※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
59.やる事がいっぱいある (斎藤・夢主)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「斎藤さん、今って時間あります?」
「昼までは予定はないが何かあるのか。」
「兄について聞いて欲しい事があるんです。斎藤さんがこの前、雪代縁を捕らえに船に乗った日、川路がここへ来て兄のことを少し教えてくれたんですけど、その話で納得がいかないことがあるので斎藤さんに聞いてもらおうと思ってたんです。」
武尊は川路の話の内容を斎藤に話した。
川路は兄とは面識がなかったが兄の父とは同郷(薩摩藩)で面識があった事。
その父は川路より十五年上で長崎へ行って蘭方医になり、数年後ラシャメンの娘だという妻を連れて薩摩に戻って来た事。
ラシャメンの娘が妻だという理由で土地の人から避けられて患者がほとんど来なかった診療所にも関わらず、山間に屋敷を建てた事。
川路が藩の役人になった後に訪ねてみると妻は亡くなっており、残された子が二人、僧侶によって世話をされていたらしいという事。
そのころから父はずっと江戸へ行っていたという事。
その後、将軍家定の暗殺に関与したということで死罪になったという事。
その後、あの屋敷には誰も住んでいなかったという事。
「私が兄から聞かされていたのは父は薩摩藩の計略にかかって死罪になったという事です。薩摩藩の川路が家族を死に追いやった張本人だと。でも、川路の話は全然違う。この事を斎藤さんならどう考えるか聞きたかったんです。」
「まさかこんな所で将軍家定の暗殺の話なんぞが出てくるとはな。」
「私もですよ。まさか兄の父がそんな事に関わっていただなんて川路が言ったときはびっくりでしたよ。」
「将軍家定については毒殺されたとの話もある。もちろん真意はわからん。」
「では蘭方医だった父が関与したという話もあり得ない話ではないんですね。」
「可能性としてはだがな。だが、それは毒殺されたというのが本当ならばというのが前提となるが。」
「そうだとすれば・・・と、仮定した場合の話なんですけど、父は薩摩藩の人間なんですよね。という事は、薩摩藩から頼まれたからやったということになるんですよね?もし、毒殺が成功したとすればご褒美もらったり、出世したりしてもいいんじゃないですか。」
「逆だ、武尊。将軍暗殺などという事を計画したのが自分の藩だとばれないように口を封じられたと考えた方がいいだろう。」
「そんな!」
「悪党の考える事はそんなもんだ。」
「じゃあ、薩摩藩はやっぱり悪いんだ。」
「薩摩藩が・・・か。そうだな藩主か家老かわからんが上の奴らが計画、もしくは加担したんだろうな。」
「では父はそんな一握りの人間に利用されて死んだと?」
「将軍殺害を企てた奴等がお前の兄に『川路がお前の父を陥れた』とか嘘の情報を教えたのかもしれん。」
「そんな!じゃあ・・・・川路は・・・無実だ・・・と・・・・?」
「川路が嘘を言ってないなら罪を着せられたと考えたほうがいいな。おそらく診療所を訪ねていたのを首謀者に見られていて都合よく利用されたのかもな。」
「う・・そ・・。では川路の方こそいい迷惑じゃない。理由もないのに命を狙われていたなんて。」
「そう言うことになるな。」
「・・・・・・。」
「ついでに言うとあの頃、薩摩藩は関係の深い水戸派の一橋慶喜を次期将軍にと、考えていたという噂もある。それなのに時期将軍は病弱だったと噂された家定になった。薩摩のとっては家定の存在が邪魔だったとしてもおかしくない。仮に毒殺が本当だったとしても時期将軍は対する紀州派の家茂が就任してしまったがな。」
斎藤の話を聞いて武尊はソファ-へ座り込んでしまった。
一体私達(私と兄)は何を追ってきたんだろう。
たった二人で。
そう・・・たった二人で。
今から考えるとよくやったと思う。
相手は薩摩だと簡単に言ってたけど、相手を象とするとこっちは小さなありんこさん。
それでも武尊の心には怒りが湧いてくる。
「薩摩藩って許せない・・・・。」
「武尊、今の話はあくまでも仮説だ。証拠はない。思い込みで動くなよ。」
「・・・・。」
武尊はソファ-に座って斎藤を見る。
「それでも武尊は川路を狙うのか。」
と、斎藤に言われ、
「いえ・・・・、川路に対する恨みがあるとすればそれは兄から刷り込まれたもの。私自身は兄とも川路とも関係がありませんから私が川路を狙う理由はないです・・・。」
と、ため息まじりに武尊は答えた。
「それに・・・、もう終わった話です。」
武尊は吹っ切る様に言うと、少し考えて、
「今、川路に兄の目撃情報があったら知らせてくださいとお願いしてます。・・・・・私、ここでの仕事が終わったら一度会津に行ってみます。もし、兄の消息が分かって生きていたら会うつもりです。」
斎藤は武尊の言葉に表情には出さなかったが驚いた。
「もし、生きていなくてもお花ぐらい添えなければ・・・・、と思ってます。」
そう言って少し悲しげにほほ笑む武尊を、斎藤は煙草を指に挟んだままを見ていた。
斎藤の頭を今占めるのは武尊は最初の約束が終わったら自分の下を離れていくと言った事。
