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72.軍人の自白と目撃証言 (斎藤・張・川路)
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斎藤が警視庁に帰って来たのは明け方だった。
斎藤は洗い場でむれた足の指を洗う。
雨でぐちゃぐちゃになった革靴の中は最悪だ、と思いながら。
***************
密輸された武器が船ごと海に沈んだあと、斎藤達の乗った小舟は築地より大分離れた砂浜に着いた。
小舟をつけると斎藤は捕らえている軍人を起こし波打ちぎわに縛ったまま正座させた。
縛ったままでというのは勝手に死なれては困るからだ。
この軍人が犯罪者という明らかな証拠がない以上、軍人を警察の拘置所などに入れることはできない。
物的証拠である武器が海へと沈んだ今、この事件自体を立証することは難しい。
だがこの男が武器の密輸に絡んでいることが明らかである以上、ここで野放しにするわけにはいかない。
新たな証拠が欲しい・・・・。
そう思った斎藤は正座をさせられている軍人の斜め横に立つと、
「お前達がしようとしていること。それが今の政府に対する破壊活動ならば見過ごすわけにはいかんのでな。」
と言い、ゆっくりと刀を抜き剣先を軍人の喉元に突きつけ言った。
「正直に話せば生かしてやる。さあ、答えろ。」
斎藤は、誰の指示のもとにあの武器を密輸し、何処へ運ぶはずだったのか、目的は何なのか、を問うた。
なかなか喋り出そうとしない若い軍人。
その軍人に迷いがある事は空気から読み取った張が耳元で囁く。
「あんさん、かわええ嫁はんが家で待っとるんちゃうんか。ここであんさんが戻らへんかったら誰が嫁はんの面倒をみるさかい。」
船の爆発の炎の明るさでこの軍人が若いという事が分かったが結婚しているかどうかは分からない。
そう言ったのはもちろん張の勘・・・というより当てずっぽうであった。
だが張の言葉が功を奏したのか、男は声を震わせながら話し始めた。
「僕の家は代々長州藩に仕える下級武士でした。と、いっても僕の家は父が早くに死に、母と畑仕事をして何とか毎日を過ごしていました。」
そう話すと男はいったん口を閉じた。
だが、観念したかのように首をうなだれると、再び口をひらいた。
その内容は、ある日その男の叔父が・・・長州藩の維新志士で・・・その叔父に言われて気は進まなかったが二年前に海軍に入ったという事。
そしてその叔父に出世にいい話があると、今回の仕事の話があったという事。
郷里には入隊前に結婚した幼馴染がいる。
だが生活は苦しく、側にいてやれない分だけ出世をして妻を少しでも楽にしてやりたかったと。
「危ない事をしているのではないかとは思っていたんです。でも明治になっても苦しい生活が続くのは今の政府のせいだと・・・、我々の手で維新をやり直す・・・そう言われて・・・。故郷を思った時、相変わらず苦しい村の生活がよくなるならば・・・。そう思ったんです。だから僕は引き受けたんです。」
と、今回、小舟で武器を積んだ船を先導し、隅田川をさかのぼって指定された場所で武器を積み替えるはずだったことを話した。
だが自分達を待つ相手は誰だか聞いていない、行けばわかると、割符を渡されていただけだったと言った。
「お前、東京でそんな事をすれば罪もない一般市民が巻き添えになることぐらいわからなかったのか。」
と、斎藤が言った。
「すみません、僕がちゃんと考えればいくら叔父がああ言ったからってやっていい事と悪い事ぐらいはわかったはずなのに・・・ううっ。」
と、その若い軍人は砂浜に伏して泣き出した。
斎藤は最後にその叔父の名前を聞き出すと、ため息と共に刀を鞘に納めた。
たまたま最後に捕縛した軍人からこれだけの事が聞けるとは。
