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288.長い夜、長い物話(6)(比古・夢主)
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「以前東京で誰かにつけられていたこと。時尾さんを巻き込んでまで私が狙われたこと。そして会津での尾行。
もしかしてそれらを企んだのは九条ではないかと蒼紫と話し合いました。
だから東京へ戻った時に一般人を巻き込まないためにも神谷道場に泊めてもらおうということになりました。
まぁ、私の薬も取返しに行かなければいけなかったので都合がいいと言えばそれまでなんですが・・。気まずさはありますよね。
蒼紫が緋村さんに話をつけて泊めてもらうことが出来たのですが、井戸で身体を拭いている時に弥彦君に上半身を見られました。
まあ、女とバレたわけでして・・。別に意図的に隠しているわけではなかったのですが、私としては自分が男でも女でも【土岐武尊】であってそれ以外の何者でもないと思っているのですが、緋村さんは私が女だと知ると手のひらを返したように態度を変えて・・それが、すみません比古さん、本当に許せなくて最後まで打ち解けることが出来ませんでした。
でも女だとばれてから私が十六夜丸だという観念が緋村さんの中で薄れたのは感じました。おかげで何とか薬箱から薬を回収することが出来たのは良かったです。心臓が縮む思いでしたよ・・。
翌日、蒼紫が会津で会った九条の事を調べに行った日、一人で部屋にいると緋村さんがやって来て、結果、少し話を聞けました。
最後の最後に話が聞けたというか、緋村さんは師匠が私を自分の所に寄越した理由は察したみたいで、奥義を受けた時の事や、今尚、逆刃刀を振るう理由を話してくれました。
その時、予定日よりも早く海軍少尉が道場にやって来ました。
急ぎだというので一緒に行った所、行先が横浜で、先日の短銃の売り手のロシア船が予定より早く着いたという事でした。ロシア船内で相手は日本に売らないとか言い出して困った海軍少尉がお金ならもっと出すからと上役に話をするために一旦下船をして、私は人質みたいに船に残されました。
何で私が海軍の為にそこまでしなくちゃいけないんだ。と、思っている間に何故か船が出発して驚きました。
このままロシアに売られる、日本には戻れないかもしれないと覚悟をしました。
でも、驚いたことに、その船にマーティンと何故か
本当に何で?って。
まぁ、マーティンは故郷がオランダなのでオランダへ行く船にこの船を選んだとしても、どうして一がって。
詳しくは、というか、全然理由は教えてくれなかったけど、ともかく神戸で二人とも下りて、偶然にも張が大坂で商売してたからそこに一泊して一とは別れて、張と一緒に神戸から陸蒸気に乗りました。
張は大坂で下りて私はそのまま京都へ向かった。
船の中で一が神谷道場に置いてきた私の荷物について、蒼紫なら私がロシア船に乗っていった事を海軍から突き止めて京都に持って帰ってくるから神谷道場まで戻る必要はないと言ったから、後で葵屋に取りに行こうと思ったけど、葵屋へ行くと操ちゃんもいるし、なんかややこしくなりそうだからと、最初は一人で昔に住んでいた所とか、兄の手掛かりがないかもう一度探してみる事にした。
でも嵐山の隠れ家は畳まではがされて地面を掘り返してあった。
誰が何のためにと思いつつ、最初に記憶がない時に住まわされていた屋敷に行ってみると、お屋敷は跡形もなく洋館に建て替えられていてそれにも驚いた。
だけどその時、昔お屋敷にいたお坊さんの安西の顔が会津で見た九条と同じことに気が付いて呆然とした。
九条は東京でいつの時点かは分からないけど私の事を知った。だから私を利用するために捉えようとしていた。
そう考えれば今までのことは説明がつく。だけど相手は明治政府内務省社寺局の役人。私の方が立場が弱い。京都は公家の九条にとって庭みたいなようなものだとしたらどこに手下がいるかも分からない。
どうしようかと悩んでいたら足はいつの間にか葵屋へ向いていました。
でも、これ以上蒼紫に手間というか、手を煩わせたくないと思ったし、操ちゃんがいると【友】として蒼紫と接してても気まずいし・・でももし蒼紫が荷物を持って来て帰って来てくれるなら受け取りたいし・・と、ぐるぐる悩んでずっと葵屋へ入ることが出来ませんでした。
そのうち雨が降って来て・・ずぶ濡れになりながら店の前で立っていると傘を差して帰って来た蒼紫と鉢合いました。
彼に腕を掴まれ、風呂に連れて行かれ即座に入るように言われました。
お陰様で温まり、葵屋の皆さんに挨拶をしました。荷物を受け取ったらすぐ葵屋を出ようと思ったのですがコートもずぶ濡れだったので部屋を用意してもらい泊まることになりました。
荷物は
でも、
服もずぶ濡れだったし、刀も返してもらえないし、
そして、蒼紫に相談したいこともあったけど言えなくて
結局そのまま葵屋にお邪魔することになったんです・・。」
2026.5.28