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75.空耳 (左之助・恵・蒼紫・斎藤)
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「どうなさいました・・・・。」
カララララと、玄関を開けながら恵がそう言った先の相手が視界に入ると恵は言葉を飲み込んだ。
「斎・・藤・・・一・・・。」
目の前の男は恵をじっと見降ろすと、
「武尊はここにいるのか。」
と、聞いた。
最初恵は何故斎藤がここに来たのか見当がつかなかったが、斎藤の警官の服を見て、
「ま・・・まさか・・、武尊さんの上司ってあんたなの?」
恵は目を疑う様に、目の前に立つ男にそう言った。
「いるようだな。」
と、斎藤は言うと、靴を脱いだ。
「病室はこっちだったな。」
と、斎藤は呟くとスリッパをつっかけた。
「ちょ、ちょっと、待ちなさいったら!」
と言う恵の言葉に耳も貸さず斎藤は真っ直ぐ病室へ向った。
斎藤は川路に呼び出された後、最速で報告書を仕上げて帰宅の路についたのはいいが、昨日の神社に近い何件かの診療所へ寄ったが武尊はいなかった。
そこではたと思いついて来たのだがこの診療所。
そう言えばいつから四乃森は抜刀斎と仲がよくなったんだ。
合点がいく理由が思いつかないと斎藤は眉間にしわを寄せた。
ここは抜刀斎と懇意の診療所。
それに対しても斎藤はあまりいい感情を持っていなかったが、雪代縁の件では随分貸しを作ってやったのである意味こちらの要求も通りそうだと、そう考えた。
それにしても武尊はどうなった・・・・。
早く確認したい。
そういう思いが斎藤の足取りを速める。
廊下に灯りはついてなくとも片側が窓ガラスの廊下は外と同じ。
星明りがわずかに廊下に斎藤の影を落とす。
・・・スタスタスタスタスタ。
その足音の後をパタパタパタと、追いかける足音。
ガチャ。
病室のドアを斎藤が開けた。
(来たか・・・・。)
座禅を組んでいる蒼紫が目を閉じたまま意識を入り口に集中させると、斎藤も瞬時に自分に向けられた気配に反応して暗い病室の壁を睨んだ。
(四乃森・・・・。)
この男は間違いなくずっと武尊の傍にいたのだろう。
斎藤はベッドの横に立つと武尊を見下ろした。
恵が斎藤の斜め後ろから手灯りを武尊の顔が見やすいようにそっと照らした。
斎藤は右手の手袋を取ると手の甲を武尊の額に、そして首筋にそっと当てた。
そしてじっと武尊の顔を見下ろす。
相変わらず探りを入れるような厳しい眼・・・・。
だけど、剣さんといる時とは何かが違うその眼。
顔は決して微笑んではいないけど・・・・と、恵は今まで見たことがない斎藤の表情をみて内心戸惑った。
そして、その表情が斎藤の顔から消え、いつもの斎藤の顔に戻ると、後ろで座禅を組んだままの蒼紫に
「武尊の具合はどうなんだ。」
と、聞いた。
「あれからずっと気を失ったままだ。傷口は大分塞がっているようだったのでとりあえず軟膏と包帯で処置をしておいた。」
と蒼紫が答えると、
「お前が?」
と、斎藤が問いただすように聞きかえした。
「そうだ。俺と高荷恵で処置をしたが・・・・不服か。」
「いや・・・・。」
斎藤はそう言ったが、その声は明らかに不満気であった。
(だが、あの時は仕方がなかった、四乃森に任せるしかなかったんだからな。)
斎藤はそう思った。
(と、いう事は・・・・・・見られたか・・・・。)
斎藤は二十六夜待ちの夜に武尊を抱いたときにつけた無数の印を思い出した。
(まあいい・・・四乃森に武尊は俺の物だとこれでわかっただろう。)
そう思った斎藤は、
「二人とも少し席を外してもらおうか。」
