夕飯は武尊にとってとても豪華なものだった。


しかも料亭の板前が作る料理は、出汁（だし）から切り方まで完璧！（花の形に切られた人参なんて美しいぐらいで。）


黒尉さん、白尉さん、お増さん、お近さんも面白くて明るい人で武尊の心配する【気】の方も全然気にならないくらいだった。


いつもの武尊だったらお腹いっぱいこのおいしい料理を堪能するところだが、武尊は少し箸をつけただけで・・。



「すみません、ちょっと体調が・・・。御馳走様でした。」



と言って部屋へ下がらせてもらった。



「土岐君ももっと食べないと操みたいに小さい胸のままじゃぞ｡」


「翁、お客様の前で止めて下さい。まったく助平なんだから！」


とお増に怒られる。


蒼紫は黙って食べていた。


「蒼紫様、武尊さん、どうしたのかしら。」


「寒くなってきたからな。出歩いて風邪をひいたのかもしれないな。」


「そうよね～。私達みたいに鍛えてないからねぇ。」




蒼紫は今日あったことは特に言うべきことでもないと思い適当に皆に付き合うと部屋へ戻っていった。




「ひゅ～、御頭がいると緊張するなあ。」


「一応翁が御頭を誘ったって聞いたけどまさか来るとは思わなかったわ。」


「心の傷が少しは癒えて来たのだったらいいんだけど。」


「蒼紫様を毎日元気づけている私のお蔭ね！」


「操ちゃんのは笑えない小話ばっかりじゃないの－！明日は少しはまともなネタにしてよね！」


「翁、ぼちぼち小唄でも歌いませんか。」


「そう言われるのを待っとったんじゃ。いくぞ十八番の・・・・。」




かくして夕餉は宴会と化しいつものごとく盛り上がっていった｡