蒼紫が少しだけ水を武尊の口内に与えると、反応があった。



武尊は一生懸命蒼紫の唇を求めて、まるで乳飲み子が母親の乳を求めるように口をちゅぱちゅぱ動かした。



蒼紫はそれを見て思わず口元を少しほころばせた。



（もっと欲しいのか、武尊。）



蒼紫は武尊に心で話しかけ、再び武尊に口付けをした。



蒼紫の唇が触れると武尊は蒼紫の唇に吸付くように己の唇を押し付けた。



蒼紫はさっきよりもう少し多くの水を武尊に与えた。



そして武尊の喉がコクンと水を飲みこむのを感じて、またもう少し水を流し込んだ。



コクン、コクン・・・・。



武尊の喉から何度も水が滑り落ちる。



その度に武尊は水を求めて蒼紫の唇を求めた。



蒼紫はおおよそ、湯呑三杯分もの水を武尊に与えた。



与えながら蒼紫は時折思った。



そうやって水を求める武尊に水を与える行為は鳥の親が子に餌をあたえるようだと。



（親鳥とはこのような気持ちで餌を与えているのか？）



蒼紫は普段思いつきもしない事を考える自分に驚きながらもこういう感情も悪くない、と、そう思う自分を少し笑う。



ようやく武尊がついばむように蒼紫の唇を求めるのをやめると、蒼紫は残りの水を飲みこみ、最後に自分の欲のままに武尊に口付けをした。



武尊は再び眠ったようでその唇はもう動かないが、蒼紫は武尊の唇を、ゆっくりと上から覆うように、そして柔らかなその唇をついばみ、吸って、ちょっと引っ張って離す。



蒼紫にとっては今回が初めて武尊との口付け。



蒼紫は想像したのと違わないその柔らかい唇を堪能した。



一方的な行為だったが、武尊の満足気な眠り顔と己の小さな欲を叶えて、蒼紫は満足だった。