予想外の収穫に斎藤は少し満足した。
斎藤は軍人を警察署の拘置所に入れるとまた明日調書を取りにくると言って、張をいったん帰宅させた。
斎藤は洗い場でむれた足の指を洗う。
雨でぐちゃぐちゃになった革靴の中は最悪だ、と思いながら。
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密輸された武器が船ごと海に沈んだあと、斎藤達の乗った小舟は築地より大分離れた砂浜に着いた。
小舟をつけると斎藤は捕らえている軍人を起こし波打ちぎわに縛ったまま正座させた。
縛ったままでというのは勝手に死なれては困るからだ。
この軍人が犯罪者という明らかな証拠がない以上、軍人を警察の拘置所などに入れることはできない。
物的証拠である武器が海へと沈んだ今、この事件自体を立証することは難しい。
だがこの男が武器の密輸に絡んでいることが明らかである以上、ここで野放しにするわけにはいかない。
新たな証拠が欲しい・・・・。
そう思った斎藤は正座をさせられている軍人の斜め横に立つと、
「お前達がしようとしていること。それが今の政府に対する破壊活動ならば見過ごすわけにはいかんのでな。」
と言い、ゆっくりと刀を抜き剣先を軍人の喉元に突きつけ言った。
「正直に話せば生かしてやる。さあ、答えろ。」
斎藤は、誰の指示のもとにあの武器を密輸し、何処へ運ぶはずだったのか、目的は何なのか、を問うた。
なかなか喋り出そうとしない若い軍人。
その軍人に迷いがある事は空気から読み取った張が耳元で囁く。
「あんさん、かわええ嫁はんが家で待っとるんちゃうんか。ここであんさんが戻らへんかったら誰が嫁はんの面倒をみるさかい。」
船の爆発の炎の明るさでこの軍人が若いという事が分かったが結婚しているかどうかは分からない。
そう言ったのはもちろん張の勘・・・というより当てずっぽうであった。
だが張の言葉が功を奏したのか、男は声を震わせながら話し始めた。
「僕の家は代々長州藩に仕える下級武士でした。と、いっても僕の家は父が早くに死に、母と畑仕事をして何とか毎日を過ごしていました。」
そう話すと男はいったん口を閉じた。
だが、観念したかのように首をうなだれると、再び口をひらいた。
その内容は、ある日その男の叔父が・・・長州藩の維新志士で・・・その叔父に言われて気は進まなかったが二年前に海軍に入ったという事。
そしてその叔父に出世にいい話があると、今回の仕事の話があったという事。
郷里には入隊前に結婚した幼馴染がいる。
だが生活は苦しく、側にいてやれない分だけ出世をして妻を少しでも楽にしてやりたかったと。
「危ない事をしているのではないかとは思っていたんです。でも明治になっても苦しい生活が続くのは今の政府のせいだと・・・、我々の手で維新をやり直す・・・そう言われて・・・。故郷を思った時、相変わらず苦しい村の生活がよくなるならば・・・。そう思ったんです。だから僕は引き受けたんです。」
と、今回、小舟で武器を積んだ船を先導し、隅田川をさかのぼって指定された場所で武器を積み替えるはずだったことを話した。
だが自分達を待つ相手は誰だか聞いていない、行けばわかると、割符を渡されていただけだったと言った。
「お前、東京でそんな事をすれば罪もない一般市民が巻き添えになることぐらいわからなかったのか。」
と、斎藤が言った。
「すみません、僕がちゃんと考えればいくら叔父がああ言ったからってやっていい事と悪い事ぐらいはわかったはずなのに・・・ううっ。」
と、その若い軍人は砂浜に伏して泣き出した。
斎藤は最後にその叔父の名前を聞き出すと、ため息と共に刀を鞘に納めた。
たまたま最後に捕縛した軍人からこれだけの事が聞けるとは。
予想外の収穫に斎藤は少し満足した。
斎藤は軍人を警察署の拘置所に入れるとまた明日調書を取りにくると言って、張をいったん帰宅させた。