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88.操クライシス! (蒼紫・操)
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「蒼紫様!」
もうじき日が落ちようとする頃、蒼紫が神谷道場へ帰ってきた。
操は恵から『しばらく用事で戻れない』という蒼紫からの言付けを聞いていた。
そうは言っても操は蒼紫がいないと本当は不安で仕方がない。
また蒼紫様が戻って来なかったらどうしよう、と。
だから神谷道場の壊れた塀から差し込む夕日を背に愛しい人のシルエットが見えると、縁側でぼ~っとしていた操は即座に立ち上がってその名を呼んだ。
「蒼紫様、もう御用事はいいんですか?」
蒼紫は視界に映るあまりにも破壊された塀や道場をあらためて見て小さくため息をつきながら、
「いや・・・まだだ。」
と言った。
元はと言えば小太刀を研ぎに出た帰りにこの道場の補修の話をしに出かけたのだったはずなのにな、と蒼紫は茜色に染まる塀の残骸を見ながら思った。
「それより明神弥彦の具合はどうだ。」
と、蒼紫は視線を操に戻して聞いた。
「相変わらずよ蒼紫様、弥彦ったら燕ちゃんが御飯を持ってきたときだけガバっと目を覚ますの。そしてがっつくように食べたらその後はバタンキュ-なのよ。まったくどうなってんのか。」
操が蒼紫不在のストレスを発散するように意気込んで話すのだが、蒼紫は、
「そうか・・・。」
と言って、そのまま母屋へ上がった。
蒼紫は弥彦が寝ている部屋の障子を開けると中へ入って弥彦の容体を観察した。
「薬は飲めているのか。」
「燕ちゃんがなんとか食事の時に飲ませているわ。御庭番衆特製の薬湯も弥彦に飲ませた方が早く治るかしら。」
と、操が言うと、
「御庭番衆の薬湯もいいが、高荷恵の調合する薬はなかなか優れている。強い薬を重ねて飲むのは百害あって一利なしだ。」
と蒼紫が言った。
蒼紫も恵の調剤能力は観柳邸にいた頃よりその腕は認めている。
「食事が摂れているならいるようなら問題はないな。」
と蒼紫は立ち上がった。
蒼紫は弥彦の部屋を出ると、以前、弥彦から使っていいと言われている客間に戻った。
操は蒼紫が帰って来たのが嬉しくて、その後ろをついて行った。
蒼紫は京都から持ってきた荷物から刀の手入れ具を出すと小太刀を携行用の袋から出し、手入れを始めた。
土砂降りだった日に泥だらけになったその袋はすぐ洗濯をしたので今ではその痕跡もない。
話す相手がいなくて人恋しかった操も、蒼紫が小太刀を抜いてその手入れをしているときはずっと後ろに下がって蒼紫がするのを見ていた。
蒼紫はその剣の波紋を見ながら、この刀が自分と共に戦ってきた数々の修羅場を思い起こした。
ある時は御庭番衆御頭として、
ある時は仲間に最強の華を添える為に人の道を外れた修羅として、
そして抜刀斎との二度にわたる決闘、
そして今は最後の隠密御庭番衆御頭として、縁の部下や外印、四神の一人との闘いなど・・。
過去から今まで数えきれないほどの闘いの中でこの小太刀と共に戦った。
しかしそのどれもがそれぞれの明確な目的達成の為。
と、蒼紫は回想する。
だが、しかし・・・。
と、蒼紫は微かに眉をひそめた。
研ぎ治したばかりのこの小太刀で・・・・。
俺は・・・・。
・・・・・・・武尊を・・・・。
武尊を・・・・・この小太刀で・・・。
と、蒼紫の脳裏にあの雨の日の惨劇がよぎる。
不可抗力だった。
雷の閃光から視力を取り戻した時はもう、後の祭りだった。
目の前で崩れ落ちた武尊は死の手前だった。
そうさせたのは他でもない。斎藤と俺・・・・・、俺なのだ。
パチン。
蒼紫は片方の手入れを終え抜き身の刀を鞘にしまい、もう片方の手入れを行った。
