊は警官だろう、すでにその時点で十分権限はあると思うが。・・・斎藤が俺の首を待ってるんじゃないのか。」
と真顔で言う蒼紫に武尊は冗談はやめてくれと思いつつも、
「まさか!(いや、まさかとは言えないっ・・・むしろ斎藤さん、本気で首持ってこいって言いそうだもん・・・。)」
と、自分で突っ込みを入れつつ、頭の中で今考えた事を口に出した。
「私は・・・・仮に権限があったとしても、その件で蒼紫を捕まえたりはしない・・・。私が・・・・、私の行動を決めるのは・・・、たぶん理不尽な理由に相手に怒りを覚えた時だけ・・・・。」
「斎藤が俺を捕まえろと言ったら?」
「・・・・捕まえる。・・あ、でも若しそんな状況になった時は絶対蒼紫、捕まってくれなさそうだから大丈夫・・・でしょ?」
「・・・当然だ。」
と言って蒼紫はふっと口角を上げた。
「部下を失って独りになったとしても俺は隠密御庭番衆御頭・・・まだ俺には務めがあるからそう簡単に捕まってはやれん。」
「務め?」
「嗚呼・・・闇に生きる悪党を闇へと還す、江戸三百年続いた最大外法集団御庭番衆だから出来る同じ外法を使う悪党どもの始末だ。それが最後の御頭としての俺の務め。」
「闇に生きる悪党を・・・闇へと還す・・・・。」
武尊は蒼紫の言葉を繰り返しながら震えてくる手を布団の下に隠した。
(十六夜丸は外法そのもの・・・だという事は蒼紫はいつか私を消すのだろうか。)
そんな事が武尊の頭をよぎった。
「・・・蒼紫。」
武尊は蒼紫に伏し目がちに視線を向け、
「外法者の始末が蒼紫の務めだとしたら私もいつか始末される身、でも・・・前にもお願いしたけど、私を始末するなら来年まで待って・・・。」
と言うと蒼紫はぐっと武尊の肩を掴んだ。
「十六夜丸のことでなら武尊がやったのではないということは先日この目で見た。そんな武尊をどうして手に掛ける事が出来る。」
「でもあの薬がある限り私はいつどうなるかわからない!十六夜丸が再び殺人鬼になるなら・・・その時は遠慮なく殺っちゃってくださいね。」
「武尊!」
「もう、そういう殺しは嫌!・・・・・殺るなら自分の意志で殺る・・・罪がちゃんと背負えるように!」
「愚かなことを言うな!薬がなければいいのであろう。その薬は何処にある。」
「・・・・・・・。」
武尊は比古の所に残してきた薬を思い出した。
しかし比古の下にある限り絶対大丈夫、他に持ちだされることはないと武尊は根拠はないが確信する。
(それに、すでも比古さんが処分しているかもしれないし・・・・。)
と、武尊は考えた。
すると、後は・・・・。
「薬は私が持っていた他はわかりません。もともとは兄が持っていたのですが、それをどうやって作ったのかもわからないからそれが怖い・・・・・って、・・あっ!」
「どうした。」
「私が持っていた残りの薬!どこだろう!」
「案ずるな、あれは斎藤が持っているはずだ。あの時武尊に使ったままだとするならな。」
「斎藤さんが・・・・、そうですか、なら大丈夫ですね・・よかった。」
と蒼紫の言葉に武尊は安堵の息を漏らした。
そこへ蒼紫が、
「兄が薬を持っていたとはどういう事だ。」
と聞いてきた。
果たして話すべきか・・・・、話すとややこしい話になるなら説明するのが面倒だと迷ったがかと言ってこのまま黙って見逃してくれなさそうだと半ば諦めて、
「・・・・幕末、兄が私を十六夜丸として使っていたんです。兄の個人的な恨みを晴らすために。だからその薬は兄が作っていたと思うのですが今は行方知れず・・・・死んでいるのか生きているのかもわかりません。」
と、武尊はため息をついた。
「ならば今は斎藤が持っている分だけということだな。」
「たぶん・・・他になければ・・・。」
「私が東京に来たのは師匠にお弟子さんから話を聞けと言われた他に十六夜丸に関する情報を集めるためでもあるんです。」
「なにか手がかりでもあるのか。」
「いいえ、ないです・・・。でもこの顔に見覚えがあるならきっと相手に反応があると思います。それも強い恨みを持って。十六夜丸はいいことはしてなかったみたいですから・・・ははっ。」
「笑い事じゃないぞ武尊!それがどれだけ危険なことか分かっているのか!」
「でも・・・・そうするしかないから。大丈夫、蒼紫みたいに怖い人はそうそういないから何とかなりますよ。」
「・・・俺が怖いのか?」
蒼紫は不安の色を隠す様に武尊に聞いた。
「敵に回せば、ということですよ。大丈夫、蒼紫みたいな人はそうそういない、でしょ?」
と、武尊は一瞬じっと蒼紫を見た後、吹っ切ったように、
「まあ、ゆっくり調べます。急いでったってどうにもならないですから。・・・私は十六夜丸の事がはっきりしないと前へ進めないんです。・・・で、神谷道場へ行く日なんですけど、、、」
