※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
70.夜明けは始まりの合図 (蒼紫・恵・夢主・夢主の中に潜むもの)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
武尊を腕の中に抱いて一晩。
もうじき夜が明ける。
蒼紫は指で武尊の頬をなぞった。
腕の中の武尊に、昨日の恐ろしい出来事が夢ではないことが実感させられる。
蒼紫は死んだように動かない武尊の頬に自分の頬を摺り寄せてみた。
冷たくもなければ温かくもない武尊の頬や手足。
だが呼吸はあるようで蒼紫は少し安堵した。
その時、廊下をわたってくる小さな足音に気が付き、蒼紫は布団から出て立ち上がって腕を組んだ。
パタパタという足音は蒼紫の前の扉でいったん止まると、病室の入り口が開いた。
「あら、起きていたの?」
この男が寝てる姿なんて想像できないと思いつつ恵が小声で言った。
「嗚呼。」
と蒼紫が答えた。
恵はパタパタと武尊の横に来ると名の首筋に手の甲を当て、その後脈を取った。
「脈が弱くて速いわ。」
と、言って恵は蒼紫の方を向いた。
「ねぇ、昨日も不思議に思ったのだけれどもどうしてあの傷であんなに出血をしていたの?ありえないわ。でも脈を診る限り大量出血があった事は事実みたい・・。」
恵が蒼紫に問うが蒼紫は答えなかった。
恵は腰に手を当てハアと息を吐くと首をすくめた。
蒼紫は、
「どうなんだ、武尊の容体は。悪いのか。」
と聞いた。
「こっちの質問に答えてくれないんじゃあ答えようがないじゃない。」
恵は少しイラだって答えた。
「では言うが、お前の言う通り武尊は大量出血をした・・・・、そう言えば信じるのか。」
「そんなはずないじゃない!あなたも見たでしょ、昨日の傷を!あのくらいの傷・・・・。」
「だが事実だ。」
「・・・・・。」
恵は蒼紫にそう言われ返す言葉がなく押し黙った。
「今布団も見たけど再び出血した様子はないみたい。傷は開いてないようだからこのまま安静にするしかないわね。私、今日は玄斎先生の所へお薬を届けに行ってその後往診に回るから夕方まで帰って来ないんだけれども、もし、その間に武尊さんが起きたらこの薬を飲むように言って頂戴。」
「ああ・・・わかった。」
「それから、弥彦君の所へも様子を見に行くんだけど・・・・・。あなたの所の操ちゃんに何か言伝(ことづて)があったら聞いてあげるわよ。」
「・・・・・・。」
蒼紫は思わぬ恵の申し出に驚いたが今ここを離れるわけにはいかないと思い、
「では、用事で少し戻れぬと伝えてくれ。ここに俺がいることは言うな。」
恵はそんな蒼紫の言いように、人にものを頼むのに相変わらず上から目線でものを言うと呆れながらも、その微妙な言い回しに恵のアンテナが少し反応した。
「・・・わかったわ。もし何か聞かれたらうまく言っておいてあげる。」
と、蒼紫の言った事を了承した。
「それから離れの台所にあなたのおにぎりを作っておいたからよかったら食べていいわよ。あんたには心配なんて大きなお世話だと思うかもしれないけれど、看病する方が倒れたら困るでしょ。じゃ、後はよろしくね。」
と言って部屋を出ようとすると蒼紫が、
「どこか着物を洗える所はあるか。」
と聞いた。
「離れの横に井戸とたらいがあるわ。別に好きに使ってもらってかまわないから。」
「・・了解した。」
恵が部屋を出た後、蒼紫は武尊の頬からあごを数回そっと触れると静かに部屋を出た。
もうじき夜が明ける。
蒼紫は指で武尊の頬をなぞった。
腕の中の武尊に、昨日の恐ろしい出来事が夢ではないことが実感させられる。
蒼紫は死んだように動かない武尊の頬に自分の頬を摺り寄せてみた。
冷たくもなければ温かくもない武尊の頬や手足。
だが呼吸はあるようで蒼紫は少し安堵した。
その時、廊下をわたってくる小さな足音に気が付き、蒼紫は布団から出て立ち上がって腕を組んだ。
パタパタという足音は蒼紫の前の扉でいったん止まると、病室の入り口が開いた。
「あら、起きていたの?」
この男が寝てる姿なんて想像できないと思いつつ恵が小声で言った。
「嗚呼。」
と蒼紫が答えた。
恵はパタパタと武尊の横に来ると名の首筋に手の甲を当て、その後脈を取った。
「脈が弱くて速いわ。」
と、言って恵は蒼紫の方を向いた。
「ねぇ、昨日も不思議に思ったのだけれどもどうしてあの傷であんなに出血をしていたの?ありえないわ。でも脈を診る限り大量出血があった事は事実みたい・・。」
恵が蒼紫に問うが蒼紫は答えなかった。
恵は腰に手を当てハアと息を吐くと首をすくめた。
蒼紫は、
「どうなんだ、武尊の容体は。悪いのか。」
と聞いた。
「こっちの質問に答えてくれないんじゃあ答えようがないじゃない。」
恵は少しイラだって答えた。
「では言うが、お前の言う通り武尊は大量出血をした・・・・、そう言えば信じるのか。」
「そんなはずないじゃない!あなたも見たでしょ、昨日の傷を!あのくらいの傷・・・・。」
「だが事実だ。」
「・・・・・。」
恵は蒼紫にそう言われ返す言葉がなく押し黙った。
「今布団も見たけど再び出血した様子はないみたい。傷は開いてないようだからこのまま安静にするしかないわね。私、今日は玄斎先生の所へお薬を届けに行ってその後往診に回るから夕方まで帰って来ないんだけれども、もし、その間に武尊さんが起きたらこの薬を飲むように言って頂戴。」
「ああ・・・わかった。」
「それから、弥彦君の所へも様子を見に行くんだけど・・・・・。あなたの所の操ちゃんに何か言伝(ことづて)があったら聞いてあげるわよ。」
「・・・・・・。」
蒼紫は思わぬ恵の申し出に驚いたが今ここを離れるわけにはいかないと思い、
「では、用事で少し戻れぬと伝えてくれ。ここに俺がいることは言うな。」
恵はそんな蒼紫の言いように、人にものを頼むのに相変わらず上から目線でものを言うと呆れながらも、その微妙な言い回しに恵のアンテナが少し反応した。
「・・・わかったわ。もし何か聞かれたらうまく言っておいてあげる。」
と、蒼紫の言った事を了承した。
「それから離れの台所にあなたのおにぎりを作っておいたからよかったら食べていいわよ。あんたには心配なんて大きなお世話だと思うかもしれないけれど、看病する方が倒れたら困るでしょ。じゃ、後はよろしくね。」
と言って部屋を出ようとすると蒼紫が、
「どこか着物を洗える所はあるか。」
と聞いた。
「離れの横に井戸とたらいがあるわ。別に好きに使ってもらってかまわないから。」
「・・了解した。」
恵が部屋を出た後、蒼紫は武尊の頬からあごを数回そっと触れると静かに部屋を出た。