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9.闇の間から覗く視線 (比古・夢主・翁・お近・十六夜丸・操)
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翌朝早朝、武尊は座禅を組んで自分に暗示をかけるように心の中で呟いた。
(この世界には私をクローンだと知る人は比古さんを除いていない・・・大丈夫、私は”人間”を演じてみせる・・私は普通の”人間”・・これまで通りの土岐武尊・・・・。)
「爺や~。おはよぅ~。」
操が片手を口に当て片手を伸ばし伸びをしながら居間に来る。
「操、おはようじゃ--!」
「あれ?」
操の目が一人の見知らぬ人物に留まる。
「爺や、この人誰?」
「ああ、昨晩比古殿が連れてきた・・・。ありゃ、名前をそう言えば聞いてなかったのぅ。」
「あ・・・土岐、土岐武尊です。よろしくお願いします。」
「え-!比古清十郎が来たの?なんで?あんたいったい何者?」
矢継ぎ早に質問を浴びせる操。
「いやぁ・・・あの・・・・。」
「これ、操。お客様の前でみっともない。早く朝餉を済ましてきなさい。」
「は~い。」
操が勝手場へ向かう。
「あれが操じゃ。先代の孫娘でのぅ・・。」
「元気な方ですね。」
武尊はにっこりして言う。
「そうじゃ、土岐殿、京都は初めてかの?」
武尊は何と言おうかとちょっと躊躇したがもしかしたら自分の顔をどこかで見た人がいたらまたややこしいことになると思ったので
「いえ、以前に少し来たことがあります。」
と言った。
これなら嘘にならない。
「その時も色々見て回ったと思うがの、京都は何度来ても見るべきものは多い。・・・どうじゃ、儂と操とどこか見物でも行かんかね。」
元の世界で京都観光が途中で頓挫したのを武尊は残念に思っていた。
京都巡りという人参を馬に見せた時のように目の前に美味しいものをぶら下げられると好奇心が疼くが、人に対する恐怖というのがまだなくなったわけではない。
ここに座って平静を保っているようにするのも結構無理をしているのが自分でも分かる。
「行きたいのは山々ですが、実は私手持ちのお金が一切ないので今後どうしようかと思っていたところなんです。こちらのご厚意でただで泊めていただいて食事もいただいて、東京まで送っていただくというのに、もうこれ以上はダメです。」
そう言えば旅費とか全然もらってないのにどうしようと武尊は今更思うがこれから山に帰るなんて言えない。
「土岐君、比古殿には本当に本当に世話になった。その恩人の顔を立てるのも儂らの務め。見物ぐらい気にしないで楽しんで欲しい。」
(ううっ。)
比古の名を出されると断れない。
「よろしくお願いします。」
「うむ。」
翁は満足気に頷いた。
「翁さん、もしよかったら、清水寺に行ってみたいです。」
「うん?何かあるのかな?」
「いえ、行ったことがないので・・(だから行ってみたいんです。)ただそれだけなんですが・・・。」
「おお、ええじゃろう、では東山方面でいろいろ考えるとするか。」
食事を終えた操が翁の揚揚とする声を聞きつけ部屋に顔を出した。
「爺や、なんだって?」
「おお、操。これから客人と清水寺方面に見物に行くぞい。」
「やった-!さすが爺や!」
「こないだの緋村君の時はすっぽかされたからのぅ~。」
と、楽しそうに小躍りする二人。
「では私、出発前に厠に行ってきますね。」
武尊が立ち上がって部屋を出ようとした時である。
早朝から禅寺へ行っていた蒼紫が帰って来て廊下でぶつかりそうになった。
武尊は蒼紫の足音が聞こえなくて人が歩いていると思わなかった。
目が合う二人。
ぶつかりそうになってすみません・・・と、
武尊が言おうとした矢先、蒼紫の目の色が変わり
「貴様・・・・っ!」
そう言うと蒼紫は反射的に武尊の左手を掴み、ぎりりと絞りあげた。
(この世界には私をクローンだと知る人は比古さんを除いていない・・・大丈夫、私は”人間”を演じてみせる・・私は普通の”人間”・・これまで通りの土岐武尊・・・・。)
「爺や~。おはよぅ~。」
操が片手を口に当て片手を伸ばし伸びをしながら居間に来る。
「操、おはようじゃ--!」
「あれ?」
操の目が一人の見知らぬ人物に留まる。
「爺や、この人誰?」
「ああ、昨晩比古殿が連れてきた・・・。ありゃ、名前をそう言えば聞いてなかったのぅ。」
「あ・・・土岐、土岐武尊です。よろしくお願いします。」
「え-!比古清十郎が来たの?なんで?あんたいったい何者?」
矢継ぎ早に質問を浴びせる操。
「いやぁ・・・あの・・・・。」
「これ、操。お客様の前でみっともない。早く朝餉を済ましてきなさい。」
「は~い。」
操が勝手場へ向かう。
「あれが操じゃ。先代の孫娘でのぅ・・。」
「元気な方ですね。」
武尊はにっこりして言う。
「そうじゃ、土岐殿、京都は初めてかの?」
武尊は何と言おうかとちょっと躊躇したがもしかしたら自分の顔をどこかで見た人がいたらまたややこしいことになると思ったので
「いえ、以前に少し来たことがあります。」
と言った。
これなら嘘にならない。
「その時も色々見て回ったと思うがの、京都は何度来ても見るべきものは多い。・・・どうじゃ、儂と操とどこか見物でも行かんかね。」
元の世界で京都観光が途中で頓挫したのを武尊は残念に思っていた。
京都巡りという人参を馬に見せた時のように目の前に美味しいものをぶら下げられると好奇心が疼くが、人に対する恐怖というのがまだなくなったわけではない。
ここに座って平静を保っているようにするのも結構無理をしているのが自分でも分かる。
「行きたいのは山々ですが、実は私手持ちのお金が一切ないので今後どうしようかと思っていたところなんです。こちらのご厚意でただで泊めていただいて食事もいただいて、東京まで送っていただくというのに、もうこれ以上はダメです。」
そう言えば旅費とか全然もらってないのにどうしようと武尊は今更思うがこれから山に帰るなんて言えない。
「土岐君、比古殿には本当に本当に世話になった。その恩人の顔を立てるのも儂らの務め。見物ぐらい気にしないで楽しんで欲しい。」
(ううっ。)
比古の名を出されると断れない。
「よろしくお願いします。」
「うむ。」
翁は満足気に頷いた。
「翁さん、もしよかったら、清水寺に行ってみたいです。」
「うん?何かあるのかな?」
「いえ、行ったことがないので・・(だから行ってみたいんです。)ただそれだけなんですが・・・。」
「おお、ええじゃろう、では東山方面でいろいろ考えるとするか。」
食事を終えた操が翁の揚揚とする声を聞きつけ部屋に顔を出した。
「爺や、なんだって?」
「おお、操。これから客人と清水寺方面に見物に行くぞい。」
「やった-!さすが爺や!」
「こないだの緋村君の時はすっぽかされたからのぅ~。」
と、楽しそうに小躍りする二人。
「では私、出発前に厠に行ってきますね。」
武尊が立ち上がって部屋を出ようとした時である。
早朝から禅寺へ行っていた蒼紫が帰って来て廊下でぶつかりそうになった。
武尊は蒼紫の足音が聞こえなくて人が歩いていると思わなかった。
目が合う二人。
ぶつかりそうになってすみません・・・と、
武尊が言おうとした矢先、蒼紫の目の色が変わり
「貴様・・・・っ!」
そう言うと蒼紫は反射的に武尊の左手を掴み、ぎりりと絞りあげた。