と、言った時、恵がお膳を二つ運んできた。
「はい、武尊さん・・・と、はい。」
と言って一つを武尊に、一つを蒼紫に渡した。
「食べ終わった頃また診察に来るから、じゃ、また後で。」
そう言うと恵は忙しい忙しいと言いつつパタパタと出て行った。
武尊がお膳にのっている御椀の蓋をとるとお粥が入っていた。
真ん中には梅干し。
「うわ!梅干しだ!」
と武尊は喜んだ。
「いただきま-す!」
と武尊はさじでお粥をすくってハフハフを口へ入れる。
「おいし・・・・。」
と、武尊は顔をほころばせながら言った。
「でも・・・・。」
と言って武尊は蒼紫を見た。
ン?と蒼紫が顔をあげると武尊は
「蒼紫のお粥の方がおいしいよ・・・。」
と言ってにこっと笑った。
と、名前を呼びかけた恵だったが武尊の横に座っている蒼紫の姿を見て恵は思わず、
「御頭!」
と言ってしまい、慌てて、
「・・いつ来たのよ。」
と言って咳払いをした。
「夜明け前だ。お前こそどうした、こんな早朝に。」
「さっき大きな揺れを感じて目が覚めたんだけど・・・気のせいかと思ったけどやっぱり気になって来てみたのよ。まさかあなたが来てるとは思わなかったけど。」
「地震?」
「嗚呼、武尊が目を覚ます寸前、一度大きな揺れがあって診療所が大きく揺れた。天井が崩れるかと思ったぐらいにな。」
「へえ・・・・、私は気がつかなかったけど・・・・。(まさかと思うけど・・・あれって夢の中だしね・・・。)」
心に浮かんだ心当たりにまさかと思いつつ、目を覚ました時に蒼紫が自分の上に覆いかぶさるようにしていたのを思い出して、
(若しかして四乃森さんって私をかばってた?)
と思うんあ。
「ま、いいわ。何事もなかったみたいだし。で、武尊さん、どう?今朝は食欲あるかしら。」
「え?ええ・・・・・あります、大丈夫です。」
「じゃあ、しばらく待っててね。そこにいるもう一人の分と二人分持ってくるから。」
「あ、ありがとうございます。すみません・・・・。」
「はいはい、病人は黙って治療に専念すること。じゃあね。」
パタンと扉が閉まって武尊は、
「蒼紫・・・・。」
と呼びかけた。
「何だ。」
「恵さん、蒼紫の事、『御頭』って言った・・・。」
「嗚呼・・。」
「それを知ってるって事は恵さんも御庭番衆?」
「いや、・・・・・先ほど観柳邸から逃げた女の話をしただろう・・・・・それが高荷恵だ。」
「え!?調書にはそんな事・・・。」
「・・・その調書にはいろいろ手が加えられているはずだ。例えば高荷恵の件もそうだ。」
「そんな事出来る訳ない、だって事実を書くのが調書だもん。」
「それを可能にする・・・・出来るのが維新志士の政治の力だ。」
「まさか・・・・、・・・・いや・・・・そうだね。」
武尊は否定したい気持ちはあったが歴史とは勝者の記録。
古くからの日本の歴史はそうであると教えられていたが、まさかこんな形でその事実を目の当たりにするなんて。
幕末もそうだったが戊辰戦争で勝った官軍、特に薩長土肥の勢いは横暴にも似た勢いというのがあったというが、これがそういうことかと目の前の現実に思いつく言葉が見当たらない。
「高荷恵は観柳に脅されて阿片を作っていたからな。事情を知った緋村が手を回したんだろう。」
「維新志士・・・。」
「だが、緋村と言う男はむやみに維新志士だったという権力を振り回す男ではない。むしろそういう事を嫌う男だ。俺とてその頃は観柳の下で高荷を幽閉する側に加担していた。そういう意味では俺は今でもお尋ね者だ。・・・・武尊が捕まえる気なら一度は捕まってやってもいいが・・・・。」
真面目に言う蒼紫に武尊は困って、
「いや・・・・、私にそんな権限はないし・・・・。」
と口ごもる。
「武尊は警官だろう、すでにその時点で十分権限はあると思うが。・・・斎藤が俺の首を待ってるんじゃないのか。」
と真顔で言う蒼紫に武尊は冗談はやめてくれと思いつつも、
「まさか!(いや、まさかとは言えないっ・・・むしろ斎藤さん、本気で首持ってこいって言いそうだもん・・・。)」
と、自分で突っ込みを入れつつ、頭の中で今考えた事を口に出した。
「私は・・・・仮に権限があったとしても、その件で蒼紫を捕まえたりはしない・・・。私が・・・・、私の行動を決めるのは・・・、たぶん理不尽な理由に相手に怒りを覚えた時だけ・・・・。」
「斎藤が俺を捕まえろと言ったら?」
「・・・・捕まえる。・・あ、でも若しそんな状況になった時は絶対蒼紫、捕まってくれなさそうだから大丈夫・・・でしょ?」
「・・・当然だ。」
と言って蒼紫はふっと口角を上げた。