と言った。
もちろんそれは武尊に口づけするため。
斎藤は武尊に口づけすることによりその温もりを感じ武尊が生きている事を感じたかったからだ。
だが、即答で、
「断る。」
と、蒼紫の声がした。
「・・・・・・・。」
斎藤は煙草をふかしながら蒼紫を見下ろした。
「寝ている武尊に何の用事だ。仕事の話なら気が付いてからでもよかろう。」
と、蒼紫は言った。
蒼紫にはもちろん斎藤が何を企んでいるかぐらいはすぐに分かった。
斎藤は無言で煙草を大きく吸うと恵の方を向き、
「明日も来れたら様子を見に来る。武尊を頼む。」
と言うと病室を出て帰って行った。
「あの斎藤が『頼む』だなんて言うなんて・・。」
恵は信じられない言葉に自分の耳を疑った。
(そう言えばこの男も武尊さんを担いできた日、手当の後私にお礼を言ったわよね・・・。)
その時も恵は信じられない言葉を聞いたものだと自分の耳を疑ったものだった。
私の耳っておかしくなったのかしら・・・。
どう考えてもこの二人からそのような言葉が出た事を未だ恵の脳が受け付けない。
それでもどうにか意識を現実に戻して恵は蒼紫に、
「あなた、斎藤がこの子の上司だって知ってたんだったら言って頂戴よ。さっき玄関を開けた時は心臓が止まるかと思うほど驚いたわ。」
と言った。
更に恵にしてみればあの斎藤が女性の部下を持つなんて全くもって信じ難い事だった。
「言ったところでどうなると言うんだ。遅かれ早かれ斎藤が来る事には変わりなかったんだ。」
「それはそうだけど・・・心の準備が・・・・ねぇ。」
恵がホゥ、とため息をついた。
(・・・・・なんか事情は複雑そうね。)
と、恵は察した。
そして怪我人が寝ている今、後はこの男に任せて自分は戻ろうと思った恵は、
「もし休むなら横のベッド使ってもいいわよ。あなたが風邪なんてひくとは思えないけど一応言っておくわね。私は明日は普通に診療もあるし、先生も帰ってくるから今日はもう休むわ・・・・おやすみなさい。」
と、言ってパタンと病室を後にした。
カララララと、玄関を開けながら恵がそう言った先の相手が視界に入ると恵は言葉を飲み込んだ。
「斎・・藤・・・一・・・。」
目の前の男は恵をじっと見降ろすと、
「武尊はここにいるのか。」
と、聞いた。
最初恵は何故斎藤がここに来たのか見当がつかなかったが、斎藤の警官の服を見て、
「ま・・・まさか・・、武尊さんの上司ってあんたなの?」
恵は目を疑う様に、目の前に立つ男にそう言った。
「いるようだな。」
と、斎藤は言うと、靴を脱いだ。
「病室はこっちだったな。」
と、斎藤は呟くとスリッパをつっかけた。
「ちょ、ちょっと、待ちなさいったら!」
と言う恵の言葉に耳も貸さず斎藤は真っ直ぐ病室へ向った。
斎藤は川路に呼び出された後、最速で報告書を仕上げて帰宅の路についたのはいいが、昨日の神社に近い何件かの診療所へ寄ったが武尊はいなかった。
そこではたと思いついて来たのだがこの診療所。
そう言えばいつから四乃森は抜刀斎と仲がよくなったんだ。
合点がいく理由が思いつかないと斎藤は眉間にしわを寄せた。
ここは抜刀斎と懇意の診療所。
それに対しても斎藤はあまりいい感情を持っていなかったが、雪代縁の件では随分貸しを作ってやったのである意味こちらの要求も通りそうだと、そう考えた。
それにしても武尊はどうなった・・・・。
早く確認したい。
そういう思いが斎藤の足取りを速める。
廊下に灯りはついてなくとも片側が窓ガラスの廊下は外と同じ。
星明りがわずかに廊下に斎藤の影を落とす。
・・・スタスタスタスタスタ。
その足音の後をパタパタパタと、追いかける足音。
ガチャ。
病室のドアを斎藤が開けた。
(来たか・・・・。)
