蒼紫を見送って武尊は客間へ戻った。



そして蒼紫の残した湯呑を持つとそれを洗う為に台所へ行った｡



そこに時尾がいた。



「時尾さん、今、四乃森さん帰りました｡時尾さんによろしくお伝え下さいって言ってましたよ。」



と、武尊が湯呑を洗いながら時尾に言った。



「あ・・・ら・・、私気が付かなくてお見送りも出来ませんで・・とんだ失礼を・・。」



時尾は分かっていたのだが、見送りに行く気がしなかったのだ。



しかし、自分の推測で客に失礼をしてしまったことを悔いていた。



「ハァ・・。」



と、ため息をつく時尾は珍しい。



武尊は心配になって思わず、



「どうしかしたんですか？」



と武尊が聞くと、時尾は、はっと我に返ったような顔をして、



「いえ、何でも・・、あ、そうでしたわ武尊さん、お風呂湧きましたのでどうぞお入りになって。その間に夕餉の支度しておきますから。」



と武尊に言ってかまどに向かって竹筒を吹き始めた。



武尊は



（なんかちょっと避けられてる？）



と思いながらも武尊も時尾の顔を直視するにはまだ心の整理がつききってないので時尾に礼を言うとその場を離れるように風呂へ向かった。