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4.日記帳 (蒼紫・操・夢主)
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「あの日記の人・・・・。」
武尊はまた甲板にいた。
今日は空は晴れて海風も気持ちいいはずなのに日記の話が武尊の頭から離れない。
寝転がって空を見る。
悲しい話だと思う。
自分の夫を殺した男。
死ぬほど殺したいと思っていたその男を愛してしまったという事。
愛・・・か・・・。
その人の相手が今から会いに行くと言う師匠のお弟子さんだなんて・・・。
人斬りだったお弟子さん。
新時代が来て十年流れて・・何を思ったのだろう。
私も・・人を斬った。
でも理由も誰かも分からない。
でも私の所為で誰かが不幸になってるなら・・
どうする?命を差し出す・・?・・それが答え?
・・分からない。
ん、まてよ・・・。
さっき幕末の京都って言ったよね・・・。
緋村さんは京都にいた長州派維新志士だった人で・・人斬り・・。
「もしかして何処かで会ってる?」
無きにしも非ずな可能性に武尊の心臓がドドドドと鳴る。もちろん自分の記憶にないので会っているとすれば
いや待て待て。長州は敵じゃなかったはず・・でも薩長同盟で兄様の敵と同じグループになったから・・ええと・・。
考えてみても分からない。
でも武尊の気持ちはあの時の京都に向かう。
京都の夜を、今の自分として何度か過ごした。
お蕎麦の屋台の手伝いをしていた時、日が暮れるとそれまでの町の空気が一変して重く黒い濡れた空気に変わって一人で歩くのは恐ろしいと思ったことも何度もあった。
毎日どこかで血の雨が降っていたという・・・。
そう言えば、斎藤さんからも何度か血の臭いがしていた日があった・・・。
武尊の脳裏に突然斎藤の事が思い出された。
斎藤さんは幕末の動乱を生き残った・・・、っとネットにあったから、それが事実なら、今、この瞬間も日本のどこかで同じ時を過ごしているんだ。
元気かなぁ・・・。斎藤さん・・・・。
会えるものなら姿だけでも一目見たい・・・。
と思っていたら、
「武尊さん、見-つけ!」
船中を回った操はようやく武尊を見つけた。
「あ・・・操ちゃん。」
「どうしたの、何か元気ないよ。」
操は寝転んでいる武尊の横に立ち、上から覗き込んでそう言った。
「色々考え事を・・。」
「蒼紫様も座禅してるし、つまんない~。あ、でも日記渡して用事が片付いたらみんなと一緒に東京見物しようね~。楽しみだわ!」
そこで操がはたと気が付いて武尊に聞いた。
「そう言えば武尊さんの用事って何?緋村に会ってどうするの?」
「え。」
同じ人斬りとして、その後をどういう思いで生きているのかを聞きに行きます、、とは言えない武尊だった。なので、
「いや・・私田舎の出身なので比古さんにとりあえず東京を見て来いって・・東京には弟子がいるからて・・。」
と、言ってみた。
「同じ弟子でも緋村とこんなに違うのねぇ~。ま、仕方ないわね。緋村は飛天御剣流で武尊さんは陶芸だからね。まあ飛天御剣流は武尊さん程度では全然取得出来ないと思うけど。」
と、操が肩をすくめて首を横に振りながら言う。
「お弟子さんってどれくらい強いの?」
あの幕末の京都で生き残ったというのなら腕前はそれなりだと思うけど、と思いつつ操に聞いてみた。
「蒼紫様と同じぐらいじゃない、たぶん。」
「(四乃森さんってそんなに強いんだ・・)操ちゃんは、緋村さんのこと、よく知ってるの?」
「ええ、知ってるわ。だってこないだまで京都で戦ってたんですもの。そうねぇ、武尊さんが来るちょっと前ぐらいかな。」
「戦った?(戦い?喧嘩?試合?まさかまた・・)また、人を斬った・・の?」
京都で戦うという意味が分からず操に聞いた。
「ううん、緋村は振るうのは『不殺の剣』。」
「不殺の剣?」
「緋村の刀は逆刃刀なの。だから斬れないの・・・て、言っても死ぬほど痛いと思うけど。あはは。」
逆刃刀・・そんなものがあるのかと武尊は腕を組んで緋村と言われる人の人物像を想像する。
逆刃とはいえ真剣だとすると相手はもちろん普通の真剣・・そんなものでする戦いとは?『不殺の剣』といいい、そんな戦いといい、武尊には聞いたこともない話だった。
(そう言えば比古さんが『馬鹿弟子の所為で葵屋が半壊』とか何とか言ってたよね・・その戦いと何か関係があるのかなぁ・・)
「で、この間東京に帰ったのよ。緋村は神谷道場の居候で、薫さんっていう人がそこの師範代で、二人とも好き合ってるの・・って、武尊さん、人の話、聞いてる?ここ大事なところなのよ!」
「え、ああ、ごめん。ちょっと考え事したから聞いてなかった。で、操ちゃん・・・
その時大きな音を立て蒸気船が吠えた。
「もうじき着くのかな。」
武尊はまだ見ぬ東京の地に思いを馳せた。