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42.川路の話 (夢主・川路)
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「うむ。最初はその名前に心当たりがなかったが、よく調べさせたら秦という苗字は秦市彦の母方の苗字で、父方の苗字は川上という。事情が複雑なので単刀直入に言おう土岐。川上は時の将軍、徳川家定暗殺に関与したという罪で死罪になった男だ。」
「は?」
思わず川路の言葉に疑問符を返す。
(今何と言った?)
武尊は自分の耳を疑った。
(いきなり将軍?徳川家定?の・・暗殺!?)
武尊は内心、驚きでいっぱいだった。
川路は言葉を続ける。
「川上は儂と同郷だった男で、年は十五もあやつが上だったのに歳の差など関係なく接してくれた優しい男だった。だが下級武士のくせに蘭方医になると長崎へ行って何年かすると妻を連れて戻って来た。儂は何度か川上の所へ顔を出したのだが医者という割にはいつも人気がない診療所で何故なのか気になっておったところある噂を聞いたんじゃ。」
「って、どんな?」
「妻がラシャメンの娘だという噂でな。儂も一度だけ見たことがあるんだが、そう、緑の目と土岐のような茶色い髪をしておった。」
「混血児だったと?」
「あの緑の目を見れば誰もがそう思ってしまうだろう。極力外出は控えていたようだが噂が広まるとだれも診療へは行かんようになったと思われる。」
「でしょうね・・・。」
「だがしばらくしてからだ。川上が里を出て山間に屋敷を建てたのは。貧窮していると思っていたので誰もが驚いた。儂はその頃役人になっていたので上からの命もあり再び川上を訪ねたのだが医者をやっている様子はなく、緑の目の妻も死んだと聞かされた。」
「どうして患者も来ない医者なのに屋敷が建つんですか?」
「儂はそれを調べるように言われてな、その後川上の所を訪ねたのだが不在で、近所の話では江戸をへ出かけたと言っておった。」
「・・・それで?」
「その後何度も訪ねたのだがその度に不在だった。かれこれ半年後、江戸の薩摩藩邸から連絡があり、先ほどの罪で川上が死罪になったという事を上役から聞いた。儂は川上という男を知っているだけにその知らせに驚いた。儂が知っているのはここまでだ。」
「本当に?」
「誓って言おう。本当だ。」
「でも今の話では兄があなたを恨む理由がないじゃないですか。それに兄は父が死んだのは薩摩藩の計略にかかったからだって言ってましたが。」
「我が藩と川上がどう関係していたのか儂にはわからん。まさか川上の息子が儂の命を狙っていたなんて思いもせんかったぞ。」
「そうですか・・・・。」
「儂からも一ついいか、土岐。」
「ええ、何でしょう。」
「昔、川上の屋敷で僧侶に学問を教えてもらっていたのはお前か。障子の隙間からちらっとしか見えなかったが、その髪の色、他に儂は見たことがない。」
確かに自分の髪は日本人にしては色が茶色いと思うが自分は未来人、そこにいるはずがない。
「まさか。前にも言いましたが私には義父がいましたし、薩摩なんて行ったことないですよ。」
「だが、市彦を兄と言うではないか。」
「ああ、それは幕末、記憶を失っていた私を引き取った市彦が自分の事を『兄』だと刷り込んだものだから、そのまま兄と言ってるだけです。」
「そうか。」
「今の話ではまだ納得がいきません。他にも何か知っていることがあったら教えて下さい!例えば・・・・、会津戦争で兄を見たとか?兄はあの場所にいたんです。あなたの命を狙うために。兄は単独で動いていたから幕府軍と違う動きをした男がいなかったかどうか分からないでしょうか。」
「むぅ・・、十年も前の事。今になってどれほどの事が分かるか・・・・。」
「なんでもいいんです!」
「わかった、調べるように言っておこう。だが十年前の事だ、あまり期待はするな。」
「・・・・ありがとうございます。自分で言っておいていうのもなんですが、どうして私のお願いを聞いてくれるんですか?」
「一応、この間の礼もあると思ってくれ。娘の護衛で来ていたとはいえ儂は土岐に命を救われたのは事実。それに、実は娘もあれ以来ちょっと変わってな・・・。家の方はうまくいっておる。これもまあ、土岐のお陰だ。儂に出来る事があればやってみるわい。」
コホンと少し照れを隠すように言う川路。
武尊は思いもよらない川路の言葉に目を丸くし、少し胸が熱くなった。
「あ、ありがとうございます!」
武尊はこのとき川路に心から礼をした。
「それと土岐、もう一つ、なぜ実兄でもない者の事を知りたいのだ。」
「それは・・・・。」
武尊が言葉を詰まらせていると
「いや、すまん。武尊にどのような事情があるかわ知れんが、それは儂には関係がないことだな。」
と言うと川路は部屋を出て行った。
それは・・・どうしても聞きたいがあるから。
十六夜丸とは一体何なのか、と。
兄ならきっとそれを知っている。
「は?」
思わず川路の言葉に疑問符を返す。
(今何と言った?)
