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286.長い夜、長い物話(4)(比古・夢主)
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「それから、掃除したり、棚の資料を見たり・・で、夜に見張りで張り付いている張と交代しようと行ったんだけど、斎藤さんが帰ってくる時に私がいないと斎藤さんが不機嫌になるって言われて・・張にも私が斎藤さんが好きだってことがバレてたみたいで・・
追い返されたのはいいんだけど、斎藤さんが戻ってくる時間に間に合わないと走りました。
警視庁で待っていたんだけど予定時刻に戻ってこないし、走った疲れで居眠りしてたら夜中過ぎに斎藤さんが戻ってきました。
船は定刻に着いたけど首謀者の縁だけが見当たらなくて捜索していたため遅くなったのだと。
『行くぞ。』と言われて帰るのだと思っていたら家じゃなかった。
藤田家の決まりで二十四時を過ぎたら安全のため、閂をかけるの。斎藤さん、家に帰れない時がしょっちゅうだったみたいだから。
とうの昔に二十四時は過ぎているって言われて、
ではどこに?って思ってたら・・比古さん、二十六夜待ちって知ってます?」
「嗚呼、知ってるぜ。二十六夜の月が上る時、阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩の三尊が現れ、その光を拝むと幸運が訪れるという言い伝えで江戸ではその晩はお祭り騒ぎのごとしだったと。」
「うん。私は全然知らなくて。幕末、蕎麦屋台のお手伝いをしていた時、丁度二十六夜の日、巡察で寄ってくれた斎藤さんと山崎さん・・あ、屋台のご主人です、二十六夜待ちのことが話題になりました。後で斎藤さんがいつか見に行くか、って言って、私は行きたいと答えた。
向かった先は小高い丘で屋台が出ていて賑やかだった。
暗い闇の先には夜中だというのに街の灯りがいくつも点いていてきれいでした。
私はその話をずっと忘れていたんだけど斎藤さんはずっと覚えていてくれた。思い出して胸が熱くなった・・
でも山崎さんの話になって、彼は鳥羽伏見の戦いの怪我が元で亡くなったと聞いて悲しくて、ぐるぐる考えていたら警視庁の彼の部屋にいて・・
・・抱かれました。
もちろん時尾さんや比古さんが頭に浮かんで抵抗しましたよ。
でも、最後には私自身も求めてしまった。
だからこれは完全に比古さんへの裏切りです・・。」
それは武尊自身が斎藤に抱かれると決めたことだったけど、話すことだと覚悟を決めたことだったけど、比古の反応が怖かった。
「武尊。」
名前を呼ばれて振り返る。
比古の顔は怒っているようには見えなかった。
それがある意味不思議で戸惑っていると、
「酒を注いでくれ。」
穏やかな口調で比古は盃を差し出した。
怒ってないのかな、と戸惑いつつ武尊は比古に酒を注いだ。
比古は黙ってその酒を一気にあおった。
比古は武尊の顔が今にも泣きそうになっていることに気が付いていた。
(言いたくなかっただろうに自分の気持ちを順を追って話すことが俺が出した『枷』を外すということの説明になるからだろうな。)
比古は酒を飲むとまだ武尊は自分を見つめていた。
比古はふっと笑い、
「何だ、もう一杯頂くとするか。」
と盃を差し出した。
武尊は明らかに比古のペースではない飲み方に疑問を抱いた。
「・・比古さん、もしかして・・・私のため?」
「何だ、バレちまったか。酒が飲めないお前の代わりだ。ほら。」
と、盃で武尊に酒を催促する。
「ぅ・・・。」
喉を詰まらせ、手が震えないようにしながら比古に酒を注ぐが、熱くなった目頭から涙がポタリポタリとこぼれた。
比古は酒を仰ぐとポンポンと武尊の頭を撫でた。
「怒っちゃいない。本当だ。落ち着いてからでいい、先を聞かせてくれ。」
比古の優しさに胸を詰まらせながら、
「お茶・・お茶飲む。」
と、武尊は立ち上がった。