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34. 私さえいなければ(斎藤・夢主)
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「武尊。」
斎藤は武尊の名を今一度呼んだ。
「お前はいったい何がしたい。十六夜丸がやったすべてのことを聞き出すことか。そんなことが不可能なことぐらい分かっているはずだ。聞けた話は良しとするものでも聞けなかった話の中にお前が愕然とすることがあったとしたらどう償う。」
武尊は斎藤の言葉に反論が出来ない。まさにその通りだからだ。
「結局、何が良くて何が悪いのかなど立場によって変わる。判断するのは武尊自身の正義だけだ。付け加えて今のお前に出来ることは二度と十六夜丸にされなないようにすることじゃないのか。」
武尊は握りしめていた拳を緩めて窓際へ行き、窓枠に手をつくと空を見上げた。
斎藤のいう事が正論過ぎて、何にも分かってなかった自分が情けなさすぎて、でも誰かに『お前が父ちゃんを殺したんだ!』とか言われるのが怖くて、それでも答えが出せない自分が弱すぎて・・
ポロっと涙がこぼれた。
その姿がガラスに反射して斎藤に見えた。
「武尊。」
「大丈夫です。斎藤さんの言う通りです。薬を飲んだ時に十六夜丸になるというのなら飲ませた方に理由があった。だから飲ませた兄に聞くのが一番いいんですよね。だから兄に会うまでは結論を急がないことにします。そしてこれから私がしなくてはいけないのは二度と薬を飲まないこと。・・あー、すっきりしました。ありがとうございました。」
すっきりしたと言うのに全然すっきりしてない武尊に斎藤はため息を一つ吐いて武尊を呼んだ。
「ちょっとこっちへ来い。」
斎藤に名前を呼ばれると条件反射的に寄ってしまう。
斎藤の横に来ると腕を掴まれ、
「ここだ。」
と、片膝の上に乗せられた。
いつもはそこで騒いだり照れたりする武尊だが今は大人しく斎藤を見ている。
そうとう落ち込んでいるな、と斎藤は一つ話をしてやることにした。
「武尊。とっておきの情報をくれてやる。俺の知っている限りでは十六夜丸 は命を奪うだけではなかったぞ。」
と言った。
「え・・?」
武尊は思いもよらない斎藤の言葉に目を見開いた。
斎藤はまだ涙の溜まっている目の縁を指で拭ってやる。
「俺は十六夜丸に命を助けられた。」
「え?」
武尊は信じられないとばかりに斎藤を注視する。
「これだ。」
と言って斎藤は武尊の左肩の傷の部分を指で軽く押した。
武尊がわからない、という顔をしているので斎藤は説明を続ける。
「会津戦争であいつは官軍の銃撃から俺を守って撃たれた。あの出血量を考えると俺はすっかり十六夜丸・・・・、つまり武尊は死んだとばかり思っていた・・・。」
武尊はただ目を大きくして斎藤の話を聞き入っている。
「十六夜丸が斎藤さんを守った?どうして?」
「さあな、理由は分からんがこれが事実だ。それにあいつは撃たれる少し前に、負傷した俺の仲間の怪我を治してくれたな。本人からは堅く口留めされたがもう時候だろう。」
「治す?治すですって?薬は・・、私は医薬品なんか持っていなかったですよ。」
武尊は何故か冷や汗が流れる。
「十六夜丸は単なる武尊の裏の人格などという事では説明がつかん。正体不明の”何か”だ。その不可思議な力できっと己も治癒させたんじゃないかと俺は思っている。唯一あいつを褒めるとしたらあいつのお陰で武尊も俺も今こうして生きて会えたという事だ。」
武尊は斎藤の話を聞きながら、
(いや、もし自分を治癒できたなら、私は未来へ帰らなくてもよかったはず。ではなぜ?)
と思った。
でもよくよく考えると、もし、十六夜丸が人知を超える存在だとしたら、信じられないけど、何らかの理由で私を未来からこの世界へ連れて来たり戻したりできるのも可能なのかもしれない。
タイムスリップの原因は十六夜丸・・・・。
時々頭の中に聞こえた声は十六夜丸の声・・・?
