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34. 私さえいなければ(斎藤・夢主)
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四乃森の話などすでに頭の中から消し去っていた斎藤は、そういうことだったな、と、横浜で武尊に再会した際、自宅へ連れてきた理由を思い出した。
ふん、ずっと俺の家に居ろ、と思いながら。
「そう言えば武尊、何故抜刀斎のところなんだ。」
すっかりその事を問うのを忘れていたと、斎藤が口に出した。
武尊も毎日がいっぱいいっぱいで斎藤さんにはお弟子さんの所の話はしていなかったと、
「師匠が抜刀斎さんの所へ行って話を聞いてこいって、それで東京に来ました。」
「師匠?武尊は陶芸家の弟子ではなかったのか。抜刀斎とどう関係があるんだ。」
斎藤が怪訝に思い問う。
師匠は一介の陶芸家ではない・・・・・と、そうそう言いふらしていいものか、一瞬迷ったが、斎藤がその気になればすぐ分かってしまう事、と思った武尊は、
「師匠は今は陶芸家ですけど・・・、昔、抜刀斎さんに剣を教えてたそうです。」
「比古清十郎か!」
斎藤ははっとして言った。
「で、抜刀斎に・・・・何の話を聞くんだ。」
「師匠は話を聞いてこいとだけしか言わなかったんですけど、たぶん・・・・、私が・・十六夜丸として犯した罪に悩んでいるというのを見透かして昔同じように人斬り抜刀斎と異名をとったというそのお弟子さんの生き様を見てこい、という事だと思うのです。操ちゃんの話だと抜刀斎さんの剣は【不殺の剣】だとか。」
武尊はそう言って目をつむった。
比古から言われた二つの枷のうち、一つだけを言った。
未来から来たという自分の素性については語りたくはなかった。
斎藤は武尊の話を聞いて、その抜刀斎はこの間までそれが原因で壊れていたと、武尊に言ってやろうかと思ったが今やそれは過去の話、斎藤自身も抜刀斎の【答え】とやらをまだ確かめていなかったのでここは黙っておくことにした。
「つまり、武尊の師匠というのは武尊が十六夜丸だと知ってこの東京に武尊一人放り出したというわけか。余程肝が据わってるんだな。」
「いえ。師匠に十六夜丸の名前は言ってなかったです。」
「だが抜刀斎は十六夜丸と殺りあった事があるぞ。」
「え。・・だって兄は最初は長州派だったんですよ。その後は打倒薩摩藩でしたけど。何で長州派の抜刀斎さんと殺りあうんですか。」
「さあな。俺がその場に丁度居合わせたのは維新志士の会合があるというタレこみがあり向かった現場だったというだけだ。」
「それって・・つまり向こうは私の顔を知っていると。」
「だな。お前はどこをどう見ても見た目は十六夜丸だ、目の色を除いてだが。」
「目の色?」
「十六夜丸 の目はまるで鮮血のような紅だ。」
「そうなんだ・・。」
武尊の目は日本人にしては薄い茶色に少しだけ緑が入ったように見える不思議な色だ。
「いくら同じ顔でも人間の目の色が変わるなどありえんからな。普通は同一人物だとは思わん。俺のようにお前のことを知っていなければな。後は抜刀斎の出方次第だな。」
「まあ、それでも送り出してくれたからには会うしかないですね。私が自分で答えを見つけなければいつまでも過去の自分から逃げることしか出来ないと分かってたんじゃないかと思います。でも、一番の問題は私自身が十六夜丸なのに、何をしたのかよく分かっていないという事です。幕末京都では・・・・。」
と言って、つい斎藤をちらっと見てしまった。
確かに隊士が何人か十六夜丸に殺られたな、と斎藤は記憶する。
「どうやら新撰組だけに対してじゃないみたいです・・・・。それに四乃森さんにも初対面ですごい顔で睨まれて、掴まれた手首があざになっちゃいましたし・・・。薩摩藩に対しても何かしてたみたいですから・・・・。でも私はもっと具体的に知りたい。斎藤さんもそうだけど詳しい事は教えてくれない・・・。」
「武尊はそんなに誰かの首が吹っ飛んだとか、胴からはらわたがはみ出たとか、そんなことが聞きたいのか。」
と、斎藤に言われ、一瞬ぎくっとするが、
「ううん、そんなんじゃない。最初は自分が殺してしまったり傷つけたりしたのだったらこの身に代えても償わなければ・・って思ってた。でも・・この間自分が人を殺した時、守れるのは自分だけだって思った時、私の最善はあれしかなかった。だから十六夜丸が何をしたか、ちゃんと聞いてから自分が考えたいの、良かったのか悪かったのか。十六夜丸は新撰組に対してどうだったの、斎藤さん。」
「阿呆、俺達新撰組の連中が十六夜丸に限らずそんなことで謝られたいとでも思うか。隊務で命を落とすことにいちいち相手が悪いという事自体士道に反する。幕末の時代に己の信念に基づいて闘った者達は皆覚悟の上だった。結果についてどうこういう者はない。だから十六夜丸の事についてはもう言うな。まして武尊には何の罪もないだろう。」
「それでもっ!」
と、武尊は斎藤の言葉を遮った。