だが、刀身を見て頭の中によぎるのは先ほどと同じ事。
それでも小太刀をいつものように手入れを終わらせると蒼紫は縁側へ出て座禅を組んだ。
もうじき日が落ちようとする頃、蒼紫が神谷道場へ帰ってきた。
操は恵から『しばらく用事で戻れない』という蒼紫からの言付けを聞いていた。
そうは言っても操は蒼紫がいないと本当は不安で仕方がない。
また蒼紫様が戻って来なかったらどうしよう、と。
だから神谷道場の壊れた塀から差し込む夕日を背に愛しい人のシルエットが見えると、縁側でぼ~っとしていた操は即座に立ち上がってその名を呼んだ。
「蒼紫様、もう御用事はいいんですか?」
蒼紫は視界に映るあまりにも破壊された塀や道場をあらためて見て小さくため息をつきながら、
「いや・・・まだだ。」
と言った。
元はと言えば小太刀を研ぎに出た帰りにこの道場の補修の話をしに出かけたのだったはずなのにな、と蒼紫は茜色に染まる塀の残骸を見ながら思った。
「それより明神弥彦の具合はどうだ。」
と、蒼紫は視線を操に戻して聞いた。
「相変わらずよ蒼紫様、弥彦ったら燕ちゃんが御飯を持ってきたときだけガバっと目を覚ますの。そしてがっつくように食べたらその後はバタンキュ-なのよ。まったくどうなってんのか。」
操が蒼紫不在のストレスを発散するように意気込んで話すのだが、蒼紫は、
「そうか・・・。」
と言って、そのまま母屋へ上がった。
蒼紫は弥彦が寝ている部屋の障子を開けると中へ入って弥彦の容体を観察した。
「薬は飲めているのか。」
「燕ちゃんがなんとか食事の時に飲ませているわ。御庭番衆特製の薬湯も弥彦に飲ませた方が早く治るかしら。」
と、操が言うと、
「御庭番衆の薬湯もいいが、高荷恵の調合する薬はなかなか優れている。強い薬を重ねて飲むのは百害あって一利なしだ。」
と蒼紫が言った。
蒼紫も恵の調剤能力は観柳邸にいた頃よりその腕は認めている。
「食事が摂れているならいるようなら問題はないな。」
と蒼紫は立ち上がった。
蒼紫は弥彦の部屋を出ると、以前、弥彦から使っていいと言われている客間に戻った。
操は蒼紫が帰って来たのが嬉しくて、その後ろをついて行った。
蒼紫は京都から持ってきた荷物から刀の手入れ具を出すと小太刀を携行用の袋から出し、手入れを始めた。
土砂降りだった日に泥だらけになったその袋はすぐ洗濯をしたので今ではその痕跡もない。
話す相手がいなくて人恋しかった操も、蒼紫が小太刀を抜いてその手入れをしているときはずっと後ろに下がって蒼紫がするのを見ていた。
蒼紫はその剣の波紋を見ながら、この刀が自分と共に戦ってきた数々の修羅場を思い起こした。
ある時は御庭番衆御頭として、
ある時は仲間に最強の華を添える為に人の道を外れた修羅として、
そして抜刀斎との二度にわたる決闘、
そして今は最後の隠密御庭番衆御頭として、縁の部下や外印、四神の一人との闘いなど・・。
過去から今まで数えきれないほどの闘いの中でこの小太刀と共に戦った。
しかしそのどれもがそれぞれの明確な目的達成の為。
と、蒼紫は回想する。
だが、しかし・・・。
と、蒼紫は微かに眉をひそめた。
研ぎ治したばかりのこの小太刀で・・・・。
俺は・・・・。
・・・・・・・武尊を・・・・。
武尊を・・・・・この小太刀で・・・。
と、蒼紫の脳裏にあの雨の日の惨劇がよぎる。
不可抗力だった。
雷の閃光から視力を取り戻した時はもう、後の祭りだった。
目の前で崩れ落ちた武尊は死の手前だった。
そうさせたのは他でもない。斎藤と俺・・・・・、俺なのだ。
パチン。
蒼紫は片方の手入れを終え抜き身の刀を鞘にしまい、もう片方の手入れを行った。
だが、刀身を見て頭の中によぎるのは先ほどと同じ事。
それでも小太刀をいつものように手入れを終わらせると蒼紫は縁側へ出て座禅を組んだ。