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287.長い夜、長い物話(5)(比古・夢主)
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「・・まだ何も言ってないだろう。」
比古がジト目で武尊を見る。
「え?言いませんでしたっけ?・・何かそういう圧を感じて。」
「で、どうして一緒に帰らなかったんだ。」
「それは・・もちろん、あれ、あれですよ。」
「”あれ”って何だ。」
比古と武尊は目を合わせたまま、沈黙する。
「・・比古さん、分かってて言ってますよね?」
「推測はするが、武尊の話をちゃんと聞くまで分からんだろう。」
くぅ~、と思いつつも、
「そうですよ、時尾さんが帰っちゃったらしばらく夫婦の営みできないでしょ。私なりに気を利かせたんです!」
と言って、お茶をズズズ~と飲んだ。
淡々と話しているのならいいんだけれども、改めて言うと恥ずかしいじゃないですか!と、武尊の心の中。
「で、翌早朝、張に起こしてもらって川路が借りてきてくれた兄の所持品を持って張と一緒に藤田家へ戻りました。
張にはその所持品を会津に返しに行ってもらうのと一緒に時尾さんの護衛もお願いしました。
時尾さんを見送った後、斎藤さんと一緒に警視庁へ行って川路に所持品を返却させました、と報告したあとそのまま横浜へ行きました。
乗る船の確認だとかいろいろ。私が行く必要性があるかな、と思ったので聞いてみると、ちょっとした休暇だと思えばいいって。
上司がいいって言うならいいのかなって。
物珍しさもあって街を楽しんでいたらそのまま横浜に泊まることとなりました。
斎藤さんは横浜と東京を何回か行き来しましたが、私は横浜で残りの数日を過ごしました。
そこで私は、もう二度と会うことはない、愛しい人へ私の気持ちをすべて伝えました。
彼も沢山想いを伝えてくれました。
船の出航間際、最後に私から白いマフラー・・襟巻を送りました。北海道はこれから寒い冬だから使ってくれると嬉しいなと思って。
彼からはあの刀を譲り受けました。」
そう言って武尊は斎藤から譲り受けた刀を見た。
「彼が戊辰戦争の時もずっと差していたいた脇差だそうです。これを手渡してくれながら『生きろよ。』と言ってくれました。」
比古さんの前だからダメなのに、と思うも、その時を思い出すとこみあげてくる想いで喉が詰まりそうになる。
武尊は大きく息を吸い込み、吐き出す息の勢いでなんとか続きの言葉をつないだ。
「・・彼の乗った船が遠く見えなくなってもしばらくその場に立ち尽くしていました。
・・横浜に着いてからのことが走馬灯のように思い出されて、・・私は藤田夫婦から、家族の温かさを知りました。斎藤さんから決して揺るがない信念を教えてもらいました。
張や蒼紫にも良くしてもらって、助けられて・・沢山の思いが詰まった一か月でした。
しばらく港から動けなかったのですが、それでも帰らなくちゃと思い頭のなかが色々な思いでいっぱいのまま帰路につきました。
・・ねぇ比古さん、また薪を足していい?」
武尊は少し炎の弱くなった囲炉裏に細めの薪を数本足した。
まだ話は半ば・・。
足した薪の木の皮が焦げ、細く黒く上がる煙。
臭いや煙を五感で感じることで、自分が生きているのは嘘じゃないとは思う反面、東京の話をしていると今こうして比古のもとにいるという事がまた何かの幻ではないかという気がしてきた武尊だった。
2026.4.18
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