斎藤が夕飯を食べていると傍にいる時尾が話しかける。



「五郎さん。」



「どうした。」



「武尊さんのことですけど・・・。」



斎藤は武尊の事と言われ、何かあっただろうかと思いつつ



「何かあったのか。」



と聞き返すと、



「私、・・・・武尊さんなら、五郎さんがお妾さんにしても私大丈夫だと思います。」



（あ？）



いきなり何を言い出すのだ。



斎藤は思わずサトイモが箸からすべって落としそうになった。



その時裏口から



「ただいま帰りました－｡」



と武尊が帰ってきた。



武尊はまずは今日の報告をしなくてはと、そのまま斎藤の所にやって来たが、何か微妙な空気を感じ、



「何かあったんですか？」



と言った｡



と同時に時尾も武尊の青くなった頬と切れた唇を見て



「何かあったんですか！武尊さん！」



と悲痛な声を出した。



「いや、これは大したことないんですよ。ほら、警察官だからちょっと訓練してたらこうなっちゃた。あはは。」




（・・・・・まあ、これを作った鬼教官はそこにいるんだけど｡）




と、ちらっと斎藤を見ると斎藤もちらっと武尊を見た。



「で、こちらは何か面白い事でも話してたんですか？」



「特に面白いという話ではない。武尊、煮物がまだ温かいぞ。先に夕飯を食べたらどうだ。」



と、斎藤がさりげなく話を逸らした。



「あ、本当だ、サトイモの煮っ転がしだ。食べます食べます！」



でも、とりあえず報告しなきゃと思い



武尊は、



「その前にまず、報告っと。藤田警部補、特に急ぎの書類はありませんでした。追加できた書類は机に置いておきましたので明日見ておいてください・・・と、そうだ、私が帰る間際に四乃森さんが来て何か藤田警部補に用事があったみたいだったんですけど、いないって言ったら帰りましたよ。また来るって。・・じゃ、手を洗って来ますね。」



斎藤は、ああ、わかったとだけ言い、武尊は夕飯を準備して
もらいおいしそうに平らげた。