ガタガタガタガタ・・・・。



舗装されていない道路は細かくよく揺れる。



背中の傷にひびく・・それでも歩く事と比べると早さも楽さも違う。



なんて便利で贅沢な乗り物だろうと武尊は考えた。



（これが未来では車になって、道路にあふれることになるんだから・・ねぇ・・。）



と、武尊は遠い目でのどかな景色を見ていた。



（一年前は自分がこんな風になるなんて全く思いもしなかった。）



そういえば自動車が日本に入って来るのはいつだ？



明日の神谷道場へも車で行けるといいのに、なーんて夢のような事を考えた。



「そんなわけないか。」



と、武尊はため息をついた。



蒼紫から道を聞いて少し近道を教えてもらったものの、片道二時間半以上はかかりそうな予感。



はっきり言ってめんどくさい。



そして人斬り抜刀斎だったというお弟子さんを恐れている自分がいる。



本当は自分は行きたくはないのだと、内側から声がする。



が、武尊はそれを首を振って即座に打ち消した。



「確かに行きたくないと思う自分がいるのは確かけど、東京に来たのはそれが目的だし何より逃げちゃだめだよね・・。」



と、武尊は自分に言い聞かした。



お弟子さんに会って話を聞くこと、十六夜丸の影を追う事、そして十六夜丸になるという薬の解明・・・。



と、武尊がもう一度自分が東京に来たらやろうと思っていたことを頭の中で繰り返していた時、はっと思いついたことがあった。



「薬・・・。恵さん、薬について詳しいって言ってた！・・そうだ、変に知らない所に成分分析の依頼をするより恵さんに調べてもらおう・・か・・な。」







だけど・・・。





十六夜丸のことは伏せなければいけない。



私が十六夜丸としてやって来た事が知られたら怖がらせて二度と近づくなと言われるだろうか・・それとも軽蔑されるだろうか・・・。



とりあえずなんとかうまく話をして調べてもらおう。



武尊はそう考えた。



「そろそろ斎藤さんから返して貰わなくちゃくちゃね、あの薬。」