武尊は自分の耳を疑った。
(いきなり将軍?徳川家定?の・・暗殺!?)
武尊は内心、驚きでいっぱいだった。
川路は言葉を続ける。
「川上は儂と同郷だった男で、年は十五もあやつが上だったのに歳の差など関係なく接してくれた優しい男だった。だが下級武士のくせに蘭方医になると長崎へ行って何年かすると妻を連れて戻って来た。儂は何度か川上の所へ顔を出したのだが医者という割にはいつも人気がない診療所で何故なのか気になっておったところある噂を聞いたんじゃ。」
「って、どんな?」
「妻がラシャメンの娘だという噂でな。儂も一度だけ見たことがあるんだが、そう、緑の目と土岐のような茶色い髪をしておった。」
「混血児だったと?」
「あの緑の目を見れば誰もがそう思ってしまうだろう。極力外出は控えていたようだが噂が広まるとだれも診療へは行かんようになったと思われる。」
「でしょうね・・・。」
「だがしばらくしてからだ。川上が里を出て山間に屋敷を建てたのは。貧窮していると思っていたので誰もが驚いた。儂はその頃役人になっていたので上からの命もあり再び川上を訪ねたのだが医者をやっている様子はなく、緑の目の妻も死んだと聞かされた。」
「どうして患者も来ない医者なのに屋敷が建つんですか?」
「儂はそれを調べるように言われてな、その後川上の所を訪ねたのだが不在で、近所の話では江戸をへ出かけたと言っておった。」
「・・・それで?」
「その後何度も訪ねたのだがその度に不在だった。かれこれ半年後、江戸の薩摩藩邸から連絡があり、先ほどの罪で川上が死罪になったという事を上役から聞いた。儂は川上という男を知っているだけにその知らせに驚いた。儂が知っているのはここまでだ。」
「本当に?」
「誓って言おう。本当だ。」
「でも今の話では兄があなたを恨む理由がないじゃないですか。それに兄は父が死んだのは薩摩藩の計略にかかったからだって言ってましたが。」
「我が藩と川上がどう関係していたのか儂にはわからん。まさか川上の息子が儂の命を狙っていたなんて思いもせんかったぞ。」
「そうですか・・・・。」
「儂からも一ついいか、土岐。」
「ええ、何でしょう。」
「昔、川上の屋敷で僧侶に学問を教えてもらっていたのはお前か。障子の隙間からちらっとしか見えなかったが、その髪の色、他に儂は見たことがない。」
確かに自分の髪は日本人にしては色が茶色いと思うが自分は未来人、そこにいるはずがない。
「まさか。前にも言いましたが私には義父がいましたし、薩摩なんて行ったことないですよ。」
「だが、市彦を兄と言うではないか。」
「ああ、それは幕末、記憶を失っていた私を引き取った市彦が自分の事を『兄』だと刷り込んだものだから、そのまま兄と言ってるだけです。」
「そうか。」
「今の話ではまだ納得がいきません。他にも何か知っていることがあったら教えて下さい!例えば・・・・、会津戦争で兄を見たとか?兄はあの場所にいたんです。あなたの命を狙うために。兄は単独で動いていたから幕府軍と違う動きをした男がいなかったかどうか分からないでしょうか。」
「むぅ・・、十年も前の事。今になってどれほどの事が分かるか・・・・。」
「なんでもいいんです!」
「わかった、調べるように言っておこう。だが十年前の事だ、あまり期待はするな。」
「・・・・ありがとうございます。自分で言っておいていうのもなんですが、どうして私のお願いを聞いてくれるんですか?」
「一応、この間の礼もあると思ってくれ。娘の護衛で来ていたとはいえ儂は土岐に命を救われたのは事実。それに、実は娘もあれ以来ちょっと変わってな・・・。家の方はうまくいっておる。これもまあ、土岐のお陰だ。儂に出来る事があればやってみるわい。」
コホンと少し照れを隠すように言う川路。
武尊は思いもよらない川路の言葉に目を丸くし、少し胸が熱くなった。
「あ、ありがとうございます!」
武尊はこのとき川路に心から礼をした。
「それと土岐、もう一つ、なぜ実兄でもない者の事を知りたいのだ。」
「それは・・・・。」
武尊が言葉を詰まらせていると
「いや、すまん。武尊にどのような事情があるかわ知れんが、それは儂には関係がないことだな。」
と言うと川路は部屋を出て行った。
それは・・・どうしても聞きたいがあるから。
十六夜丸とは一体何なのか、と。
兄ならきっとそれを知っている。