※1 記憶を失っている時の名前は変換できません。
285.長い夜、長い物話(3)(比古・夢主)
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幕末に武尊が現れた時、ただ一晩宿を貸しただけでその記憶さえ残らなかった自分と、ただ一晩床を過ごした男。
新選組の斎藤一。
その男が武尊と再会し、どれだけ武尊の心深くに居ついていたのか計り知れないことは武尊の横顔を見ているだけで分かる。
その瞳はまるでその時を追っているかのごとく。
斎藤は武尊と十六夜丸が同じだと分かりつつも武尊自身を見ていた・・そして愛しんでいた、という事が比古には分かった。
比古は斎藤に単なる嫉妬だけではない気持ちを覚えていた。
それはこの後の武尊の話を聞いて更に強くなる。
武尊は話を続けた。
「奇跡的な再会に浮かれた後に斎藤さんの現実と本当はこの世に存在するはずのない自分を思うと胸が痛かった。
胸が痛いと思いつつも金を一円も持っていなかったという現実を思い出した時、斎藤さんから食事付きのいい仕事があると言われた。
仕事を紹介してもらったとしても神谷道場に行けるとなった時に休めないと意味がないし、もし仕事を急にやめたりしたらどちらにも迷惑がかかるから『ひと月ぐらいの短期でこちらが休みたいときに休みが頂ける仕事』だったら。と、かなり無理な条件を言ったんだけど即O.K.・・じゃなくて、即『雇う』って言われて・・。
そんな仕事あるわけないじゃん、と思っていたら斎藤さんの小間使いとして雇われることになりました。
ちゃんとお給金もらえるって言うし、全然知らない人の所で働くよりは良かったし、・・何より信頼できる人の傍というのが安心した。
・・東京に着くまでに時間があったので私を一人の警官としたうえで現在警察の総力を挙げて追っている事件の事を話してくれました。
それは緋村さんが雪代縁を首謀者とする人誅事件の私闘の後行方不明になっているという事。
・・あ、さっきも言いましたがこの私闘はもう解決していますので安心してください。
警察はその私闘より、人誅事件に上海マフィアが絡んだ大がかりの武器の密輸の摘発に全力をあげているとのことでした。
昨年の西南戦争、今年の志々雄の事件。富国強兵を目標とし、一日も早く日本を近代国家として確立したい明治政府にとっては内乱の元となる案件はつぶしておきたかったのでしょう。
東京の警視庁に着いて馬車に山積みの資料を十二往復して資料室へ運び終わって待機していると斎藤さんが戻ってきて私を警視総監に顔を見せに連れていくといいました。
警視庁内をいきなり知らない人がウロウロしてたら逆に捕まりかねない雰囲気だったので総監室に行く途中の部屋に顔を出しながら総監室に斎藤さんと一緒に入ったのですが・・。
そこには小柄なちょっとおでこハゲの中年の男が座っていました。
大きい小さいはあると思いますが明治政府の典型的なお偉いさんだなぁ、、と思っていた矢先、机の卓上木札に目が留まりました。そこに書いてあったのは『警視総監 川路利良』・・私の中で血が沸騰しそうな感じがしました。
あれだけ探しても見つけられなかった・・兄と共に探した父の敵。それが今目の前にいる。それだけで反射的に飛びかかろうとしてしまい、斎藤さんに手刀をくらって気絶させられました。
気が付いたら資料室でした。私が先ほどの非礼を謝るとどうしてそうしたのかを問われました。
斎藤さんには幕末の酒を飲んだ席で兄に薬を飲まされていることは話していましたので兄から聞いていた話をしました。
兄の父は薩摩藩士でしたが薩摩藩の計略にかかって父が死罪、母は後追いして他界。兄と私・・でなくて、蘭子さんと従者の三人はその後大変な暮らしをしていたということ。その計略の主謀者が川路利良だということ。
戊辰戦争時に川路を追って母成峠まで兄と一緒に行ったということ。
その後は十六夜丸が撃たれた後の兄はどうなったかわからないということ。
斎藤さんは私の話を聞いた後、兄の妹は本当に存在していたのかという疑っていました。
もちろん蘭子さんは実在しました。でもその時は十六夜丸の記憶をまだ知る前だったので私も確証がなく、十六夜丸についても兄がいなければ薬の作り方が分かる人がいない、ということで私が十六夜丸になることはないだろうってことになりました。
あ、薬っていうのはあの粉薬単体を意味してるんじゃなくて、赤いドロドロの液体の事です。水に混ぜてでは効かないので。」
比古は薬の作り方の正解を今は知っているらしいその口ぶりにが気になったが今はまだ黙って聞いていることにした。
それよりも武尊自身口を滑らせたのかもしれないが気が付いていないであろう言葉、『・・子供もつくれなくて・・彼の子孫を残して未来へ繋げることもできなくて・・』と言った真意が気になった。
が、これもまだ黙っておくことにした。