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287.長い夜、長い物話(5)(比古・夢主)
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「その翌日は、斎藤さんは引越しの準備があったので、先に一人で出勤しました。
折よく、蒼紫が神谷道場に置いてきた重箱を持って来てくれたので助かりました。その時蒼紫は『近々京都に帰る』と言いました。
蒼紫は仮埋葬した部下を京都に連れて帰るのに山の土が凍る前に帰ることにしたんだと思います。
そういう話を入院中に少ししたので・・。
東京へ来た時こそ、緋村さんと話をしたらすぐ帰るものだと思っていた私ですが、十六夜丸の事を明らかにするために兄探しをすることを決めた後は蒼紫が京都へ帰ってしまうことはちょっと寂しい気はしましたけど、お別れの時なんだと思いました。
そこで斎藤さんが出勤してきたので、蒼紫は斎藤さんに会わないように帰りました。
その日の夜、斎藤さんは北海道開拓使から来てた人を囲んで飲み会があるっていうことで私は普通に帰って、時尾さんと楽しくお話してその日は終わりました。
翌日・・。」
話をしていた武尊の声のトーンが変わる。
思い出したくもない、時尾さんを傷つけたあの忌まわしい事件のあった日の話。
それでも武尊は冷静にと、気を取り直して話を続けた。
比古はそんな武尊の様子を静かに見守りながらまた盃をあおった。
「翌日の午前中は私の傷の診察の日だったんです。
背中を強打して傷が開いてたから、恵さんに怒られました。
それでも経過は概ね良好で無理せず頑張ってね、という事で私の怪我はひと段落着きました。
私は恵さんを女医として信頼してますし、薬にも詳しいので隠し持っていた”薬”の分析を内緒でお願いしました。
恵さんは『今じゃなくていいなら。』と引き受けてくれました。
その日の夕方、時尾さんに誘われて時尾さんのお茶の習い事に一緒に行きました。
もちろん彼女の夫で私の上司の許可済みです。
診療所に行くと半日はつぶれるし、私の傷の完治もまだなので仕事もたいして出来ないのでいいだろう。って。
出かけた先は元長州藩が使用していたというお屋敷でした。
元長州藩っていうだけで凄く嫌な感じを受けたのですが、時尾さんのお供なのでそういう感情は抑えてお屋敷に入りました。
時尾さんは家元から直々に手ほどきを受けるという事で私とは別間でした。
何で私が誘われたかというと、家元がお茶のことを知らない人にお茶を少しでも広めたいのでどなたかいませんか、と時尾さんに声をかけていたそうです。で、誘ってくれたんです。
別間に通されると、すぐに男の人がお菓子を持って来てくれました。
お茶の時のお茶菓子は別にあるので食べててください、て言われて嬉しかったのですが、丁度その部屋の下には庭の池が引き込まれるような造りになっていて、そこに泳いでいる立派な鯉に自分が食べる前にそのお菓子をちょっと千切ってあげたんです。
そうしたらお腹を上にして動かなくなって、『え?』っと思って、別の鯉にもあげてみたら、やっぱり同じで死んじゃって。
その瞬間、ポケットにそのお菓子を入れて時尾さんを探しに走りだしていました。
時尾さんを見つけた時はお茶菓子をまさに口に入れようとしたところだったので茶菓子を蹴飛ばしました。
時尾さんは唖然として私を怒りましたが、お菓子に毒が入っていたことを説明すると信じられないと驚いていました。
相手は最初は毒入り茶菓子のことを胡麻化そうとしてましたが、すぐに毒じゃなくてしびれ薬を入れたことを認めました。
本当は私のお菓子にだけしびれ薬が入っていて時尾さんには稽古が終わったら帰ってもらうつもりだった、って言った。
という事はこれは私を捉えるための罠だった。
家元は私が女だっていう事もあの薬の事も知っていた。
計り事がバレたから時尾さんも帰すわけにはいかないって言ったのを聞いた時は怒りで恐怖なんかなかった。
絶対に時尾さんだけは無事帰さないと、と思って先に時尾さんを部屋から逃がして、私達を捕まえようとしてきた奴らと戦った。相手も素手だから何とかなった。
その時時尾さんの悲鳴が聞こえて、駆け付けたら時尾さんは倒れて、その傍に私にお菓子をくれた男の人が立っていた。
その人はさっきの人達と武術のレベルが違って気が抜けなかったけど、その人と追いかけてきた家元と先生の三人も何とか倒して意識がない時尾さんをおんぶして家に帰った。
・・少なくとも家元は殺しました。私はこの時本当に怒ってたから”オーラ”のほうも高ぶってて・・普段は絶対しないオーラの放出を使いました。オーラで家元の心臓に衝撃を与えたんです。そうすると心臓は不規則にけいれんし、やがて止まる・・これは未来の医学知識です。
もう、間違いなく私は人殺しです。
でも、これについては絶対謝らない。
家に帰って時尾さんを布団に寝かせました。
この時代はただ横で見守ることしかできなくて・・自分のせいで時尾さんが死んだらどうしよう、どう償えばいい・・
そればかり考えて泣いていました。
斎藤さんが帰って来て時尾さんの意識が戻り、安心しました。
どうやら大きなたんこぶだけで済んだみたいでした。
翌朝驚いたのは、時尾さんが会津に帰る日が前倒しになり、明日出立することになったということでした。
昨日のお茶の稽古の時に襲って来た家元以下数名の正体も目的も分からないので予定を早めたということでした。
私のその日の任務は時尾さんの警護。
ただ、昨晩の襲撃がなかったので今日は恐らく大丈夫だろう、と斎藤さんは言っていました。
斎藤さんの”読み”はあまり外れないので、気を張りつつも、時尾さんと一緒に引越しの準備をしました。
で、夜。
時尾さんには明日の出立のために体を休めてもらい、私は縁側で周囲の警戒をしてた。
夜がだいぶ更けても斎藤さんは帰ってこなかった。
何か急な仕事でも入ったのかな、って思っていたら、塀の向こうに蒼紫が来てた。
こんな夜中に蒼紫が来るなんて、と思ったら緋村さんが斎藤さんに果し状を出したから私はそれを見届けるべきだ、って言った。
時尾さんを一人にしておけないから、警護を蒼紫に代わってもらって飛び出したはいいけど場所が分からない。
もしかしたら警視庁に何か手掛かりがあるかもしれないと思って行ってみたら・・
・・部屋に斎藤さんと張がいた。
え?決闘じゃないの?って思ったけど・・
斎藤さんは緋村さんの決闘を受けなかった。
とにかく目の前で生きててくれたから深くは聞かなかったけど、明日は時尾さんの出立だから斎藤さんには家に帰ってもらって私は警視庁で仮眠しました。
え?何で家に一緒に帰らなかったかって?」