「部下を失って独りになったとしても俺は隠密御庭番衆御頭・・・まだ俺には務めがあるからそう簡単に捕まってはやれん。」
「務め?」
「嗚呼・・・闇に生きる悪党を闇へと還す、江戸三百年続いた最大外法集団御庭番衆だから出来る同じ外法を使う悪党どもの始末だ。それが最後の御頭としての俺の務め。」
「闇に生きる悪党を・・・闇へと還す・・・・。」
武尊は蒼紫の言葉を繰り返しながら震えてくる手を布団の下に隠した。
(十六夜丸は外法そのもの・・・だという事は蒼紫はいつか私を消すのだろうか。)
そんな事が武尊の頭をよぎった。
「・・・蒼紫。」
武尊は蒼紫に伏し目がちに視線を向け、
「外法者の始末が蒼紫の務めだとしたら私もいつか始末される身、でも・・・前にもお願いしたけど、私を始末するなら来年まで待って・・・。」
と言うと蒼紫はぐっと武尊の肩を掴んだ。
「十六夜丸のことでなら武尊がやったのではないということは先日この目で見た。そんな武尊をどうして手に掛ける事が出来る。」
「でもあの薬がある限り私はいつどうなるかわからない!十六夜丸が再び殺人鬼になるなら・・・その時は遠慮なく殺っちゃってくださいね。」
「武尊!」
「もう、そういう殺しは嫌!・・・・・殺るなら自分の意志で殺る・・・罪がちゃんと背負えるように!」
「愚かなことを言うな!薬がなければいいのであろう。その薬は何処にある。」
「・・・・・・・。」
武尊は比古の所に残してきた薬を思い出した。
しかし比古の下にある限り絶対大丈夫、他に持ちだされることはないと武尊は根拠はないが確信する。
(それに、すでも比古さんが処分しているかもしれないし・・・・。)
と、武尊は考えた。
すると、後は・・・・。
「薬は私が持っていた他はわかりません。もともとは兄が持っていたのですが、それをどうやって作ったのかもわからないからそれが怖い・・・・・って、・・あっ!」
「どうした。」
「私が持っていた残りの薬!どこだろう!」
「案ずるな、あれは斎藤が持っているはずだ。あの時武尊に使ったままだとするならな。」
「斎藤さんが・・・・、そうですか、なら大丈夫ですね・・よかった。」
と蒼紫の言葉に武尊は安堵の息を漏らした。
そこへ蒼紫が、
「兄が薬を持っていたとはどういう事だ。」
と聞いてきた。
果たして話すべきか・・・・、話すとややこしい話になるなら説明するのが面倒だと迷ったがかと言ってこのまま黙って見逃してくれなさそうだと半ば諦めて、
「・・・・幕末、兄が私を十六夜丸として使っていたんです。兄の個人的な恨みを晴らすために。だからその薬は兄が作っていたと思うのですが今は行方知れず・・・・死んでいるのか生きているのかもわかりません。」
と、武尊はため息をついた。
「ならば今は斎藤が持っている分だけということだな。」
「たぶん・・・他になければ・・・。」
「私が東京に来たのは師匠にお弟子さんから話を聞けと言われた他に十六夜丸に関する情報を集めるためでもあるんです。」
「なにか手がかりでもあるのか。」
「いいえ、ないです・・・。でもこの顔に見覚えがあるならきっと相手に反応があると思います。それも強い恨みを持って。十六夜丸はいいことはしてなかったみたいですから・・・ははっ。」
「笑い事じゃないぞ武尊!それがどれだけ危険なことか分かっているのか!」
「でも・・・・そうするしかないから。大丈夫、蒼紫みたいに怖い人はそうそういないから何とかなりますよ。」
「・・・俺が怖いのか?」
蒼紫は不安の色を隠す様に武尊に聞いた。
「敵に回せば、ということですよ。大丈夫、蒼紫みたいな人はそうそういない、でしょ?」
と、武尊は一瞬じっと蒼紫を見た後、吹っ切ったように、
「まあ、ゆっくり調べます。急いでったってどうにもならないですから。・・・私は十六夜丸の事がはっきりしないと前へ進めないんです。・・・で、神谷道場へ行く日なんですけど、、、」
と、言った時、恵がお膳を二つ運んできた。
「はい、武尊さん・・・と、はい。」
と言って一つを武尊に、一つを蒼紫に渡した。
「食べ終わった頃また診察に来るから、じゃ、また後で。」
そう言うと恵は忙しい忙しいと言いつつパタパタと出て行った。
武尊がお膳にのっている御椀の蓋をとるとお粥が入っていた。
真ん中には梅干し。
「うわ!梅干しだ!」
と武尊は喜んだ。
「いただきま-す!」
と武尊はさじでお粥をすくってハフハフを口へ入れる。
「おいし・・・・。」
と、武尊は顔をほころばせながら言った。
「でも・・・・。」
と言って武尊は蒼紫を見た。
ン?と蒼紫が顔をあげると武尊は
「蒼紫のお粥の方がおいしいよ・・・。」
と言ってにこっと笑った。