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74.親鳥の気持ち (蒼紫・夢主)

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(こんな所を高荷にでも見られでもしたら何を言われるか・・・。)



高荷恵が外出中なのは分かっていたが、今一度歩きながら周囲の気配を探り他に誰もいないのを確認して蒼紫はほっとした。



蒼紫は洗い場で己の残滓を拭きとった手ぬぐいをさっさと洗うと病室へ戻り壁際に座って座禅を組んだ。



そして、ときどき目を開けては武尊の様子を確認した。



そのうち日が傾き、西日が診療所の廊下を照らす。



病室は物音ひとつなく、少し開けた窓からカーテンが時折ひらりと揺れるだけ。



その西日も沈み辺りが夜のとばりが徐々に降りてくる。



夕暮れを告げるヒグラシの鳴く声が小さくなり、虫の音が響くようになった頃、ようやく蒼紫は立ち上がった。



蒼紫は窓をカタンと閉め、ランプに灯りを点けた。



その時、今までピクリともしなかった武尊が小さく声を立てた。



蒼紫の耳にも聞こえるか聞こえないかの小さな声。



だが、蒼紫はそれに気がついて、



武尊!」



と呼ぶと、武尊の側に駆け寄り耳を



武尊の口元に当てた。



だが武尊は先ほどと同じように動かない。



蒼紫は、



(今のは空耳ではなかったはず。)



と思い、そのまま聞き耳を立てた。



すると、再び武尊の口からかすれた声がした。



「・・・・水・・・・・・水・・・・。」



蒼紫は武尊の名前を呼んで、身体を軽く叩くが武尊は目を開けずにうわ言のように、『水』という言葉を繰り返した。



蒼紫は椅子に腰かけ、武尊顔を見おろし、



武尊、水が欲しいのか。」



と、聞いた。



武尊は『水』と繰り返し言うだけであったが蒼紫には武尊が自分に水をくれと求めているように思えた。



「水か・・・。」



蒼紫はベッドサイドの小さな置き棚の上に置いてある水差しに目をやった。



蒼紫は椅子に座り湯呑に水を注ぐと片手で武尊を抱き起こし、もう片方の手で湯呑を持った。



蒼紫はしっかりと武尊を自分の胸の方へに引き寄せしっかり固定すると武尊の唇に湯呑の端を当てた。



手首を傾け、水がもう少しで武尊の口に流れ込もうとした時、蒼紫はその手を止め・・・・・自分の口へと持っていった。



蒼紫は水を口に含むと自分の唇を武尊の口にあてがった。



・・・・そして少しだけ水を武尊に与えた。
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