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282.長い夜、長い物話(1)(比古・夢主)
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「あのね・・。」
武尊は覚悟を決めて話し始めた。
比古は武尊の気持ちを受け止め、最初から最後まで聞く覚悟を持って耳を傾けた。
「昔むかし・・。」
「は?」
武尊の語りだし早々に思わず比古は話を制した。
「待て。せいぜい遡っても武尊が最初にこの時代に来た十三年前、若しくは武尊が生まれた二十数年前の話じゃないのか?どこまで遡るんだ。」
「うん、先ず、この話の原点を話そうと思って・・。比古さん、十六夜丸って覚えてる?」
「覚えてるもなにも、さっきのアイツだろう。そういえばアイツはどうなった?」
「死んだよ・・いや、消えて・・いや、・・彼は最後に救われて愛しい人の元へ帰ったの。いまいち状況がわからないと思うから事の起こりから話すね。昔むかし、といっても聖徳太子の時代のもっと前まで遡るんだけど・・」
聖徳太子と聞いてどこまで時代を遡るんだと比古は内心驚いた。
武尊は十六夜丸に連れていかれた遠い過去の世界を思い出しながら、
「比古さん、聖徳太子って知ってる?」
と、聞いた。教科書や義務教育もない時代、比古がその名前を知らないと説明の仕方を変えないといけないからだ。
「嗚呼、知ってるぜ。」
「よかった!」
ひとまず安心したものの聖徳太子がメジャーな存在かは気になるところだ。
「たいていの人が知ってるのかな?」
「まあ聖徳太子が縁の寺はそれなりにあるからな。明日香や斑鳩だけでなく大坂の四天王寺や近江の国にも多いと聞いたぞ。」
「そうなんだ!」
滋賀県にもあるなんて初耳だと驚いていると逆に比古から続きを催促された。
「で、聖徳太子がどうしたんだ?」
「聖徳太子が宮を建てた斑鳩の土地にずっと前からその地を守る神様がいたの。その神様は十六夜の大きな月の夜に月の光を集めて生まれたすごくきれいな神様だったの。本当の名前は十六夜雷大神。」
「あいつか!」
「うん・・」
比古は十六夜丸の名前に驚いた。だが神だというのなら得体の知れない力にも納得がいく。だが何故神が武尊にという疑問が湧き話の続きに興味を持った。
武尊はあの夜の映像を思い出しながらまた話し始めた。
「十六夜丸は名前の通り雷の神でもあったの。だから斑鳩はとても豊かな土地だった。そこにある時、若かった聖徳太子が・・その時は厩戸皇子って呼ばれていたけど・・その豊かな土地を視察に来てとても気に入ってそこに宮を建てたの。厩戸皇子には不思議な力があって、普通の人に見えないものも見えたし動物の話も分かったんだって。」
「ほぉ。」
比古は軽く相槌を打った。
「ある夜、祈りを捧げている十六夜丸を厩戸皇子が見つけて話かけたの。十六夜丸は人間に話しかけられてびっくりしていた。祈りの邪魔をしてほしくないと最初は皇子のことを疎ましく思っていたんだけど、何度も声を掛けられるうちに心を開き、いつの間にか十六夜丸は厩戸皇子のことを気に掛けるようになっていたの・・。」
武尊はふう、と息を吐いた。
「でも神様と人間、時間の流れが違って、あっという間に厩戸皇子も青年からひげを生やして歳をとって体も弱くなってしばらく十六夜丸に会っていなかった。
心配した十六夜丸はついに自分から厩戸皇子の元に会いに行ったんだけどその夜、十六夜丸が見たのは臨終間近の皇子の姿だった。病気とか自然死だったら良かったんだろうけど、厩戸皇子を死に向かわせたのは妻の呪詛だった。皇子には悪気はなかったんだけど、信頼する十六夜丸に水晶の首飾りを用意していたことを妻が知って、他の女に貢物をすると思い込んでそれが許せなくて呪詛をかけた。
呪詛をやめさせる前に皇子が亡くなったから十六夜丸が怒りで妻を殺めたの。妻も鬼のように怒り狂ってて殺される前に爪で十六夜丸の顔をえぐった。その傷が三本こうやって残った・・。」
と、武尊は自分の右頬に手をやった。
今自分にその傷痕がないことをまだ武尊は知らない。
「神が人を殺めたことで更に上の神様から神としての存在をはく奪され、罰として雷を落とされて十六夜丸の身?神様だったから人間みたいな肉体じゃないんだろうけど離散して、また形作るまで何十年かかかって・・。再びこの世に覚醒した時、人間に騙されて呪術の式神にされてしまったの。」
「そうか・・。」
「うん。その時に使ったのが十六夜丸を吸収した頭蓋骨を粉末にしたもの。それを術者の血を混ぜて依り代に飲ますと十六夜丸が憑依して術者の命令を実行する、ということだった。でも何度も、何十年もそういう呪術を使っているうちに骨の粉が無くなりこの呪術も忘れられていったんだけど・・偶然というかある出来事が起こった。」
ここで武尊がよいしょと腕を伸ばし、布団から出ようとした。
「どうした。」
「水が欲しい、水分が足りてない。」
「そうか。夜はまだ長い。ゆっくりいくか。」
比古は巻き付けていた腕を解放すると武尊は布団から抜け出して水瓶の所に行った。
比古も起きだすと薪を足した。
「ねぇ、比古さん。寝間着着ていい?」
「いいんじゃねぇか。だいぶ温まったようだしな。俺も上衣を羽織るかな。」
比古は脱ぎ捨てた上衣を羽織り、武尊はリックから寝間着を出して着た。
比古は先に布団に戻るとあぐらをかいて戻ってきた武尊をその中に入れた。
「寝て喋るのも疲れるだろ、とりあえず背中あずけて気楽に話しな。」
「ありがと。寝てるとだんだん眠くなるからこの方がいい。だけど比古さん寒くない?」
「問題ない、ありがとな。」
武尊は掛け布団を胸まで引き上げ、武尊は続きを話し始めた。