武尊は表札を見上げ、ごくっと息を呑むと、いつものように裏へまわり



「ただいま帰りました－｡」



と勝手口を開ける。



「おかえりなさい、武尊さん。」



と、いつものように優しい微笑みで武尊を出迎えにきた時尾。



武尊は手に汗をかきつつ、時尾の姿を見た時、時尾が



「あら、武尊さん、こちらの方は？」



と、武尊の後ろを見ながら聞いた。



（あっ。）



武尊は藤田家へ着いた瞬間から気持ちが飛んでいて蒼紫の事は忘れていたのだった。



そういえば、家先で別れの挨拶をしていないと思ったらここまでついて来ていたの？！



と、思いつつ後ろを振り返るとそこには蒼紫の姿があった。



「初めまして。私は四乃森蒼紫というものです。武尊さんの友人でして、先ほど偶然にも武尊さんにお会いして、ちょっと足を痛めているようでしたので話がてら一緒に付いて参りました。」



と、蒼紫は自分を武尊が時尾に紹介する前に自らを紹介した。



武尊はそのトークに目を見開いてびっくりした。



（いつもの四乃森さんじゃない・・・・！しかもすごい営業トーク！うそ・・・ぉ。）



そうは思いつつも武尊は自分でも蒼紫を時尾に紹介した。



「この人が四乃森さん・・・・、私を京都から東京に連れてきてくださった人です。四乃森さん、こちらが時尾さん。藤田警部補の奥様です。」



「まあまあ、それは失礼いたしました。」



と、時尾が蒼紫に頭を下げる。



「折角いらしたのですからどうぞ上がってお茶でも。」



という時尾に蒼紫は



「すみません、では少しだけお邪魔いたします。」



と言って蒼紫は靴を脱ぎ始めた。



それを見て武尊は驚いた・・もんじゃないというほど驚いた。



（どうしちゃったの四乃森さん！？急に・・・。）



武尊の人間分析によれば、四乃森蒼紫という人間は、いつもなら無口のまま、絶対他人の・・・、しかも横浜で見た二人はお世辞にも仲が好さそうとは言えない、斎藤さんの家にあがるなんて事はあり得ない。



といつもの蒼紫ではないその行動に武尊は意味するところが分からず口を開けて蒼紫を見ていた。