まさか。
まさか。
そんなことがあり得るなんて。
いろんな情報が武尊の頭の中をあちこちで点滅する。
分からない、今すぐには結論が出せない。
だけどやっぱり一つだけ真実があるとしたら、斎藤さんの言う通り、十六夜丸のお陰で私も斎藤さんも今を生きていられてるってこと・・・・。
そして再びこうやって出会えた事・・・・。
これが私にとっての奇跡・・・。
斎藤は武尊の名を今一度呼んだ。
「お前はいったい何がしたい。十六夜丸がやったすべてのことを聞き出すことか。そんなことが不可能なことぐらい分かっているはずだ。聞けた話は良しとするものでも聞けなかった話の中にお前が愕然とすることがあったとしたらどう償う。」
武尊は斎藤の言葉に反論が出来ない。まさにその通りだからだ。
「結局、何が良くて何が悪いのかなど立場によって変わる。判断するのは武尊自身の正義だけだ。付け加えて今のお前に出来ることは二度と十六夜丸にされなないようにすることじゃないのか。」
武尊は握りしめていた拳を緩めて窓際へ行き、窓枠に手をつくと空を見上げた。
斎藤のいう事が正論過ぎて、何にも分かってなかった自分が情けなさすぎて、でも誰かに『お前が父ちゃんを殺したんだ!』とか言われるのが怖くて、それでも答えが出せない自分が弱すぎて・・
ポロっと涙がこぼれた。
その姿がガラスに反射して斎藤に見えた。
「武尊。」
「大丈夫です。斎藤さんの言う通りです。薬を飲んだ時に十六夜丸になるというのなら飲ませた方に理由があった。だから飲ませた兄に聞くのが一番いいんですよね。だから兄に会うまでは結論を急がないことにします。そしてこれから私がしなくてはいけないのは二度と薬を飲まないこと。・・あー、すっきりしました。ありがとうございました。」
すっきりしたと言うのに全然すっきりしてない武尊に斎藤はため息を一つ吐いて武尊を呼んだ。
「ちょっとこっちへ来い。」
斎藤に名前を呼ばれると条件反射的に寄ってしまう。
斎藤の横に来ると腕を掴まれ、
「ここだ。」
と、片膝の上に乗せられた。
いつもはそこで騒いだり照れたりする武尊だが今は大人しく斎藤を見ている。
そうとう落ち込んでいるな、と斎藤は一つ話をしてやることにした。
「武尊。とっておきの情報をくれてやる。俺の知っている限りでは
と言った。
「え・・?」
武尊は思いもよらない斎藤の言葉に目を見開いた。
斎藤はまだ涙の溜まっている目の縁を指で拭ってやる。
「俺は十六夜丸に命を助けられた。」
「え?」
武尊は信じられないとばかりに斎藤を注視する。
「これだ。」
と言って斎藤は武尊の左肩の傷の部分を指で軽く押した。
武尊がわからない、という顔をしているので斎藤は説明を続ける。
「会津戦争であいつは官軍の銃撃から俺を守って撃たれた。あの出血量を考えると俺はすっかり十六夜丸・・・・、つまり武尊は死んだとばかり思っていた・・・。」
武尊はただ目を大きくして斎藤の話を聞き入っている。
「十六夜丸が斎藤さんを守った?どうして?」
「さあな、理由は分からんがこれが事実だ。それにあいつは撃たれる少し前に、負傷した俺の仲間の怪我を治してくれたな。本人からは堅く口留めされたがもう時候だろう。」
「治す?治すですって?薬は・・、私は医薬品なんか持っていなかったですよ。」
武尊は何故か冷や汗が流れる。
「十六夜丸は単なる武尊の裏の人格などという事では説明がつかん。正体不明の”何か”だ。その不可思議な力できっと己も治癒させたんじゃないかと俺は思っている。唯一あいつを褒めるとしたらあいつのお陰で武尊も俺も今こうして生きて会えたという事だ。」
武尊は斎藤の話を聞きながら、
(いや、もし自分を治癒できたなら、私は未来へ帰らなくてもよかったはず。ではなぜ?)
と思った。
でもよくよく考えると、もし、十六夜丸が人知を超える存在だとしたら、信じられないけど、何らかの理由で私を未来からこの世界へ連れて来たり戻したりできるのも可能なのかもしれない。
タイムスリップの原因は十六夜丸・・・・。
時々頭の中に聞こえた声は十六夜丸の声・・・?
まさか。
まさか。
そんなことがあり得るなんて。
いろんな情報が武尊の頭の中をあちこちで点滅する。
分からない、今すぐには結論が出せない。
だけどやっぱり一つだけ真実があるとしたら、斎藤さんの言う通り、十六夜丸のお陰で私も斎藤さんも今を生きていられてるってこと・・・・。
そして再びこうやって出会えた事・・・・。
これが私にとっての奇跡・・・。