確かに『ひと月』と約束はした。
だが実際斎藤は、武尊がいなくなるという事を考えもしていなかった。
斎藤は黙って武尊を見ていた。
「昼までは予定はないが何かあるのか。」
「兄について聞いて欲しい事があるんです。斎藤さんがこの前、雪代縁を捕らえに船に乗った日、川路がここへ来て兄のことを少し教えてくれたんですけど、その話で納得がいかないことがあるので斎藤さんに聞いてもらおうと思ってたんです。」
武尊は川路の話の内容を斎藤に話した。
川路は兄とは面識がなかったが兄の父とは同郷(薩摩藩)で面識があった事。
その父は川路より十五年上で長崎へ行って蘭方医になり、数年後ラシャメンの娘だという妻を連れて薩摩に戻って来た事。
ラシャメンの娘が妻だという理由で土地の人から避けられて患者がほとんど来なかった診療所にも関わらず、山間に屋敷を建てた事。
川路が藩の役人になった後に訪ねてみると妻は亡くなっており、残された子が二人、僧侶によって世話をされていたらしいという事。
そのころから父はずっと江戸へ行っていたという事。
その後、将軍家定の暗殺に関与したということで死罪になったという事。
その後、あの屋敷には誰も住んでいなかったという事。
「私が兄から聞かされていたのは父は薩摩藩の計略にかかって死罪になったという事です。薩摩藩の川路が家族を死に追いやった張本人だと。でも、川路の話は全然違う。この事を斎藤さんならどう考えるか聞きたかったんです。」
「まさかこんな所で将軍家定の暗殺の話なんぞが出てくるとはな。」
「私もですよ。まさか兄の父がそんな事に関わっていただなんて川路が言ったときはびっくりでしたよ。」
「将軍家定については毒殺されたとの話もある。もちろん真意はわからん。」
「では蘭方医だった父が関与したという話もあり得ない話ではないんですね。」
「可能性としてはだがな。だが、それは毒殺されたというのが本当ならばというのが前提となるが。」
「そうだとすれば・・・と、仮定した場合の話なんですけど、父は薩摩藩の人間なんですよね。という事は、薩摩藩から頼まれたからやったということになるんですよね?もし、毒殺が成功したとすればご褒美もらったり、出世したりしてもいいんじゃないですか。」
「逆だ、武尊。将軍暗殺などという事を計画したのが自分の藩だとばれないように口を封じられたと考えた方がいいだろう。」
「そんな!」
「悪党の考える事はそんなもんだ。」
「じゃあ、薩摩藩はやっぱり悪いんだ。」
「薩摩藩が・・・か。そうだな藩主か家老かわからんが上の奴らが計画、もしくは加担したんだろうな。」
「では父はそんな一握りの人間に利用されて死んだと?」
「将軍殺害を企てた奴等がお前の兄に『川路がお前の父を陥れた』とか嘘の情報を教えたのかもしれん。」
「そんな!じゃあ・・・・川路は・・・無実だ・・・と・・・・?」
「川路が嘘を言ってないなら罪を着せられたと考えたほうがいいな。おそらく診療所を訪ねていたのを首謀者に見られていて都合よく利用されたのかもな。」
「う・・そ・・。では川路の方こそいい迷惑じゃない。理由もないのに命を狙われていたなんて。」
「そう言うことになるな。」
「・・・・・・。」
「ついでに言うとあの頃、薩摩藩は関係の深い水戸派の一橋慶喜を次期将軍にと、考えていたという噂もある。それなのに時期将軍は病弱だったと噂された家定になった。薩摩のとっては家定の存在が邪魔だったとしてもおかしくない。仮に毒殺が本当だったとしても時期将軍は対する紀州派の家茂が就任してしまったがな。」
斎藤の話を聞いて武尊はソファ-へ座り込んでしまった。
一体私達(私と兄)は何を追ってきたんだろう。
たった二人で。
そう・・・たった二人で。
今から考えるとよくやったと思う。
相手は薩摩だと簡単に言ってたけど、相手を象とするとこっちは小さなありんこさん。
それでも武尊の心には怒りが湧いてくる。
「薩摩藩って許せない・・・・。」
「武尊、今の話はあくまでも仮説だ。証拠はない。思い込みで動くなよ。」
「・・・・。」
武尊はソファ-に座って斎藤を見る。
「それでも武尊は川路を狙うのか。」
と、斎藤に言われ、
「いえ・・・・、川路に対する恨みがあるとすればそれは兄から刷り込まれたもの。私自身は兄とも川路とも関係がありませんから私が川路を狙う理由はないです・・・。」
と、ため息まじりに武尊は答えた。
「それに・・・、もう終わった話です。」
武尊は吹っ切る様に言うと、少し考えて、
「今、川路に兄の目撃情報があったら知らせてくださいとお願いしてます。・・・・・私、ここでの仕事が終わったら一度会津に行ってみます。もし、兄の消息が分かって生きていたら会うつもりです。」
斎藤は武尊の言葉に表情には出さなかったが驚いた。
「もし、生きていなくてもお花ぐらい添えなければ・・・・、と思ってます。」
そう言って少し悲しげにほほ笑む武尊を、斎藤は煙草を指に挟んだままを見ていた。
斎藤の頭を今占めるのは武尊は最初の約束が終わったら自分の下を離れていくと言った事。
確かに『ひと月』と約束はした。
だが実際斎藤は、武尊がいなくなるという事を考えもしていなかった。
斎藤は黙って武尊を見ていた。