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30.お買いものについていく (比古・翁・時尾・夢主)
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「武尊を送り出してから早くも、二十日あまりか。」
比古は自分の作品を売りに町へ下りてきたついでに呉服屋へ寄る。
「あ、新津先生、出来てますよ。」
と、店の主人が奥から風呂敷包を持ってきて広げる。
中には比古の胴着が入っていた。
「先生は大きいからねぇ。寸法も特別だしねぇ。」
「すまねぇな、俺にはこの袖丈が着やすいんだよ。」
「ま、名のある陶芸家の方は細かい所もこだわりがあるってことで。」
「まあな、じゃ、亭主。お代はこれで。」
と、言って比古はそれを受け取り店を出ようとすると
「あ、先生、言うのを忘れておりましたが。」
と呉服屋の主人が比古を呼び止める。
暖簾に手をかけた所で比古が振り返ると
「あちらの方はもうしばらくかかりますが、大丈夫でしょうか。」
と、呉服屋の主人が言った。
「ああ、師走ぐらいに間に合えばいい。」
と言って店を出た。
たぶん武尊はすぐには戻ってこないだろう。
おそらく俺が言った期限ぎりぎりぐらいか・・・、比古はそう感じていた。
着替えは着ているものも合わせて二枚もあれば十分。
そう思っているにも関わらずもう一枚作ったのには理由がある。
あの夜、武尊が着ていた胴着を持って帰った後、比古はどうしてもそれを洗濯できないでいた。
かと言って自分が着ることもなく。
時折、夜、その胴着を自分の傍らに置き酒を飲みながら話しかける。
そしてその度に武尊の無事を祈るのであった。