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44.二十六夜待 (斎藤・夢主)

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「それはいいが、武尊。その恰好は何だ。俺の帰りを待って誘っていたつもりだったのか?」



と、斎藤がサラシ姿の武尊の姿を舐めるように見てニヤリとして言った。



武尊は斎藤のその視線に背筋がぞくぞくぞくっとかけ上がってくるものを感じつつも、



「なっ、何考えてるんですか!違いますよ!張の所から走って帰って来て大汗かいたから気持ち悪くて上着脱いだんですけど、そのまま寝ちゃったんです!」



と、武尊は顔を赤くして上着を手にした。



斎藤は、



「丁度いい、さっさと上着を着ろ。行くぞ。」



と言って扉へ向かった。



「は、はい!」



武尊は上着を着ながら斎藤の後を追っかけた。



歩きながら武尊



「あ、張、今日も『異常なし』って言ってましたので報告しときますね。」



「あ、ああ。」



中身のない報告なんて斎藤にとってはどうでもいいんだろうか。



斎藤の思いっきり流し返事にさすがの武尊もちょと張が気の毒になる。






そう思いながらどんどん歩く斎藤の後をついて行くように歩くと家と違う方向へ向かっていることに気がついた。



「斎藤さん、家、こっちじゃないんですか?二十四時過ぎたら時尾さん寝ちゃいますよ。」



武尊が言う。



「二十四時ならとうの昔に過ぎてるぞ。いいから来い。」



斎藤の『とうの昔』という言葉にショックを受ける武尊



(えっ-!お風呂が~!布団が~!明日の朝ごはんが~~!そっか、ちょっと寝たつもりが結構寝たってたんだ、私。)



ガーン、と思いつつも落ち込んでる暇などない。



どんどん進む斎藤に、もしかして仕事?と思い遅れないようについてゆく。







やがてどこかへ続く坂道に出て、そこを登ってゆく。



だけど武尊があれ?っと思うのはこんな夜更なのに何故だか人が出歩きまわっているということ。



まさか何か事件でも?と、思ったが、それにしては人々の顔が事件とは思えないぐらいニコニコしているし、あるものは赤い顔をして酔っぱらってるようだ。



疑問符を頭に浮かべながら坂を上りきると、そこは高台になっていて東京の街と海が見下ろせる場所だった。



だが、それ以上に武尊を驚かせたのが広めの高台に屋台がいくつも出ていて人々が集まり、なんと賑やかに飲んだり騒いだり・・・・。



予想だにしなかった状況に武尊は面食らって言った。



「斎藤さん、これ、いったい何?」



斎藤はそんな武尊の話を聞いているんだかいないんだか。



こっちだ、と武尊に指で合図をするので武尊は首をかしげながら斎藤の後をついて行く。



その先には蕎麦の屋台が。



何か言いたそうな武尊が口を開く前に斎藤が、



「かけ二つ。」



と注文する。



斎藤は武尊に、



「腹へってるだろう。」



と言うと




確かに。



夜更けまで起きていれば腹も減るし、結構な速さで歩きもすればなおさらのこと。



だけど、一体これは何?



と、斎藤に聞こうと武尊が口を開こうとすると、蕎麦が出てきて、斎藤が



「伸びるまえに早く食べろ。」



と、武尊に言った。



こんな時に話しかけても無駄か・・。



とりあえずいただこう・・・。





と、武尊もズルズルと蕎麦を食べる。



ようやく食べ終わって、今度こそ、と、武尊が口を開こうとすると、今度は斎藤が武尊の手を取って、



「こっちだ。」



と言った。





斎藤さんが手を?



武尊は驚きつつも、久しぶりにさわる斎藤の手の感触を愛しく思って、くっ、と、軽く握り返すと斎藤も武尊の手を握り返してくる。



斎藤のそんな小さな反撃に、心臓がドクっと反応する。



斎藤さんは普段ならこんなことはしない。



いったい、どうなってるの?



人ごみの中、手を繋いだ男と女。



恥ずかしいと思ったが、周りは陽気に騒ぐ人々で誰も斎藤と武尊のことなんか見ちゃいない。



そのまま斎藤に引っ張られ、着いた所は東京の街がよく見下ろせる場所。



まさか、こんな時代に夜景が見下ろせるなんて!



武尊は思わず、



「うわ~!街灯りがすごいね!文明開化って感じがする!」



と、目を輝かせて言った。



「そうだな、西洋の文化がかなり入って来たからな。・・・良くも悪くもこれが俺達が築いた新時代だ。」



斎藤が感慨深そうに呟いた。



「そうだね・・・・。」



斎藤の言葉の意味を思うとはしゃいでばかりもいられない気持ちになって、武尊は斎藤を見上げた。



街を見下ろす斎藤の横顔。



この人は今も闘っている・・・。



新時代を守るために・・・。



武尊は視線を再び眼下の街灯りに戻した。



でも、屋台はあるし、夜景はあるし、こんな楽しいイベント、この時代なかなかないぞ。



そう思った武尊は、



「こんなにいい所があるなら時尾さんも連れてくればよかったのに。」



と、ぼそっと言った。



すると次の瞬間、



「痛っ!」



斎藤からのげんこつが頭に落ちた。



何をする~!という抗議の目で武尊が斎藤を見ると、



「阿呆、今日は思い出に付き合え。」



と言って、その場に腰を下ろし煙草に火をつけ、眼下の灯りを遠い目で見下ろした。
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