「雨はまだやまないのか。」


「そうですね、先程の豪雨に比べると大分小降りにはなりましたがまだ止みませんね。」


「先ほどのような風でなければ波もそう荒くはないだろう。もう時間がない、残りを小舟に積んでしまうか。これ以上遅くなると向こうで待っている男爵に悪いからな。」


そのような会話が倉庫内でされていた矢先、雨の音に混じり遠くでパンという音が聞こえた。


「何だ！？」


「見つかったのか？！」


その銃声に運搬の作業を中止して雨を避けるために倉庫内いる者達がざわついた。


「落ち着け！巡察が回ってくる時間にはまだ早い！」


と、その中のリ－ダ－らしき男が叫ぶとざわめきが治まった。


その男はさらに、


「外には見張りも立ててある。が、念の為だ、誰か様子を見てこい。」


と、部下に命じた。


一方、斎藤と張は音を聞いて駆けつけた別の見張りにも見つかっていた。


相手は四人。


斎藤は一応相手に自首と情報提供をするように言うが、相手は先ほどと同じく即、短銃を出し銃口を斎藤達に向けた。


張は、


「どうやら問答無用なのはあちらさんの方みたいですな。ほな、今度は旦那の言うとおり、先手で行かしてもらいまっせ｡」


と言うと薄い刃がオロチの様に斎藤の目の前を走った。



張に四人が集中する隙をみて斎藤が二人斬った。



斎藤と張は、今度は誰にも発砲させないで相手を倒した。



張は斎藤の迷いがない斬撃を見て、ひゅ～と、口笛をならした。



「流石、旦那。抜刀斎と違って人を斬るのに迷いがあらへん。」



と感心した。



「馬鹿にしてるのか貴様、あんなのと一緒にするな｡」



「それにしても、ひと思いにばっさりやらんでもええんちゃうか。一人ぐらい生かして情報を取ってもええんちゃうん。」



「同じくバッサリやっているお前に言われたくはない｡それにこういう輩は適当に生かしておいても情報を取る前に自ら命を絶つ者ばかりだ。こんな所で足止めを食うだけ時間の無駄だ。」



（ま、こんな下っ端ではろくに情報なんか持ってはいないだろうがな。）



斎藤はそう思いながら、また倉庫に向かって歩き出した。



「それにしてもわいは剣客やさかい。相手が短銃じゃおもろうないのぅ。」



張はぶつぶついいながら斎藤の後に続いた。