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67.雨の夜、診療所と見張り場 (蒼紫・恵・夢主・斎藤・張)
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「えらいごっつい雨やんけ、どないなっとんねん今日の天気は-!」
と、張が誰もいない中、空に向かって叫ぶ。
もちろん、気楽にゴロゴロしながらでもちゃんと見張っていられるような場所を選んでそこに潜んでいたわけであったが、残念なことにそこに生えている何本かの木も、この雨では十分な雨避けにはならなかった。
「せっかくのええ男がびちょびちょやんか-!どないしてくれんねん。せやけど水もしたたるええ男ちゅう言葉もあんねん。ま、今日はわいに免じて許したるわ。」
と、別に誰も張に許しを請うてなんかいないのだが、張も自分をずぶ濡れにしたこの雨と、遅い名の帰りにイラついていて何かを喋っていないと落ち着かなかった。
例の積荷の方はたぶん、夕方にはほとんど大きな船の方へ積み終わって、夜の闇にまぎれて出港・・・・・と、いうパタ-ンかと思われる時に、待てども待てども、武尊も斎藤も来ない。
雨が小降りになって、日が沈み、辺りが闇に包まれ始めた頃、張の前に斎藤がようやく姿を現した。
向こうからやってくる斎藤を見つけ、張が大声でどなる。
「旦那、遅すぎでっせ・・・・、」
の後に、『どこほっつき歩いとったんや』、と言おうとしたが、斎藤の顔を見て、開けた口からその言葉が出せなかった。
その代りに、
「旦那・・・、どないしたん、その口・・。」
と言う言葉が口から出た。
斎藤の口が切れていて血が染み出してきている。
張はまさか斎藤が誰かに顔面を殴られたとは、とてもとても想像もつかない。
(その逆は大いにあるとは思ったが。)
何はともあれ、遅くなった原因はそこにあると張は思った。
斎藤は張の質問には答えない。
暗い中、遠くに見える積荷に隠してあった倉庫とその周りの状況を険しい目で見ると張に、
「報告はどうした。」
と言った。
張は、
「その前に旦那、まだ武尊が来ておらんやないか。武尊はどないしたんや。旦那を呼びに行って一緒に来るんやなかったんか。」
と言ったが、斎藤は張を睨むと、
「報告だ。」
と、言った。
張はその視線に殺気に近いものを感じて即座に、
「え~、昼ぐらいからずっとあいつら小舟を使ってあそこらへんにある大き目の船に荷を運びよった。ちょっとここからはもう、見ずらくなってもうたけどあの先に船が泊まっとんねん。」
と、言って暗い海の向こうを指さした。
「ほんで、さっきのごっつい雨が降った時は風もきつうなって、さすがにあいつらも運ぶのをやめたさかい。荷の方はほとんど運び終わっとると思うで。ほんま、このまま旦那が来んかったら、わいどうしようかと思っとったんねん。」
それだけ言うと張は黙った。
張は自分で言うのも何だが、その場の空気を読むのが自分でもうまいと思っている。
それが自分が今まで生きれ残って来られた要因の一つでもあると考えている。
今、斎藤を刺激してはいけない・・・・・・。
そんな空気が張の周りに張り詰めていた。
(それにしても武尊はどないしたんや。)
と、張は思った。
張は、武尊は絶対来ると思っていたからだ。
(もしかせんでも、旦那のあの口・・・・、武尊とケンカでもして武尊にでも殴られた?あかん・・・そんなアホなことあらへん・・・よな・・・・・・。)
と、張は斎藤をちらりと見た。
斎藤は、
「何だ、張。」
と、言って張をじろりと見た。
「いや、別に・・・・。これからどないしましょ、旦那。」
と、斎藤に答えた。
斎藤は再び遠くの倉庫の方を見ると、
「入り口に二人、横の角に二人・・・・、その向こうは四人、手前に二人・・・・。外に出ているのは見張りだな。中には何人いる、張。」
と、言った。
「運んどった人数からして、五十人ぐらいや。」
と、張が言うと斎藤はちょっと両腕を組んで思案している様子を見せた。
そして視線は倉庫に置いたまま、フッ、と口角を上げると張に、
「張、感づいていると思うが今俺は気が高ぶっている。今日はどうにも抑えられそうにない。だが反面たまにはお前にも楽しい思いをさせてやらねばならないと思うぞ。」
と言うと、斎藤は歩き始めた。
「旦那、いったい何処へ!」
と、張は斎藤の後ろから、前へ進む斎藤に言うと斎藤は一瞬振り向き、
「行くと言えばあの倉庫しかあるまいが。何の為に何日もそこにいたんだ、阿呆。」
と言った。
張は斎藤の後を追いかけ歩きながら
「いや、行くのはええねんけど、どないするんや。積荷はほとんど沖の船やで。乗り込むんか?」
「いや、沖の船は全部積み込むまで動かないはずだ。・・・張、今夜は特別にお前にも獲物を分けてやる、好きにしていいぞ。」
「!」
張の目がぎらついた。
「旦那、何をゆうとんかわかっとって言うとるんやろうな。わいに好きにしてええって言うっていう事は・・・・。」
「好きにしていいと言ったら好きにしろ。何度も言わせるな阿呆。嗚呼、そうだ。頭のよさそうな奴を一人生かしておけよ。」
「やっと、わいにも剣客らしい仕事が回って来よったんかいな。それにしても今回はえらい問答無用なやり方やな。まあ、わいはそういう方が好きやねんけど・・・。旦那、こうすることを最初から考えとって武尊を来させんかんかいな。それならそうと早よう、言うてくれればええのに。」
斎藤はそれにも答えない。