「私さえ・・私さえいなければ・・・・、十六夜丸だって存在しなかったはずなのに、斎藤さんの仲間も、他の人々も死ななくて済んだはずなのに・・。」
「思い上がるなよ。殺られた方が弱かっただけにすぎん。」
思い上がりと言われて武尊はショックを受けた。
ふん、ずっと俺の家に居ろ、と思いながら。
「そう言えば武尊、何故抜刀斎のところなんだ。」
すっかりその事を問うのを忘れていたと、斎藤が口に出した。
武尊も毎日がいっぱいいっぱいで斎藤さんにはお弟子さんの所の話はしていなかったと、
「師匠が抜刀斎さんの所へ行って話を聞いてこいって、それで東京に来ました。」
「師匠?武尊は陶芸家の弟子ではなかったのか。抜刀斎とどう関係があるんだ。」
斎藤が怪訝に思い問う。
師匠は一介の陶芸家ではない・・・・・と、そうそう言いふらしていいものか、一瞬迷ったが、斎藤がその気になればすぐ分かってしまう事、と思った武尊は、
「師匠は今は陶芸家ですけど・・・、昔、抜刀斎さんに剣を教えてたそうです。」
「比古清十郎か!」
斎藤ははっとして言った。
「で、抜刀斎に・・・・何の話を聞くんだ。」
「師匠は話を聞いてこいとだけしか言わなかったんですけど、たぶん・・・・、私が・・十六夜丸として犯した罪に悩んでいるというのを見透かして昔同じように人斬り抜刀斎と異名をとったというそのお弟子さんの生き様を見てこい、という事だと思うのです。操ちゃんの話だと抜刀斎さんの剣は【不殺の剣】だとか。」
武尊はそう言って目をつむった。
比古から言われた二つの枷のうち、一つだけを言った。
未来から来たという自分の素性については語りたくはなかった。
斎藤は武尊の話を聞いて、その抜刀斎はこの間までそれが原因で壊れていたと、武尊に言ってやろうかと思ったが今やそれは過去の話、斎藤自身も抜刀斎の【答え】とやらをまだ確かめていなかったのでここは黙っておくことにした。
「つまり、武尊の師匠というのは武尊が十六夜丸だと知ってこの東京に武尊一人放り出したというわけか。余程肝が据わってるんだな。」
「いえ。師匠に十六夜丸の名前は言ってなかったです。」
「だが抜刀斎は十六夜丸と殺りあった事があるぞ。」
「え。・・だって兄は最初は長州派だったんですよ。その後は打倒薩摩藩でしたけど。何で長州派の抜刀斎さんと殺りあうんですか。」
「さあな。俺がその場に丁度居合わせたのは維新志士の会合があるというタレこみがあり向かった現場だったというだけだ。」
「それって・・つまり向こうは私の顔を知っていると。」
「だな。お前はどこをどう見ても見た目は十六夜丸だ、目の色を除いてだが。」
「目の色?」
「
「そうなんだ・・。」
武尊の目は日本人にしては薄い茶色に少しだけ緑が入ったように見える不思議な色だ。
「いくら同じ顔でも人間の目の色が変わるなどありえんからな。普通は同一人物だとは思わん。俺のようにお前のことを知っていなければな。後は抜刀斎の出方次第だな。」
「まあ、それでも送り出してくれたからには会うしかないですね。私が自分で答えを見つけなければいつまでも過去の自分から逃げることしか出来ないと分かってたんじゃないかと思います。でも、一番の問題は私自身が十六夜丸なのに、何をしたのかよく分かっていないという事です。幕末京都では・・・・。」
と言って、つい斎藤をちらっと見てしまった。
確かに隊士が何人か十六夜丸に殺られたな、と斎藤は記憶する。
「どうやら新撰組だけに対してじゃないみたいです・・・・。それに四乃森さんにも初対面ですごい顔で睨まれて、掴まれた手首があざになっちゃいましたし・・・。薩摩藩に対しても何かしてたみたいですから・・・・。でも私はもっと具体的に知りたい。斎藤さんもそうだけど詳しい事は教えてくれない・・・。」
「武尊はそんなに誰かの首が吹っ飛んだとか、胴からはらわたがはみ出たとか、そんなことが聞きたいのか。」
と、斎藤に言われ、一瞬ぎくっとするが、
「ううん、そんなんじゃない。最初は自分が殺してしまったり傷つけたりしたのだったらこの身に代えても償わなければ・・って思ってた。でも・・この間自分が人を殺した時、守れるのは自分だけだって思った時、私の最善はあれしかなかった。だから十六夜丸が何をしたか、ちゃんと聞いてから自分が考えたいの、良かったのか悪かったのか。十六夜丸は新撰組に対してどうだったの、斎藤さん。」
「阿呆、俺達新撰組の連中が十六夜丸に限らずそんなことで謝られたいとでも思うか。隊務で命を落とすことにいちいち相手が悪いという事自体士道に反する。幕末の時代に己の信念に基づいて闘った者達は皆覚悟の上だった。結果についてどうこういう者はない。だから十六夜丸の事についてはもう言うな。まして武尊には何の罪もないだろう。」
「それでもっ!」
と、武尊は斎藤の言葉を遮った。
「私さえ・・私さえいなければ・・・・、十六夜丸だって存在しなかったはずなのに、斎藤さんの仲間も、他の人々も死ななくて済んだはずなのに・・。」
「思い上がるなよ。殺られた方が弱かっただけにすぎん。」
思い上がりと言われて武尊はショックを受けた。