座禅を組んでいる蒼紫が目を閉じたまま意識を入り口に集中させると、斎藤も瞬時に自分に向けられた気配に反応して暗い病室の壁を睨んだ。
(四乃森・・・・。)
この男は間違いなくずっと武尊の傍にいたのだろう。
斎藤はベッドの横に立つと武尊を見下ろした。
恵が斎藤の斜め後ろから手灯りを武尊の顔が見やすいようにそっと照らした。
斎藤は右手の手袋を取ると手の甲を武尊の額に、そして首筋にそっと当てた。
そしてじっと武尊の顔を見下ろす。
相変わらず探りを入れるような厳しい眼・・・・。
だけど、剣さんといる時とは何かが違うその眼。
顔は決して微笑んではいないけど・・・・と、恵は今まで見たことがない斎藤の表情をみて内心戸惑った。
そして、その表情が斎藤の顔から消え、いつもの斎藤の顔に戻ると、後ろで座禅を組んだままの蒼紫に
「武尊の具合はどうなんだ。」
と、聞いた。
「あれからずっと気を失ったままだ。傷口は大分塞がっているようだったのでとりあえず軟膏と包帯で処置をしておいた。」
と蒼紫が答えると、
「お前が?」
と、斎藤が問いただすように聞きかえした。
「そうだ。俺と高荷恵で処置をしたが・・・・不服か。」
「いや・・・・。」
斎藤はそう言ったが、その声は明らかに不満気であった。
(だが、あの時は仕方がなかった、四乃森に任せるしかなかったんだからな。)
斎藤はそう思った。
(と、いう事は・・・・・・見られたか・・・・。)
斎藤は二十六夜待ちの夜に武尊を抱いたときにつけた無数の印を思い出した。
(まあいい・・・四乃森に武尊は俺の物だとこれでわかっただろう。)
そう思った斎藤は、
「二人とも少し席を外してもらおうか。」
と言った。
もちろんそれは武尊に口づけするため。
斎藤は武尊に口づけすることによりその温もりを感じ武尊が生きている事を感じたかったからだ。
だが、即答で、
「断る。」
と、蒼紫の声がした。
「・・・・・・・。」
斎藤は煙草をふかしながら蒼紫を見下ろした。
「寝ている武尊に何の用事だ。仕事の話なら気が付いてからでもよかろう。」
と、蒼紫は言った。
蒼紫にはもちろん斎藤が何を企んでいるかぐらいはすぐに分かった。
斎藤は無言で煙草を大きく吸うと恵の方を向き、
「明日も来れたら様子を見に来る。武尊を頼む。」
と言うと病室を出て帰って行った。
「あの斎藤が『頼む』だなんて言うなんて・・。」
恵は信じられない言葉に自分の耳を疑った。
(そう言えばこの男も武尊さんを担いできた日、手当の後私にお礼を言ったわよね・・・。)
その時も恵は信じられない言葉を聞いたものだと自分の耳を疑ったものだった。
私の耳っておかしくなったのかしら・・・。
どう考えてもこの二人からそのような言葉が出た事を未だ恵の脳が受け付けない。
それでもどうにか意識を現実に戻して恵は蒼紫に、
「あなた、斎藤がこの子の上司だって知ってたんだったら言って頂戴よ。さっき玄関を開けた時は心臓が止まるかと思うほど驚いたわ。」
と言った。
更に恵にしてみればあの斎藤が女性の部下を持つなんて全くもって信じ難い事だった。
「言ったところでどうなると言うんだ。遅かれ早かれ斎藤が来る事には変わりなかったんだ。」
「それはそうだけど・・・心の準備が・・・・ねぇ。」
恵がホゥ、とため息をついた。
(・・・・・なんか事情は複雑そうね。)
と、恵は察した。
そして怪我人が寝ている今、後はこの男に任せて自分は戻ろうと思った恵は、
「もし休むなら横のベッド使ってもいいわよ。あなたが風邪なんてひくとは思えないけど一応言っておくわね。私は明日は普通に診療もあるし、先生も帰ってくるから今日はもう休むわ・・・・おやすみなさい。」
と、言ってパタンと病室を後にした。