張は斎藤の無言の意味など解るわけもなく、これから久々に行える行為を想像して思わず舌舐めずりをした。
雨はまだ細い糸のようになりながらサァ-と音を立てて降っている。
と、張が誰もいない中、空に向かって叫ぶ。
もちろん、気楽にゴロゴロしながらでもちゃんと見張っていられるような場所を選んでそこに潜んでいたわけであったが、残念なことにそこに生えている何本かの木も、この雨では十分な雨避けにはならなかった。
「せっかくのええ男がびちょびちょやんか-!どないしてくれんねん。せやけど水もしたたるええ男ちゅう言葉もあんねん。ま、今日はわいに免じて許したるわ。」
と、別に誰も張に許しを請うてなんかいないのだが、張も自分をずぶ濡れにしたこの雨と、遅い名の帰りにイラついていて何かを喋っていないと落ち着かなかった。
例の積荷の方はたぶん、夕方にはほとんど大きな船の方へ積み終わって、夜の闇にまぎれて出港・・・・・と、いうパタ-ンかと思われる時に、待てども待てども、武尊も斎藤も来ない。
雨が小降りになって、日が沈み、辺りが闇に包まれ始めた頃、張の前に斎藤がようやく姿を現した。
向こうからやってくる斎藤を見つけ、張が大声でどなる。
「旦那、遅すぎでっせ・・・・、」
の後に、『どこほっつき歩いとったんや』、と言おうとしたが、斎藤の顔を見て、開けた口からその言葉が出せなかった。
その代りに、
「旦那・・・、どないしたん、その口・・。」
と言う言葉が口から出た。
斎藤の口が切れていて血が染み出してきている。
張はまさか斎藤が誰かに顔面を殴られたとは、とてもとても想像もつかない。
(その逆は大いにあるとは思ったが。)
何はともあれ、遅くなった原因はそこにあると張は思った。
斎藤は張の質問には答えない。
暗い中、遠くに見える積荷に隠してあった倉庫とその周りの状況を険しい目で見ると張に、
「報告はどうした。」
と言った。
張は、
「その前に旦那、まだ武尊が来ておらんやないか。武尊はどないしたんや。旦那を呼びに行って一緒に来るんやなかったんか。」
と言ったが、斎藤は張を睨むと、
「報告だ。」
と、言った。
張はその視線に殺気に近いものを感じて即座に、
「え~、昼ぐらいからずっとあいつら小舟を使ってあそこらへんにある大き目の船に荷を運びよった。ちょっとここからはもう、見ずらくなってもうたけどあの先に船が泊まっとんねん。」
と、言って暗い海の向こうを指さした。
「ほんで、さっきのごっつい雨が降った時は風もきつうなって、さすがにあいつらも運ぶのをやめたさかい。荷の方はほとんど運び終わっとると思うで。ほんま、このまま旦那が来んかったら、わいどうしようかと思っとったんねん。」
それだけ言うと張は黙った。
張は自分で言うのも何だが、その場の空気を読むのが自分でもうまいと思っている。
それが自分が今まで生きれ残って来られた要因の一つでもあると考えている。
今、斎藤を刺激してはいけない・・・・・・。
そんな空気が張の周りに張り詰めていた。
(それにしても武尊はどないしたんや。)
と、張は思った。
張は、武尊は絶対来ると思っていたからだ。
(もしかせんでも、旦那のあの口・・・・、武尊とケンカでもして武尊にでも殴られた?あかん・・・そんなアホなことあらへん・・・よな・・・・・・。)
と、張は斎藤をちらりと見た。
斎藤は、
「何だ、張。」
と、言って張をじろりと見た。
「いや、別に・・・・。これからどないしましょ、旦那。」
と、斎藤に答えた。
斎藤は再び遠くの倉庫の方を見ると、
「入り口に二人、横の角に二人・・・・、その向こうは四人、手前に二人・・・・。外に出ているのは見張りだな。中には何人いる、張。」
と、言った。
「運んどった人数からして、五十人ぐらいや。」
と、張が言うと斎藤はちょっと両腕を組んで思案している様子を見せた。
そして視線は倉庫に置いたまま、フッ、と口角を上げると張に、
「張、感づいていると思うが今俺は気が高ぶっている。今日はどうにも抑えられそうにない。だが反面たまにはお前にも楽しい思いをさせてやらねばならないと思うぞ。」
と言うと、斎藤は歩き始めた。
「旦那、いったい何処へ!」
と、張は斎藤の後ろから、前へ進む斎藤に言うと斎藤は一瞬振り向き、
「行くと言えばあの倉庫しかあるまいが。何の為に何日もそこにいたんだ、阿呆。」
と言った。
張は斎藤の後を追いかけ歩きながら
「いや、行くのはええねんけど、どないするんや。積荷はほとんど沖の船やで。乗り込むんか?」
「いや、沖の船は全部積み込むまで動かないはずだ。・・・張、今夜は特別にお前にも獲物を分けてやる、好きにしていいぞ。」
「!」
張の目がぎらついた。
「旦那、何をゆうとんかわかっとって言うとるんやろうな。わいに好きにしてええって言うっていう事は・・・・。」
「好きにしていいと言ったら好きにしろ。何度も言わせるな阿呆。嗚呼、そうだ。頭のよさそうな奴を一人生かしておけよ。」
「やっと、わいにも剣客らしい仕事が回って来よったんかいな。それにしても今回はえらい問答無用なやり方やな。まあ、わいはそういう方が好きやねんけど・・・。旦那、こうすることを最初から考えとって武尊を来させんかんかいな。それならそうと早よう、言うてくれればええのに。」
斎藤はそれにも答えない。
張は斎藤の無言の意味など解るわけもなく、これから久々に行える行為を想像して思わず舌舐めずりをした。
雨はまだ細い糸のようになりながらサァ-と音を立てて降っている。